愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

鈴宮(すずみや)

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【3章】攻守交代......と思いきや、ハルトのターンが終わらない

23.それは.....反則だろう?

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 やりました……!
 わたくし、ついに! ついに! ついに!!! 本懐を成し遂げました!


 どうも、押しかけ令嬢クラルテ改め、旦那様の婚約者になったクラルテです! 旦那様の婚約者のクラルテです! (大事なことなので何回でも言わせていただきます)


 旦那様からプロポーズを受けて一週間。わたくしは甘い婚約生活を満喫しております。

 七年もしつこく片思いをして、追いかけ続けてきたお相手との婚約ですからね! 正直、わたくしとしては婚約期間なんてすっ飛ばして、一足飛びに結婚でよかったんですけれども! 残念ながら旦那様に反対されてしまいました。曰く、『こういうことはきちんと段取りしたい』とのことです。

 まあ、両親との顔合わせとか、色々とすることはありますからね。旦那様の意向を最大限に尊重させていただいた次第です、はい。


 でもでも、わたくしはもう旦那様の正式な婚約者ですからね。これまでとは立ち位置からして全然違いますからね! 自慢じゃありませんけどわたくしたちの同棲生活……さらに甘々ですよ?


 朝は一日のなかで一番幸せな時間です。旦那様の寝顔を見られるのはわたくしだけの特権ですからね! 最高にかっこよくて愛しくて、何時間でも飽きずに見つめていられます。枕のそばに肘をついて、ごく至近距離から見る旦那様は、わたくしの一日の活力源です。


(しかし、結婚したらわたくしは旦那様の隣に眠る……のですよね?)


 そんなことを思うと、自然と喉がゴクリと鳴ります。

 こんなにも大好きな人の隣にいて、果たしてわたくしは眠れるのでしょうか? 旦那様の寝顔は本当に永遠に眺めていられますし、気づいたら朝になっていたってパターンになってしまいそうです。

 ……というか、正直無事でいられる気がしません。嬉しすぎて、興奮しすぎで命を落としそうな勢いです。いえ、旦那様の腕のなかで死ねるなら本望ですけど。


(ああ、やっぱり今日もこんな時間になってしまいました)


 旦那様のことを考えているときって、若干頭の中がバグっていると申しましょうか……時間とかお金とかすべきこととか、いろんなことがどうでもよくなるんですよね。だって、わたくしにとって唯一無二の揺るがぬ指標ですから。


(さてと)

 いつまでもこうしていては、二人揃って遅刻しちゃいます。
 旦那様を起こすため、わたくしは身を起こしました。いつものように胸を優しく揺すろうと思ったその瞬間、ぐいっと腕を引かれます。


「えっ……?」


 どうしてでしょう? ……わたくしは今、旦那様の上に乗っかっています。完全に体勢を崩してしまいました。

 次いで、背中にぬくもりを感じます。たくましくて思わず縋りつきなるような大好きな旦那様の腕です。


「おはよう、クラルテ」


 旦那様がわたくしの耳元でささやきます。全身が沸騰するような甘い声です。途端に心臓がドキドキと高鳴って、わたくしはパニックに陥ってしまいました。


(こんなの反則です! 太刀打ちできるはずがありません!)


 ギュッと強く抱きしめられて、頬に優しく口付けられて、「愛してる」ってささやかれて……って! 旦那様、朝からなんでそんなに甘々なんですか? 

 ……いえ、嬉しいんですよ。とってもとっても嬉しいんですけれども! 旦那様のレベルが婚約の前よりも格段に上っていて、わたくしが追いつけていないのが現状です。
 ね? こんなの、わたくしが平気でいられるはずがないでしょう?


「――おはようございます、旦那様」


 息も絶え絶えになりながら、わたくしは挨拶を返します。
 本当は「わたくしも愛してます!」なんて言えたらいいんですが、そんなことを口にした日には旦那様のレベルがさらに跳ね上がってしまいそうで……現状は自分をちょっぴりセーブしています。


「朝ですよ!」

「うん」

「もう起きなきゃいけない時間ですよ!」

「……もう少しだけ」


 旦那様はそう言って、わたくしをさらに抱きしめます。すりすりと頬ずりされて、いっぱいいっぱい甘えられて―それなのに甘やかされているみたいで。心がギュッと苦しくなります。


(好きすぎて! 幸せすぎて! ……苦しい)


 こんな気持ちになるなんて、わたくしはちっとも知りませんでした。想いが成就したら、苦しいことなんて一つもなくなると思っていたのに。


「クラルテ」

「あ……」


 顔を覗き込まれて、熱い眼差しに囚われて、引き寄せられます。鼻頭をこすり合って、頬を撫でられて……それからゆっくりと触れるだけのキスをする。


(どうしましょう……このままではキュン死してしまいます)


 いえ、冗談じゃなく本気で。物理的に。身体が熱くなりすぎて、わたくしは昇天するのではないでしょうか?


「旦那様……」

「今日はハルト――って呼んでくれないのか?」


 ああ、もう! もう! ただでさえ不意打ちのキスで茹だっているのに! こんな状態のわたくしに名前を呼べと!?


「――――ハルト様」


 だけど、他でもない旦那様の――ハルト様のお願いですもの。聞かないとか無理です。わたくし、恋の奴隷ですもの。

 わたくしから、ハルト様をギュッと抱きしめると、彼はとても嬉しそうな表情を浮かべました。


(ああ……好きだなぁ)


 本当に。びっくりするぐらい大好きで。
 想いはすでに天元突破していると思っていたのに、とどまるところを知りません。


「わたくしも、ハルト様のことが大好きです」


 溢れ出た想いを言葉にして、今度はわたくしから口づけます。すると、ハルト様は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに口元を隠しました。


「それは……反則だろう?」

「……お互い様ですよ」


 わたくしが笑えば、ハルト様は「そうだな」と言って、顔をクシャクシャにしました。
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