僕の輝ける伴星

渡辺 佐倉

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本編

あり得ない

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ルイスはまず、指輪をはめた手を見る仕草をした。
それから自分の顔に手のひらを当てて、それから自分の首を撫でた。

「もしかして、呪いは……!」

驚愕したようにルイスは言った。
実際呪いは初めて出会った日にとけているし、それはルイスもよく知っている。
全て演技なのだけど、迫真のものに見える。

王子としてその演技力が必要なのか、それとも彼にこういう才能があったのか。
今まさに呪いが解けた様に、俺自身錯覚してしまう位違和感のない演技に見えた。

参列者はざわめく。

「まさか……」
「奇跡が……」
「魔法か……?」
「……指輪が」


おおむね予想した通りの反応があった。

魔法の力が無いもの、呪いに関する知識が無いものは皆今この場で奇跡が起きたか、二人の指輪が奇跡を起こしたのかと話し始めていた。

「あり得ないわ!!!!」

その時叫ぶような声がしてガタンと一人の女性が立ち上がった。
俺たち二人はこの瞬間を待っていた。

叫んだ女性は王妃様だった。


調査の結果を裏付ける様な反応に俺は思わず笑ってしまいそうになる。
必死にまじめな顔を作る。

「王妃陛下? 『あり得ない』とはどういう意味でしょうか?」

ルイスは王妃の方を向いて尋ねる。
実際にあり得ないのだ。

今目の前で起きたことはすべてまやかしだ。
けれど、目の前でそのあり得ないことが簡単に起きてしまった王妃は冷静ではなかった。
冷静ではない状態を作りだすための今日この場所だ。

この場所はあらゆる精神統一のための魔法や魔道具の効果を無効にし、嘘をつきづらくするための精神干渉魔法をかけている。
しかも並みの魔法使いでは発見できない形で、そして後で捜査が入った際に証拠を残さない形で。

「そんな簡単にあの呪いがとけるはずないもの!」

王妃は再び叫んだ。そして「王子の地位に執着するために呪いを不可視化しただけでしょう? そんな化粧の様なもので私は騙されません」と言った。

王妃は魔法使いでもなければ魔法の専門家でもない。
そして第三王子は腹違いだ。全く今まで興味を示してこなかった。

『あの』、というのはどの呪いのことなのだろう。
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