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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~
ver.5.1-55 人の嫌がることはやらないように
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暴走し、突っ込んできていた中三病さん。
どうにか無事にその身柄を確保し、大事故を防ぐことが出来た。
「すまないな、ハルさん…助けてもらって」
「いやいや、もうだいぶ中三病さん関係の騒動で慣れましたし、今更ですって」
「そういうと、何度も巻き込んで申し訳なくなるな…」
気絶から目を覚まし、助けてくれたことに感謝してお礼を述べてくる中三病さん。
何度も何度も中三病さんがらみの騒動に巻き込まれることが多かったので、こちらとしても対応は十分慣れており、問題はない。
いや、今問題を言うのであれば、何故暴走して突っ込んできたのかということなのだが…かくかくしかじかと、ハルたちは説明を聞くことになった。
「…ストーカー?」
「え?ストーカーって、よく聞きたくないけど、悲劇的な結末が多い犯罪のあれ?」
「そうだ。今、まさにその犯罪に巻き込まれているというか…」
どうやら中三病さん、ここ最近姿を見かけないことが多かったのだが、どうもストーカー被害に遭っているらしい。
なんでも、現実・オンラインの世界双方で受けているらしく、相当精神的に参っているそうなのだ。
「精神ダメージが大きく、疲れ果てて結果として気絶して暴走か…うーん、なんというか酷い話だ」
「というか、何故、そんなことになったの?」
「これは、話すとそこそこ長いのだが…」
…以前、中三病さんと別れてからの話なのだが、どうやら現実世界のほうである動きがあったらしい。
どういうものかといえば、中三病さんを色々ガッチガチに固めていたというか大事にしている方向性が何か間違っていたティラリアさん…中三病さんの姉だが、現実の方での何かしらの事情が生じたようで、少し中三病さんが解放される時間が出来たそうなのだ。
そのおかげで、人生の中で最高の解放の時間が出来たようで、その時間を楽しみまくっていたのだが…そんな中で、とある欲がひょこっと出たらしい。
自由を得て、時間を得て、余裕ができたのであれば人は何を求めるのか。
中三病さんが求めたのは…付き合ってくれる恋人。
姉という障害が一時的に失われていたとしても、いつまた復活してくるのかが分からない。
ならば、より物理的な壁も作るためにどうしたらいいのかと思考の海をこれでもかと泳ぎまくった結果、恋人を作ることで時間を持ち、姉との接触を可能な限り減らせるようにできないかと思いついたらしい。
一応、現実の方でもある程度の余裕を持った生活が出来ていたようなので…これ幸いとばかりに、婚活に挑んだようだ。
「へぇ、婚活ねぇ…それって、現実のほうでだよね?」
「いや、実はこのアルケディア・オンラインの中で、ギルドのイベント的なものでやってみるってのもあるんだよ」
オンラインゲームの中で、婚活をやって意味があるのか。
普通のゲームであれば、ネカマとか性別詐欺師などが存在しており、現実との乖離が大きくて身を全くなさないことが多い。
だがしかし、ここはアルケディア・オンライン。
ここで使用されているプレイヤーのアバターは現実のプレイヤーの肉体を模したものが多く、性別詐称とかは発生しにくい。
また、変な詐欺や恐喝、その他犯罪の温床にならないように運営もしっかり目を光らせており、ここで行われる婚活は現実の方でもある程度いい結果になることが多いようだ。
念のために事前に情報をしっかり集め、厳選した大丈夫そうなギルド主催の婚活イベントに中三病さんは乗り込んだ。
現実の世界であれば会場までの交通費なども厳しいかもしれないが、オンラインの世界だからこそ現実とは違ってより接触しやすい利点もある。
なお、本当の犯罪に巻き込まれうのも防ぐために、本当にある程度親しくならないと、オフ会というべきか、現実での接触をできないようにしているようなので、ある程度の安全性は確保されている…はずだった。
「そこで、何度か足を運んで…何度も何度も、相手に出会うことはできなかった。けれどもある時、何回目かの出席で、ようやく恋人ができたんだ」
用意をしていてもそううまくいくことはなく、挫折を味わいまくった。
だが、それでもあきらめることなく、姉の脅威を退けるための力を得るために頑張った結果、その努力の甲斐があって恋人を得ることに成功したらしい。
もちろん、最初から現実で合うことはなく、しっかりと清い交際を重ねまくり、信頼を得て、ようやく現実のほうで出会えるようにもなった。
あってみれば案外近所に住んでいた人だったようで、より親しみやすくなり、居心地のいい時間が出来上がったのだが…そこから先に、問題が生じてしまった。
「…というのはね、なんというべきか…現実の方でもしっかり彼女が出来たのは良いよ。でも、それでもやっぱりオンラインゲームでのこういうことに関してのリスクを、より理解しておくべきだった」
「まぁ、何かしらのリスクが無いわけじゃないんだろうけれども…」
「そこからストーカー被害に、どうつながるの?」
「それはだな…」
何度も何度も交際を重ね、現実の世界でも接触できるように、デートを積み重ねた。
姉からの解放になりそうであり、このままうまくいけばゴールインできそうだったそんなある日…中三病さんは、ひょんなことから人生の絶頂から深淵に迷い込んだ。
「彼女の家に、何度か遊びに行ったことあったんだけど…たまたまその日、彼女がちょっとお菓子を買うためにコンビニへ向かって、出て行った時だった」
部屋に上がって一緒に楽しく話していたのだが、お菓子が無くなったのでその彼女が買い物しに出ていった。
ほんの十分程度で終わることだったし、中三病さんも一緒にと思ったが、簡単なことで煩わせたくないということで少しだけ留守を預かっていた…そんな時だった。
「…帰ってくるまで待っている間、ゴロゴロ過ごさせてもらったんだけど…そんな時に、ふと何か嫌な予感がよぎったんだよ」
おかしい、自分は恋人の部屋にいて何も問題が無いはずなのに、物凄く寒気がする…と。
もしや、知らない間に女帝の魔の手が迫ってきているのかと思ったが、そうではなさそうだ。
でも、長年受け続けてきた恐怖のおかげと言って良いのか、中三病さんの野生の勘は研ぎ澄まされており…しばらく眠っていたはずだったが、その時にいきなり目覚めたようだ。
何が原因なのかが分からない。
けれども、何かがまずいと言うことは理解できる。
そう思い、わからないけれどどうにか探れないかとあちこち見たとき…ふと、彼女の部屋のベッドの下に、何かがあることを見つけた。
それは何か、地下収納の小さな扉の様なもの。
ベッドの下にあるのですぐには入れないだろうが、そこから物凄く嫌な気配を感じ取った。
見てはいけない。けれども、そこに何かが確実にある。
しかし、その日はすぐに彼女が帰ってきたのもあって探れず…その場では見ることが出来なかった。
後々何故あそこから嫌な気配がしていたのか考えてみると、あることにも気が付いた。
彼女の部屋は二階にあったのだが…おかしなことに、家の構造上、その下らしい部屋が無い。
ほんのわずかな一介の天井との隙間にある収納部屋かと思ったが、思い返して書き出してみると、不自然な空間があることに気が付いた。
見てはいけない、探ってはいけない。けれども、放置できないような寒気。
何なのか気になり、どうにかこうにか探れないかと思いつつも、彼女に限ってそんな嫌なものとかはないはずだと思いたい気持ちもあり、悶々と日々を過ごす中で…偶然、入る機会を得た。
ある日、一緒に室内でオンラインではなく据え置きゲームでの格闘ゲームを遊んでいると、急に彼女が外出する用事が出来たという。
どうも彼女の妹がうっかり電車で寝てしまい、かなりの遠い駅についてしまったようで…迎えに行くために出ることになった。
その時に、ふとベッドの下の謎の悪寒部屋を思い出し、留守をいったん預かることにして、探ることにした。
そう長くは探ることが出来ないだろう。いつ戻ってくるかもわからない。
でも、今しかないと思い、彼女が家を出てすぐにベッドをずらし、その隠された床下収納の様な扉に手をかけると、そこには階段があった。
家の構造上、おかしな位置にある下へと続く階段。
一階に続いておらず、壁の中を縫うようにしてかなり狭い階段だったがどうにかこうにか下り…地下室らしい場所へたどり着いた。
そこは、一枚の扉が次の部屋へと隔てている場所。
その先に、何か取り返しのつかないような悪寒を感じ取ったが、それと同時に見なければもっとやばい予感もひしひしと感じ取り、意を決してのぞき込み…そこで、中三病さんは知ってしまった。
秘されていた、恋人と思っていた彼女の秘密を。
嫌な予感を感じ取らせたその原因が、そこにありありと存在していた。
…人は、自身の行いの結果を顧みて、取り戻せないと時間を嘆く時がある。
それはほんのわずかな選択の時で、謝ったとしても戻すことが出来ないもの…後悔。
そう、その時中三病さんはこれまでの人生の中で間違いなく一番の後悔をして…そして、悲劇が決定づけられてしまったのだと、語るのであった…
どうにか無事にその身柄を確保し、大事故を防ぐことが出来た。
「すまないな、ハルさん…助けてもらって」
「いやいや、もうだいぶ中三病さん関係の騒動で慣れましたし、今更ですって」
「そういうと、何度も巻き込んで申し訳なくなるな…」
気絶から目を覚まし、助けてくれたことに感謝してお礼を述べてくる中三病さん。
何度も何度も中三病さんがらみの騒動に巻き込まれることが多かったので、こちらとしても対応は十分慣れており、問題はない。
いや、今問題を言うのであれば、何故暴走して突っ込んできたのかということなのだが…かくかくしかじかと、ハルたちは説明を聞くことになった。
「…ストーカー?」
「え?ストーカーって、よく聞きたくないけど、悲劇的な結末が多い犯罪のあれ?」
「そうだ。今、まさにその犯罪に巻き込まれているというか…」
どうやら中三病さん、ここ最近姿を見かけないことが多かったのだが、どうもストーカー被害に遭っているらしい。
なんでも、現実・オンラインの世界双方で受けているらしく、相当精神的に参っているそうなのだ。
「精神ダメージが大きく、疲れ果てて結果として気絶して暴走か…うーん、なんというか酷い話だ」
「というか、何故、そんなことになったの?」
「これは、話すとそこそこ長いのだが…」
…以前、中三病さんと別れてからの話なのだが、どうやら現実世界のほうである動きがあったらしい。
どういうものかといえば、中三病さんを色々ガッチガチに固めていたというか大事にしている方向性が何か間違っていたティラリアさん…中三病さんの姉だが、現実の方での何かしらの事情が生じたようで、少し中三病さんが解放される時間が出来たそうなのだ。
そのおかげで、人生の中で最高の解放の時間が出来たようで、その時間を楽しみまくっていたのだが…そんな中で、とある欲がひょこっと出たらしい。
自由を得て、時間を得て、余裕ができたのであれば人は何を求めるのか。
中三病さんが求めたのは…付き合ってくれる恋人。
姉という障害が一時的に失われていたとしても、いつまた復活してくるのかが分からない。
ならば、より物理的な壁も作るためにどうしたらいいのかと思考の海をこれでもかと泳ぎまくった結果、恋人を作ることで時間を持ち、姉との接触を可能な限り減らせるようにできないかと思いついたらしい。
一応、現実の方でもある程度の余裕を持った生活が出来ていたようなので…これ幸いとばかりに、婚活に挑んだようだ。
「へぇ、婚活ねぇ…それって、現実のほうでだよね?」
「いや、実はこのアルケディア・オンラインの中で、ギルドのイベント的なものでやってみるってのもあるんだよ」
オンラインゲームの中で、婚活をやって意味があるのか。
普通のゲームであれば、ネカマとか性別詐欺師などが存在しており、現実との乖離が大きくて身を全くなさないことが多い。
だがしかし、ここはアルケディア・オンライン。
ここで使用されているプレイヤーのアバターは現実のプレイヤーの肉体を模したものが多く、性別詐称とかは発生しにくい。
また、変な詐欺や恐喝、その他犯罪の温床にならないように運営もしっかり目を光らせており、ここで行われる婚活は現実の方でもある程度いい結果になることが多いようだ。
念のために事前に情報をしっかり集め、厳選した大丈夫そうなギルド主催の婚活イベントに中三病さんは乗り込んだ。
現実の世界であれば会場までの交通費なども厳しいかもしれないが、オンラインの世界だからこそ現実とは違ってより接触しやすい利点もある。
なお、本当の犯罪に巻き込まれうのも防ぐために、本当にある程度親しくならないと、オフ会というべきか、現実での接触をできないようにしているようなので、ある程度の安全性は確保されている…はずだった。
「そこで、何度か足を運んで…何度も何度も、相手に出会うことはできなかった。けれどもある時、何回目かの出席で、ようやく恋人ができたんだ」
用意をしていてもそううまくいくことはなく、挫折を味わいまくった。
だが、それでもあきらめることなく、姉の脅威を退けるための力を得るために頑張った結果、その努力の甲斐があって恋人を得ることに成功したらしい。
もちろん、最初から現実で合うことはなく、しっかりと清い交際を重ねまくり、信頼を得て、ようやく現実のほうで出会えるようにもなった。
あってみれば案外近所に住んでいた人だったようで、より親しみやすくなり、居心地のいい時間が出来上がったのだが…そこから先に、問題が生じてしまった。
「…というのはね、なんというべきか…現実の方でもしっかり彼女が出来たのは良いよ。でも、それでもやっぱりオンラインゲームでのこういうことに関してのリスクを、より理解しておくべきだった」
「まぁ、何かしらのリスクが無いわけじゃないんだろうけれども…」
「そこからストーカー被害に、どうつながるの?」
「それはだな…」
何度も何度も交際を重ね、現実の世界でも接触できるように、デートを積み重ねた。
姉からの解放になりそうであり、このままうまくいけばゴールインできそうだったそんなある日…中三病さんは、ひょんなことから人生の絶頂から深淵に迷い込んだ。
「彼女の家に、何度か遊びに行ったことあったんだけど…たまたまその日、彼女がちょっとお菓子を買うためにコンビニへ向かって、出て行った時だった」
部屋に上がって一緒に楽しく話していたのだが、お菓子が無くなったのでその彼女が買い物しに出ていった。
ほんの十分程度で終わることだったし、中三病さんも一緒にと思ったが、簡単なことで煩わせたくないということで少しだけ留守を預かっていた…そんな時だった。
「…帰ってくるまで待っている間、ゴロゴロ過ごさせてもらったんだけど…そんな時に、ふと何か嫌な予感がよぎったんだよ」
おかしい、自分は恋人の部屋にいて何も問題が無いはずなのに、物凄く寒気がする…と。
もしや、知らない間に女帝の魔の手が迫ってきているのかと思ったが、そうではなさそうだ。
でも、長年受け続けてきた恐怖のおかげと言って良いのか、中三病さんの野生の勘は研ぎ澄まされており…しばらく眠っていたはずだったが、その時にいきなり目覚めたようだ。
何が原因なのかが分からない。
けれども、何かがまずいと言うことは理解できる。
そう思い、わからないけれどどうにか探れないかとあちこち見たとき…ふと、彼女の部屋のベッドの下に、何かがあることを見つけた。
それは何か、地下収納の小さな扉の様なもの。
ベッドの下にあるのですぐには入れないだろうが、そこから物凄く嫌な気配を感じ取った。
見てはいけない。けれども、そこに何かが確実にある。
しかし、その日はすぐに彼女が帰ってきたのもあって探れず…その場では見ることが出来なかった。
後々何故あそこから嫌な気配がしていたのか考えてみると、あることにも気が付いた。
彼女の部屋は二階にあったのだが…おかしなことに、家の構造上、その下らしい部屋が無い。
ほんのわずかな一介の天井との隙間にある収納部屋かと思ったが、思い返して書き出してみると、不自然な空間があることに気が付いた。
見てはいけない、探ってはいけない。けれども、放置できないような寒気。
何なのか気になり、どうにかこうにか探れないかと思いつつも、彼女に限ってそんな嫌なものとかはないはずだと思いたい気持ちもあり、悶々と日々を過ごす中で…偶然、入る機会を得た。
ある日、一緒に室内でオンラインではなく据え置きゲームでの格闘ゲームを遊んでいると、急に彼女が外出する用事が出来たという。
どうも彼女の妹がうっかり電車で寝てしまい、かなりの遠い駅についてしまったようで…迎えに行くために出ることになった。
その時に、ふとベッドの下の謎の悪寒部屋を思い出し、留守をいったん預かることにして、探ることにした。
そう長くは探ることが出来ないだろう。いつ戻ってくるかもわからない。
でも、今しかないと思い、彼女が家を出てすぐにベッドをずらし、その隠された床下収納の様な扉に手をかけると、そこには階段があった。
家の構造上、おかしな位置にある下へと続く階段。
一階に続いておらず、壁の中を縫うようにしてかなり狭い階段だったがどうにかこうにか下り…地下室らしい場所へたどり着いた。
そこは、一枚の扉が次の部屋へと隔てている場所。
その先に、何か取り返しのつかないような悪寒を感じ取ったが、それと同時に見なければもっとやばい予感もひしひしと感じ取り、意を決してのぞき込み…そこで、中三病さんは知ってしまった。
秘されていた、恋人と思っていた彼女の秘密を。
嫌な予感を感じ取らせたその原因が、そこにありありと存在していた。
…人は、自身の行いの結果を顧みて、取り戻せないと時間を嘆く時がある。
それはほんのわずかな選択の時で、謝ったとしても戻すことが出来ないもの…後悔。
そう、その時中三病さんはこれまでの人生の中で間違いなく一番の後悔をして…そして、悲劇が決定づけられてしまったのだと、語るのであった…
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