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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.1-67 うそぉぉん、と叫びたくもなる

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(最悪だな…)

 せっかく久しぶりに親の仕事も片付き、別の便を使って違う場所に母は向かうが、自分は故郷への帰国ついでに従兄の春との再会を楽しみにしていた本日、花帝ミントは最悪な状況に巻き込まれていた。
 この国は基本的に諸外国に比べて安全だという話があるが、それはあくまでも国内の話。
 国外からやってきたものが安全であるというのはなく…どこかでチェックが甘ければ、ぬるりと入ってきてしまうこともあったようだ。

 そう、今まさに目の前で、ハイジャックが起きてしまったことがその最たる例になるだろう。
 

「全員、おとなしくしているがよい」
「安心しろ、我々の目的が達成されてしまえば、諸君らは無事に解放することを約束しよう」
「交渉している政府関係者側が破れば、命の保証はないがな」

 そう口々に言いつつ、銃口を向けるハイジャック犯たち。
 着陸し、ようやく大地を踏めると思っていた中で、突然動かれてしまい、全員なすすべなく人質として囚われてしまったのは最悪だろう。

(…犯人は10人ほど、全員にわかるように話しているけれども、イントネーションの訛りが見えるところから、どこの国か推測もできるか)

 母の仕事に付き合って、一緒に諸外国を見て回っていたこともあり、大体の人の話す癖に関しては理解していた。
 だからこそ、彼らがどこの国出身なのか分かるが、その情報だけでは意味がない。

 自分一人だけが人質であれば、問題ないのだが…いかんせん、ここは機内の中であり、人質と一緒に囚われている状態。
 多少の犠牲を覚悟するならば動けるかもしれないが、うまくいかなかったときのリスクを考えると不味いだろう。仮に助けられる人がいたとしても、行動を起こしたことで犠牲を出した人として叫ぶ者もいるだろうし、自ら動くメリットもない。

「お、お前たちの目的はなんだ…なぜ、我々を人質にとるんだ!!」
(そこ、確かに気になるよね)

 考えていると、人質の一人が恐怖を忘れたいのか、出ていた疑問を叫ぶ。
 彼らはこの機体をハイジャックしたが、何を目的にしているのかは確かに気になるところだ。
 それに、空の上にいる時ならばまだしも…陸についてからのハイジャックというのも何か意図があるのだろうか。

「ふむ…諸君らが疑問に思うのも無理はないだろう。今、外と交渉しているが、せっかくだから我我々の目的も話しておくか」
「我々はただのハイジャック犯ではない!!目的あるテロリスト『政治蚊取り線香』だ!!」
「ここで人質を取り、交渉している目的は4つ!!まずは、過去に捕まっている我々の仲間たちの釈放だ!!」
「次に、今世の中にいる政治家全員の総辞職(退職金無し、天下り無し)!!」
「続けて腐った世の中へ活を与えるため、緊迫感溢れる世の中にするため、全世界の発電所を爆破するための爆弾の調達!!」
「そして最後には…世の中の美男美女の基準を今一度まっ平にするために、全人類統一のっぺらぼう整形手術を施すための資金もしくは技術の確保である!!」

「「「…テロという割には、やろうとしていることが意味不明なんだけど!?」」」

 ハイジャック犯改め、テロリスト政治蚊取り線香の人たちの主張に対して、人質全員の心と声が一つになる。
 一つ目、二つ目はまだ理解できるだろう。三つ目も一応、テロリストという名称を使っているのであれば、やらかすものとしては確かにおかしくはないのかもしれない。
 だが最後のはどうなのか…全員統一されたのっぺらぼうになるとは、面白味がないというか、違った意味での平和になるような気がしなくもないが、意味不明すぎる目的である。人質を取っても実行できなさそうな無理難題にしか思えないだろう。

「そもそもなぜ、そんな名称に…」
「飛んで火にいる夏の虫という言葉を、聞いてな…欲望という名の破滅の業火に導かれて自ら燃える道を突き進む虫もとい人々をイメージできたから、この名が付いたのだ」
「蚊と政治家の家の読み方を合わせたのもあるが…まぁ、別に政治家だけを狙うものでもない。欲望には隔たりがないからな。正直、2つ目に関しては政治家だけではなく、企業の社長なども当てはめることができたが、まずはできるところからコツコツと進めようと思い、狙う標的をこっちに定めただけなのだ」
 
 くだらない結成名理由も聞こえて、呆れるしかない。
 こんな人たちに、私たちが捕まっているのか…なんだろう、ちょっと情けなく思えてきた。

「ふふふ、だが諸君、安心したまえ。別に全部をかなえろと、今回のハイジャックで要求しているわけではない」
「流石に全部をやるには厳しいが…難易度を考えると、1つ目の解放のほうが望みが高いからな。あえて難しいものを混ぜることで、相手に選ばせて確実にできそうなものからやるのだ」
「本当はすべてやってほしいが…とりあえず、1つでも達成されたら我々はすぐに逃走予定だ。その時は諸君らを解放しよう」

 意外にも考えていたようだが、そううまくいくものだろうか。
 こんなことを言っているが、仮に達成してここで助かったとしても、また後で同じような騒ぎを起こす可能性が目に見えるだろう。
 かといって、私自身が動けるわけではないし…どうしたものか。ああ、従兄に会いに来たというのに、なんでこんな目に遭うのか…ここに春がいたら、もっとうまいツッコミを入れていたかもしれない。

 そんなことを思いつつも、何か手立てがないか私はおとなしく捕まるふりをしながら、行動を起こす機会がないか探り始めるのであった…


「…あのー、質問なんですがいいでしょうか」
「暇つぶし程度になるなら良いだろう。何かあるか?」
「一番最後ののっぺらぼう、皆さんそこまで顔が悪いとは思えないのですが…」
「「「…」」」

「…そうなんだよ。いっそひらきなおった不細工、ブスなんかだったらまだ説得力があっただろう」
「我々は確かにそこまでではないのだが…そう、漫画やアニメで例えるならばモブ顔でちょっと上というような類だというのを理解していてな」
「それでも世の中にはびこるイケメン・美女との差を見せつけられるから、滅茶苦茶むかついているんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

…何名か涙を流しているし、血の涙まで出している人がいるのはちょっと怖いかもしれない。

「おおぉぉん!ガルンさんバルンさん!!見事にフラれた苦い記憶がぁぁぁ!!」
「ナポリタン君ハバネロ君肉団子マシュマロ君に、好みじゃないといわれたあの悲しみがぁぁぁぁ!!」
「オンラインゲームをプロポーズしようとしていた人とやっていたけど、ぽっと出てきた女神の信者になってちょっとムカついたから悪く言ったら激怒されてビンタされた傷がぁぁぁぁ!!」


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