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【2章】後攻ハルト 無自覚に攻め返す
13.クラルテのお仕事①
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さて、職場が同じとはいえ、仕事中は愛する旦那様にはほとんど会えません。まあ、当然ですよね。わたくしとは配置からして違いますし(運動と水魔法の才能があったら旦那様と同じ部隊に入りたかった!)、もしも仕事をほっぽり出して旦那様を見に行ったりしたら間違いなく嫌われてしまいますから!
「クラルテさんは今日はこっちの地域を回ってきてね」
「王都の西部から郊外にかけて、ですね! 承知しました! しっかりと巡回して、目に焼き付けてまいります!」
転移魔法や救護魔法の使い手は、旦那様たちとは違い、勤務時間のほとんどを訓練に費やしたりはしません。
そのかわり、いつでもどこにでも魔術師たちを自由自在に転移できるよう、地理を勉強したり、王都を巡回したりしています。(もちろん、魔法の訓練も欠かしてませんよ!)
地図を見れば大体の地形は予想できますし、転移すること自体は可能です。けれど、道路の状況や障害物の有無、地図に載っていない家屋の変化などなど、いろんな要素がありますので、実際に自分の目で見て頭の中にインプットしておくのが一番なのです。
特に、新人のうちは魔術の腕前も不十分ですし、実際に火災が起きた際はテンパりがちなので、こういった地道な努力の積み重ねが後にものをいう――と先輩が言っていました。
もちろん、わたくしの仕事はこれだけではありません。
ひとたび火災が起きれば、先輩方と一緒に転移魔法で魔術師たち(旦那様たち水魔法部隊)を現場に送り届けます。
事前にボヤだとわかっている場合は、わたくしたち転移魔法の使い手は師団に残ることが多いです。水魔法部隊の中にも転移魔法の使い手はいますし、他にも火災が発生する可能性がありますからね。
ですが、大きな火災や建物の中に住人が残されている場合等については、一緒に現場についていきます。転移魔法を使って建物の中に魔術師を送り込むためです。入口付近が燃えていても、内部にはそこまで火が燃え広がっていない、ということがあるため、安全な場所を見つけ出してそこに転移をするのですね。
だけど、安全な方法を見つけ出す――というのは当然、簡単なことじゃありません。
わたくしたちは転移元と転移先に魔法陣を張るのですが、家の図面なんて所持してませんし、感覚でもって転移先の状況を探るしかないのです。
他にも魔術師の感覚を魔導具とをリンクさせた『目』を送り込む、という方法があるのですが、こちらはリスクが高いため、あまり採用されません。魔道具が壊れれば術者がダメージを受けてしまうからです。
そういうわけで、結局はコツコツと経験と技術と勘を磨いていくのが一番なのです。
それから、火災によって負傷者が出た場合は救護魔法を施します。
救護といっても応急処置レベル。お医者様ではないので、できることは限られています。痛みを和らげたり消毒をしたり、止血をするといった内容です。おもに外傷への対応となりますが、熱冷ましや栄養補給なんかは可能で、ようは切ったり縫ったりといった物理的なことはできない、というイメージになります。
と、ここまでツラツラ語ってきましたが、実際に現場対応をしたのはほんの二回程度。転移魔法を仕事で使ったのも、昨日が初めてのことでした。
(火災なんて起こらないほうがいい)
平和なことはいいことです。不注意による火災だって、絶対に起こらないほうがいい。七年前、もしも旦那様がわたくしを助けてくださらなかったら、わたくしはここにはいないわけですしね。
だけど、ここで働く全員がわたくしと同じ考えを持っているわけではありません。
わたくしたちが働く理由――己の能力を活用したい、やりがいのある仕事がしたい、誰かに感謝されたい――それ自体はいいことです。むしろ、当たり前の感情でしょう。
しかし、恐ろしいことに、同僚の中には『人を救いたい』『それができる自分になりたい』『己の能力を誇示したい』という想いを叶えたい一心で、無意識のうちに『火災が起きてほしい』と願っているような方もいらっしゃるのです。
(そういう方は他の局に配属されればいいのに)
魔術師団には王族の警護を務める部署も、国や王都の防衛を担当する部署もありますから。そちらのほうが花形ですし、余程承認欲求を満たせることでしょう。わざわざ泥臭い消防局を希望しなきゃ良いのに、なんてことを思います。
よく『クラルテは人付き合いが良さそうだよね』と言われますが、そんなことはありません。
わたくしは存外好き嫌いがハッキリしています。嫌いな人や苦手な人とも一応お付き合いしますが、実際のところは相容れないなぁと心の奥底で思っています。見えない壁を作っていますし、もしも近寄ってこられたら全力で引きます。笑顔で防御をして、本心を見破られないように気をつけているだけです。
打算的だなぁって自分でも自覚はあります。とはいえ、旦那様に『ダメ』だと言われない限り、変える気なんてないんですけどね。
「クラルテさんは今日はこっちの地域を回ってきてね」
「王都の西部から郊外にかけて、ですね! 承知しました! しっかりと巡回して、目に焼き付けてまいります!」
転移魔法や救護魔法の使い手は、旦那様たちとは違い、勤務時間のほとんどを訓練に費やしたりはしません。
そのかわり、いつでもどこにでも魔術師たちを自由自在に転移できるよう、地理を勉強したり、王都を巡回したりしています。(もちろん、魔法の訓練も欠かしてませんよ!)
地図を見れば大体の地形は予想できますし、転移すること自体は可能です。けれど、道路の状況や障害物の有無、地図に載っていない家屋の変化などなど、いろんな要素がありますので、実際に自分の目で見て頭の中にインプットしておくのが一番なのです。
特に、新人のうちは魔術の腕前も不十分ですし、実際に火災が起きた際はテンパりがちなので、こういった地道な努力の積み重ねが後にものをいう――と先輩が言っていました。
もちろん、わたくしの仕事はこれだけではありません。
ひとたび火災が起きれば、先輩方と一緒に転移魔法で魔術師たち(旦那様たち水魔法部隊)を現場に送り届けます。
事前にボヤだとわかっている場合は、わたくしたち転移魔法の使い手は師団に残ることが多いです。水魔法部隊の中にも転移魔法の使い手はいますし、他にも火災が発生する可能性がありますからね。
ですが、大きな火災や建物の中に住人が残されている場合等については、一緒に現場についていきます。転移魔法を使って建物の中に魔術師を送り込むためです。入口付近が燃えていても、内部にはそこまで火が燃え広がっていない、ということがあるため、安全な場所を見つけ出してそこに転移をするのですね。
だけど、安全な方法を見つけ出す――というのは当然、簡単なことじゃありません。
わたくしたちは転移元と転移先に魔法陣を張るのですが、家の図面なんて所持してませんし、感覚でもって転移先の状況を探るしかないのです。
他にも魔術師の感覚を魔導具とをリンクさせた『目』を送り込む、という方法があるのですが、こちらはリスクが高いため、あまり採用されません。魔道具が壊れれば術者がダメージを受けてしまうからです。
そういうわけで、結局はコツコツと経験と技術と勘を磨いていくのが一番なのです。
それから、火災によって負傷者が出た場合は救護魔法を施します。
救護といっても応急処置レベル。お医者様ではないので、できることは限られています。痛みを和らげたり消毒をしたり、止血をするといった内容です。おもに外傷への対応となりますが、熱冷ましや栄養補給なんかは可能で、ようは切ったり縫ったりといった物理的なことはできない、というイメージになります。
と、ここまでツラツラ語ってきましたが、実際に現場対応をしたのはほんの二回程度。転移魔法を仕事で使ったのも、昨日が初めてのことでした。
(火災なんて起こらないほうがいい)
平和なことはいいことです。不注意による火災だって、絶対に起こらないほうがいい。七年前、もしも旦那様がわたくしを助けてくださらなかったら、わたくしはここにはいないわけですしね。
だけど、ここで働く全員がわたくしと同じ考えを持っているわけではありません。
わたくしたちが働く理由――己の能力を活用したい、やりがいのある仕事がしたい、誰かに感謝されたい――それ自体はいいことです。むしろ、当たり前の感情でしょう。
しかし、恐ろしいことに、同僚の中には『人を救いたい』『それができる自分になりたい』『己の能力を誇示したい』という想いを叶えたい一心で、無意識のうちに『火災が起きてほしい』と願っているような方もいらっしゃるのです。
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