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【1章】先攻クラルテ 押しかける!
6.前言撤回のすすめ
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(とてつもなく長い2日感だった……)
クラルテが押しかけてきた二日後のこと、俺は休暇を終えて通常勤務に戻った。
その間、屋敷やクラルテの荷物を片付けたり、使用人の手配をしたり(クラルテは不要だと主張していたが必死に押し切った)、二人でお茶をしたり、食事のための買い出しをしてみたり……普段は絶対にしないことばかりしたものだから、妙に疲れてしまったのだ。
(しかし、充実していた)
休暇を眠る・食べる以外のことに使ったのは久しぶりだ。クラルテの作る食事は本当に美味しかったし、あの子の話を聞いていると面白い。よくもまあ、あんなに口がまわるというか……話題が尽きないものだと感心してしまう。
『旦那様が好きな食べ物は? 色は? 場所は? 本は? 動物は? 天気は? 同僚は? 趣味は? 特技は? etc...』
そんなこと、普段の生活で意識したことがない。尋ねられてはじめて考え、答えてみた。そのたびにクラルテはとても嬉しそうに微笑み、俺のことを受け入れてくれる。どんな回答でも、彼女は俺を急かしたり否定したり嫌がったりしない。なんだか心が温かくなった。
クラルテは俺に質問するだけでなく、自分のことをセットで教えてくれる。……いや、教えてくれるというか、無理やりプレゼンされているというのが正しい。
『わたくしは果物が好きです! ブクディワ領は農業が盛んな地域なので、美味しくて新鮮な果物がたくさん採れるんですよ。旦那様にも是非食べてみていただきたいです! 実家からたくさん取り寄せるので、楽しみにしていてくださいね!』
『わたくしは青が好きです! 旦那様の瞳の色だから! だから、アクセサリーはいつも青い石を選ぶようにしているんですよ』
ほんの短時間の間にあの子のことが――あの子がどれだけ俺を想っているかが伝わってきた。本当に、思い込みもあそこまでいけば立派だと思う。
(次にクラルテに会えるのは明日の夜か……)
消防局で務める魔術師は隔日勤務――丸一日働き、そこから一日休みを取り、また丸一日働く――という勤務体制を取っている。救護班や転移魔法の担当者、事務方はこの限りではないものの、ほとんどが俺と同じ働き方だ。なお、これは余談になるが、現場に行かないときは魔術や体術の訓練を行い、災害や火災に備えている。
つまり、なにが言いたいかというと、たとえ出動していないにしても、俺は出勤してから丸っと一日家に帰ることができないのだ。
(心配だな……)
あれだけおしゃべりなクラルテだ。俺がいないと寂しがるんじゃないだろうか? 昨日は一日べったりだったし。
……いやいや、冷静になって考えろ。よく考えるとあの子は転移魔法の使い手だ。寂しければ実家に帰ることも可能だろう。それに、友人や知人も多そうだ。
でもなぁ……。相手はあのクラルテだもんなぁ。
今朝俺を送り出すときもクラルテはなかなかに熱烈だった。魔術師団までついていくと主張をしていたし(全力で止めた)、転移魔法で俺を送ると言い張っていた(これも体を鍛えるためと言って止めた)。
それに、妙に頑固なところのあるクラルテだ。『妻の務めは家を守ること』とかなんとか言って、ひとりでじっと家に籠もっているような気もしないでもない。いや、クラルテとはまだ正式に婚約を結んだわけでもないのだが。
(さて、どうしたものか……)
「なんだか浮かない表情だね」
ポンと後ろから肩を叩かれる。プレヤさんだ。
「浮かない、というわけではありません」
ただ心配していただけだ。とんでもなく強烈な押しかけ令嬢のことを。
「寮を出ての生活はどうだ? 案外いいものだろう? さっき別れたばかりなのにもう会いたくなっちゃう程度には」
「さっき別れたばかりって……なるほど、クラルテに俺の引っ越しについての情報を売ったのはプレヤさんですね?」
先程から妙にニヤニヤしているし、含みのある物言いをしているなぁと思っていたが、どうやら俺の反応を探りたかったらしい。本当になんともいい性格をしていらっしゃる。
「え~~? クラルテ? なんのことだかわからないなぁ」
プレヤさんはそう言って、機嫌が良さげに笑っている。俺は思わず彼の肩を小突いた。
「いい子だろう? 今どき珍しく擦れていないというか、令嬢らしくなくて」
「たしかに令嬢らしくはないですが、その分強烈すぎやしませんか? それに、令嬢らしくないって褒め言葉なんですかね?」
「褒め言葉だろう? 逞しいのはいいことだ。あの子ならどこででも生きていけそうだし」
「……わかったようなことを」
俺のほうがクラルテを知っているはずなのに――思わずムッとした俺を見て、プレヤさんがゲラゲラ笑う。
「なんだよ、もう嫉妬か?」
「なっ……違いますよ」
なんて、必死に否定してみたものの、頬がカッと熱くなった。
「うんうん、いい傾向だ。お前は融通が効かなさすぎるし、人間としての遊びの部分が絶望的に足りなかったからな。そのままクラルテにパクっと食べられてしまえ」
「またあなたは……他人事だと思って…………」
「ん? 他人事じゃなくしたほうがいいか? 俺もあの子となら結婚してもいいと思ってるぞ?」
「――は?」
俺もあの子となら結婚してもいい? 一体なにを言っているんだ、この人は。
もう何年も独身を貫いてきたくせに。というか、こんな遊び人が結婚?
ギョッとしている俺を尻目に、プレヤさんはどこかぼんやりとした表情で上を向いた。
「実家は金持ちだし、本人は社交的で貴族同士の面倒なお付き合いもそつなくこなしてくれそうだし、なによりものすごく尽くしてくれそうだろう? それに、可愛いし明るいし、クラルテといれば毎日退屈しなさそうだ。ああ見えてTPOってものをわきまえているから、妻としてあれ以上の子はいないと思うんだが」
いつもの軽口かと思いきや、案外真面目に言っているらしい。何故だろう――なんだか胸が苦しくなってきた。
(もしも俺が本気で婚約を拒否すれば、クラルテはどうするだろう?)
本人は俺以外の人間と結婚する気がないと言っていたが、高位貴族である以上、彼女が自分の意志を押し通すのは難しいはずだ。世間体というものがある。俺のように取るに足らない伯爵家の三男とはわけが違う。
だとすれば、昔からの知り合い――プレヤさんの手を取ることだってあるかもしれない。
「――なあ、ハルト。前言撤回するなら早いほうが楽だぞ? あとになればなるほど、人間は意固地になるものだ。頑固もののお前ならなおさら。大体、元婚約者に操を捧げるなんてバカげている。そんな誓いを知っているのは俺やお前の両親ぐらいのもんだ。お前がクラルテと婚約したところで、周囲は普通に祝福する。話が違うだなんて文句を言うような人間はひとりもいないよ」
困ったような、呆れたような表情を浮かべ、プレヤさんは俺の肩をポンと叩く。
「……そういうものでしょうか?」
「そういうものだよ。言っておくが、これは仕事でも同じだぞ? 間違えた、やり直したい、違う方法のほうが最善だと判断したらすぐに切り返す――それができる人間は強い。お前がこれまで指揮官になれなかったのは、そういう柔軟性が足りなかったからだ。最初に選んだ道が一番とは限らない。常に先を見据えてそのときどきで選択を重ねていく。でなければ隊員を守れない。……そうは思わないか?」
問われて、これまでの自分を振り返る。一理ある……というか、プレヤさんの言うとおりだ。
いち隊員としてなら、上官の命令に従うことができればそれでいい。
けれど、これから俺は他人に指示を出す立場になる。上官が間違えれば部下は簡単に死ぬ。魔術や体術の腕だけでは人を救うことはできない。
「というか、俺ひとりだけでこんな感じじゃ、前言撤回待ったなしだと思うなぁ……」
「……それ、どういう意味です?」
「すぐにわかるよ」
なんとも意味深なプレヤさんの言葉に、俺は思わずムッとしてしまう。
だけど、彼の意図したことはすぐに俺にもわかった。なぜか――新年度を迎えた俺の職場に、クラルテが新採職員として現れたからだ。
クラルテが押しかけてきた二日後のこと、俺は休暇を終えて通常勤務に戻った。
その間、屋敷やクラルテの荷物を片付けたり、使用人の手配をしたり(クラルテは不要だと主張していたが必死に押し切った)、二人でお茶をしたり、食事のための買い出しをしてみたり……普段は絶対にしないことばかりしたものだから、妙に疲れてしまったのだ。
(しかし、充実していた)
休暇を眠る・食べる以外のことに使ったのは久しぶりだ。クラルテの作る食事は本当に美味しかったし、あの子の話を聞いていると面白い。よくもまあ、あんなに口がまわるというか……話題が尽きないものだと感心してしまう。
『旦那様が好きな食べ物は? 色は? 場所は? 本は? 動物は? 天気は? 同僚は? 趣味は? 特技は? etc...』
そんなこと、普段の生活で意識したことがない。尋ねられてはじめて考え、答えてみた。そのたびにクラルテはとても嬉しそうに微笑み、俺のことを受け入れてくれる。どんな回答でも、彼女は俺を急かしたり否定したり嫌がったりしない。なんだか心が温かくなった。
クラルテは俺に質問するだけでなく、自分のことをセットで教えてくれる。……いや、教えてくれるというか、無理やりプレゼンされているというのが正しい。
『わたくしは果物が好きです! ブクディワ領は農業が盛んな地域なので、美味しくて新鮮な果物がたくさん採れるんですよ。旦那様にも是非食べてみていただきたいです! 実家からたくさん取り寄せるので、楽しみにしていてくださいね!』
『わたくしは青が好きです! 旦那様の瞳の色だから! だから、アクセサリーはいつも青い石を選ぶようにしているんですよ』
ほんの短時間の間にあの子のことが――あの子がどれだけ俺を想っているかが伝わってきた。本当に、思い込みもあそこまでいけば立派だと思う。
(次にクラルテに会えるのは明日の夜か……)
消防局で務める魔術師は隔日勤務――丸一日働き、そこから一日休みを取り、また丸一日働く――という勤務体制を取っている。救護班や転移魔法の担当者、事務方はこの限りではないものの、ほとんどが俺と同じ働き方だ。なお、これは余談になるが、現場に行かないときは魔術や体術の訓練を行い、災害や火災に備えている。
つまり、なにが言いたいかというと、たとえ出動していないにしても、俺は出勤してから丸っと一日家に帰ることができないのだ。
(心配だな……)
あれだけおしゃべりなクラルテだ。俺がいないと寂しがるんじゃないだろうか? 昨日は一日べったりだったし。
……いやいや、冷静になって考えろ。よく考えるとあの子は転移魔法の使い手だ。寂しければ実家に帰ることも可能だろう。それに、友人や知人も多そうだ。
でもなぁ……。相手はあのクラルテだもんなぁ。
今朝俺を送り出すときもクラルテはなかなかに熱烈だった。魔術師団までついていくと主張をしていたし(全力で止めた)、転移魔法で俺を送ると言い張っていた(これも体を鍛えるためと言って止めた)。
それに、妙に頑固なところのあるクラルテだ。『妻の務めは家を守ること』とかなんとか言って、ひとりでじっと家に籠もっているような気もしないでもない。いや、クラルテとはまだ正式に婚約を結んだわけでもないのだが。
(さて、どうしたものか……)
「なんだか浮かない表情だね」
ポンと後ろから肩を叩かれる。プレヤさんだ。
「浮かない、というわけではありません」
ただ心配していただけだ。とんでもなく強烈な押しかけ令嬢のことを。
「寮を出ての生活はどうだ? 案外いいものだろう? さっき別れたばかりなのにもう会いたくなっちゃう程度には」
「さっき別れたばかりって……なるほど、クラルテに俺の引っ越しについての情報を売ったのはプレヤさんですね?」
先程から妙にニヤニヤしているし、含みのある物言いをしているなぁと思っていたが、どうやら俺の反応を探りたかったらしい。本当になんともいい性格をしていらっしゃる。
「え~~? クラルテ? なんのことだかわからないなぁ」
プレヤさんはそう言って、機嫌が良さげに笑っている。俺は思わず彼の肩を小突いた。
「いい子だろう? 今どき珍しく擦れていないというか、令嬢らしくなくて」
「たしかに令嬢らしくはないですが、その分強烈すぎやしませんか? それに、令嬢らしくないって褒め言葉なんですかね?」
「褒め言葉だろう? 逞しいのはいいことだ。あの子ならどこででも生きていけそうだし」
「……わかったようなことを」
俺のほうがクラルテを知っているはずなのに――思わずムッとした俺を見て、プレヤさんがゲラゲラ笑う。
「なんだよ、もう嫉妬か?」
「なっ……違いますよ」
なんて、必死に否定してみたものの、頬がカッと熱くなった。
「うんうん、いい傾向だ。お前は融通が効かなさすぎるし、人間としての遊びの部分が絶望的に足りなかったからな。そのままクラルテにパクっと食べられてしまえ」
「またあなたは……他人事だと思って…………」
「ん? 他人事じゃなくしたほうがいいか? 俺もあの子となら結婚してもいいと思ってるぞ?」
「――は?」
俺もあの子となら結婚してもいい? 一体なにを言っているんだ、この人は。
もう何年も独身を貫いてきたくせに。というか、こんな遊び人が結婚?
ギョッとしている俺を尻目に、プレヤさんはどこかぼんやりとした表情で上を向いた。
「実家は金持ちだし、本人は社交的で貴族同士の面倒なお付き合いもそつなくこなしてくれそうだし、なによりものすごく尽くしてくれそうだろう? それに、可愛いし明るいし、クラルテといれば毎日退屈しなさそうだ。ああ見えてTPOってものをわきまえているから、妻としてあれ以上の子はいないと思うんだが」
いつもの軽口かと思いきや、案外真面目に言っているらしい。何故だろう――なんだか胸が苦しくなってきた。
(もしも俺が本気で婚約を拒否すれば、クラルテはどうするだろう?)
本人は俺以外の人間と結婚する気がないと言っていたが、高位貴族である以上、彼女が自分の意志を押し通すのは難しいはずだ。世間体というものがある。俺のように取るに足らない伯爵家の三男とはわけが違う。
だとすれば、昔からの知り合い――プレヤさんの手を取ることだってあるかもしれない。
「――なあ、ハルト。前言撤回するなら早いほうが楽だぞ? あとになればなるほど、人間は意固地になるものだ。頑固もののお前ならなおさら。大体、元婚約者に操を捧げるなんてバカげている。そんな誓いを知っているのは俺やお前の両親ぐらいのもんだ。お前がクラルテと婚約したところで、周囲は普通に祝福する。話が違うだなんて文句を言うような人間はひとりもいないよ」
困ったような、呆れたような表情を浮かべ、プレヤさんは俺の肩をポンと叩く。
「……そういうものでしょうか?」
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問われて、これまでの自分を振り返る。一理ある……というか、プレヤさんの言うとおりだ。
いち隊員としてなら、上官の命令に従うことができればそれでいい。
けれど、これから俺は他人に指示を出す立場になる。上官が間違えれば部下は簡単に死ぬ。魔術や体術の腕だけでは人を救うことはできない。
「というか、俺ひとりだけでこんな感じじゃ、前言撤回待ったなしだと思うなぁ……」
「……それ、どういう意味です?」
「すぐにわかるよ」
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