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Ver.5.0 ~世界の焔と、導きの篝火~

ver.5.1-56 理解したくないものほど、恐ろしいものになる

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…ベッドの下に隠されていた部屋。
 そのなかで何を見たのか、そこまで中三病さんは語らなかった。
 
 いや、思い出したくはないのだろう。相当衝撃的なものを、目にしたらしい。

「…とりえあえず、見てしまった後、すぐにその部屋から出て入った痕跡を極力消した。ばれたら確実に不味いことになるのが、目に見えるからな」
「中三病さん、逃げる時の痕跡消しはきちんとやったの?指紋とか、髪の毛とか、隠したつもりとかでも割と残るよ」
「そこもしっかりと、掃除しておいた。姉から逃げる時に、追跡できないようにするための痕跡消し技術力ならば嫌でも磨かれているからな」

 そんな経験があったからこそ、確実に入ったことはバレないはずだった。
 その後に恋人…だった人はすぐに帰ってきて、平静を装って対応し、その後は家に戻った。

 だが、後で平静な対応を取ろうとしても…見てしまった室内の光景のせいで、今後できるかはわからない。
 いっそのこと、記憶をどうにか地平線の彼方にやったり消せないかと思ったが…残念ながら、その対応を取る前に、事は動いてしまった。


「つまり、バレたと」
「ああ、完全に消し去ったつもりだったが…わずかな温度変化で、侵入したこと自体を悟られたらしい」
「そんなことで!?」

 どう考えてもあり得ないようなことなのだが、出来てしまったのだから仕方がない。
 考えてみれば、この中三病さん周辺の人もまぁまぁな割合でツッコミどころ満載ながらも凄まじい人が集まるといえばそうだし、恋人だった人も該当しておかしくないだろう。


 とにもかくにも、バレたらすぐに全力土下座からの、室内の光景に関して得た情報をもとに、別れられないかと交渉し…どうにか、別れることには成功した。

 相手も中々引き下がらなかったようだが、見られたくなかったらしい部屋を見られたのが答えたのか、案外あっさりとした幕引きだったらしい。




 このまま何事もなく、終わってくれればよかったのだが、世の中単純に動かない。

「それから数日後に…何者かに付けられていたりすることが分かって、調べた結果、その元恋人にストーカーされていることに気が付いたんだ」
「え?交渉して別れたのに、なんで?」
「引き下がったけど、諦めが悪くてやっぱりついてきたとか?」
「そういう単純な理由だったら、良かったんだよなぁ…」

 行動原理が、単なる諦めの悪さだけであったら理解できる。
 しかしながら、世の中理解できないことというのは存在してた。


「…どうもな、変な扉を開いちゃったらしい。自分の隠していた秘密を見られて恥ずかしいと思っていたようだが、バレたらそれはそれで妙な快楽を得ちゃったようで…」
「…要は、新種の変態戦隊予備軍みたいなのが生まれたと」
「そういうことだ」

 どうやらその元恋人、自分の秘密がばれたことに対して何やら開いてはいけない扉を開いたというか、未知の快感を得てしまったらしく、何度も得るために再び同じようなことをできないかと、中三病さんに交渉し始めたらしい。
 要はドMの特殊型みたいなものになってしまったようで、断ったものの執拗に付きまとい、警察のご厄介にもなったそうだがそれでも出てきては繰り返し、次第に重度のストーカーへと変貌していったようだ。

「え、捕まっているのに出てくるの?」
「脱獄だとさ。留置所、刑務所、監獄と移っていったのに…どこに入っても、気が付いたらそばにいるようなことになっているんだぞ!!単純に自分の趣味嗜好の欲望を満たすためだけにそこまでやるって、どうなっているんだよ!!」
「さらっとやばいところにも突っ込んでいるね…」

 既にこのストーカー行為に関しても元恋人は快楽を得てしまったようで、やめろと言ってもやめてくれない。
 警察沙汰、裁判沙汰になってもうんともすんともこたえることもなく、自身の欲望を満たすためだけに付きまといまくっているらしい。
 そのうち罪を積み重ねてより厳重な処分が下されて行っているというのに、それすらも快楽へと転換してしまい、もはや何のためにストーカーしているのかという目的もあやふやになって、いまだにしつこく付きまとっているそうだ。

「なんというか…ご愁傷様だね。うん、中三病さん、何か憑かれていそうなんだけど、お払いとかは?」
「すでにあちこちでお払いも、お地蔵様神様神社大仏世界の聖地…その他諸々めぐって頼み込んでも、どうしようもないんだよ…」

 恐るべきというべきだろうか、それとも悍ましいというべきなのか。
 もはや目的すらもあやふやになりつつあるのに、ストーカーに付きまとわれまくっているのは相当精神に来るだろう。

 恐竜女帝の方でのメンタルへの圧力は強かっただろうが、そこにさらにストーカーの霊圧が加わってより大きな負担となって中三病さんの精神に負荷をかけている。


「今もだ、このオンラインゲームに入っている中でも、奴はプレイヤーとして活動しており…運営に通報しても、すぐに舞い戻ってくるんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
【ン?それ、おかしいですネ】
「っと、ロロいつの間に」

 心からの叫びを中三病さんが叫ぶ中で、いつの間にか話を聞いていたらしいロロがそばにいた。


【中三病さん、運営にそのプレイヤーを何度も通報しましたカ?】
「ああ、間違いない。何度も執拗になって、この間はアカウントBANまで行ったと思ったのに…しれっと復活していたんだ」
【ふーむ、そうなるとやはりおかしいですネ。迷惑行為をするプレイヤーに対して、アカウントBAN…要は入れないように永遠の出禁もいたのに、普通にいるのは妙デス】
「新しいアバターやアカウントを作って、ログインしたんじゃないの?」
【いえ、それは不可能なはずデス】

 ロロの説明曰く、アルケディア・オンラインのプレイヤー情報は厳重に管理されているわけだが、こうやってVRMMOとして遊ぶ都合上、プレイヤーの生体情報などもちょっと取っているらしくて、同一人物か否かは簡単に判別できるらしい。
 そのおかげで、ブラックリストに載っているような類のプレイヤー情報も有しており、利用して別の機体やアバター、アカウントを利用しても二度と入れなくなるようになっているそうだ。

【それなのに、ログインできているのは変な話なのデス】
「なるほど…そんな仕組みがあるのか」
【ハイ。中三病さんとは別件で、一度消去した方が、再び別の方法で入ってきて迷惑行為を繰り返すというのは、オンラインというシステム上世界中のどこかで起きたりしましたからネ。防止策として、そんなプレイヤーは二度と利用できないように仕組みが作られているのですが…それを抜けているのがどうなっているのでしょうカ】

 運営も馬鹿ではない。
 むしろ、そんな犯罪行為をアルケディア・オンラインの中で起こされては困るので、何重にも対策を練っているはずなのである。
 だがしかし、何故かログイン出来ているという中三病さんの元恋人もといストーカーも同じ扱いになるはずなのに、入ってきているのは奇妙な話だ。


【…何かこう、その元恋人さんにきな臭い何かがありそうですネ。調べたいので、情報を少々いただけないでしょうカ】
「ああ、解決できそうなカギになるなら、ぜひとも頼む…!!」

 おかしなことには何か理由があるのは当然のことで、その理由をロロが探ってくれるようだ。
 彼女に任せてできなかったことなどあまりないので、今回も何かしらの解決策が出ないか、期待するのであった…


「こういう時に限って、どうしようもできないことになったりして」
「そんなフラグっぽい言葉を言わないでくれ!!」

…流石に、どうにかできるとは思うぞ?最終手段としてはフロンおば、お姉ちゃんに頼るってこともできるし、中三病さんの境遇を考えると、どうにかしてあげたいなと思うからなぁ…
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