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行方不明と国外追放(1)

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「レイモンド様! ……やっぱりそうだ! 間違いない!」


 赤髪の騎士は叫びつつ、レイとヘレナに向かって走り出した。レイはヘレナを隠すようにして前に立ち、キッと騎士のことを睨みつける。


「良かった……やっぱり生きていらっしゃったんですね!」


 人懐っこい笑みを浮かべ、騎士は手足をバタつかせる。レイは小さく首を傾げながら、キラキラしい余所行きの笑顔を浮かべた。


「申し訳ございませんが、人違いでしょう。私は『レイモンド』という名前ではございませんし、あなたのことも存じ上げませんから。
さぁ、お嬢様。そろそろお屋敷に帰りましょうか。今晩はお嬢様が好きなシチューをご用意しております」


 そう言ってレイは、ヘレナに向かって微笑みかける。あっという間に執事スイッチが入ったらしい。先程までヘレナの名前を呼んでいた癖に、もう『お嬢様』呼びに切り替わっている。


(何か、わたしの名前を聞かせたくない事情でもあるのかしら?)


 普段、街では敢えてラフな印象を醸し出しているレイなのに、今の彼はきちきちっとした執事っぷりを見せつけている。
 けれど、赤髪の騎士は「そりゃ無いですよ~~!」と口にして、ひしとレイに縋りついた。


「僕がレイモンド様を見間違えるわけがないじゃありませんか? そんな人並み外れたやっばい容姿しといて『別人です』が通るわけないでしょう? それに――――」


 ほら、と言って男性は、レイの前髪をぐいっと掻き上げる。右目を隠している方の前髪だ。中から現れたのはエメラルドみたいに綺麗なレイの瞳――――ではなく、アンバーのような色合いをした、左目とはまた別の美しさを誇る瞳だった。


「これで言い逃れはできませんよ? こんな珍しい瞳しといて、別人なわけがないじゃないですか! いい加減認めてくださいよ~~」


 嬉しそうな男性とは対照的に、レイは何だか面倒くさそうな表情をしている。最早返事をするのも煩わしいといった雰囲気だ。


(だけどこの人、このままいくとずっとこの調子だろうし)

「ねぇ、レイ。お屋敷にお招きして、お茶でも飲んでいただいたら? 事情はよく分からないけど、久しぶりにお会いしたんでしょう? 出来たらわたしも、レイのことを教えていただきたいし」


 レイにだけ聞こえるような小声でヘレナがそう提案すると、男性は「是非是非!」と言いつつ
飛び上がる。どうやら相当耳が良いらしい。


「――――――お嬢様がそう仰るなら」


 そう口にしつつ、レイは小さくため息を吐いた。
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