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冬休みの騒動で章

87話

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 あのソークジもとい屑貴族との正式な決闘の日が少々延期され、5日後になった。

 その理由としては、どうも代理人探しが思った以上に難航し、なかなか見つからないのだとか。

 まるでどこからか圧力がかけられ、そういった決闘用の代理人を斡旋するところから手に入れにくい状態らしい。

 そうなると、きちんと入手するのにそれ相応の大金が払われるんだろうけど・・・・・その分、金がかかり過ぎて決闘を行っても儲けがなさそうである。


「いや、そういった場合は賭けが行われていて、その胴元になって賭ければ儲かることもあるらしいな」

 と、ちょうど今回の決闘に辺り、練習相手をしてもらっているレリアがルースの疑問に答えた。

「そういうものなのか?」
「ああ、帝国でも決闘があったりするから、それでよく学んでいるんだよ。ちなみに、私の父上・・・・現皇帝陛下は決闘を受け、公式では120戦中119勝しているんだよな」
【え?その1敗だけがなんか気になるのじゃ】

 なんとなく気になる1戦の敗退。一体何があった?

 召喚し、事情を話して一応の戦闘用意をしてもらうタキも気になったようで、尋ねる。

「その1敗だがな、どうもその、母上に負けたらしい」


・・・・・まさかの皇帝の妻ですか。

「へぇ?そんなことがあったの」

 話を聞き、審判役をしていたエルゼも話に食いついた。

「とは言っても、どうして負けたのかは知らないがな。なぜか負けたことは話してはくれても、何の試合で負けたのかまでを教えてくれないんだ」

 いや本当に何をやらかしているんだろうかその皇帝。






 とにもかくにも、話がそれかけたが、今はその決闘の準備をルースは行っていた。

 今回の決闘に当たり、この際全力で徹底的に力を見せつけろとバルション学園長に言われたのである。

 今まではこの魔導書グリモワールの力とかで悪だくみをするような輩が来るのを避けるため、隠されてきたらしいけど・・・・・限界がある。

 この先、またフェイカーだとかと接触した際に力が見られるのはもはや必然でもあり、隠すのは得策ではなくなったのだとか。

 そこで、今回の決闘を利用させてもらい、大々的な宣言をするようである。

 なお、その際にバックに・・・・・

「エルゼとレリア、本当に良いのか?」
「ええ、ルース君のためですし、お父様に手紙で知らせてみたら速攻でOKをもらったわ」
「うむ、こちらとしても帝国との友好関係上、戦力バランスなどを考えてバックにつくのをよしと皇帝陛下からいただいているからな。大丈夫だ」

 ルースの問いかけに対して、エルゼとレリアはそう答えた。


 何かを企む輩がいるのであれば、背後にがっちりとした強固な支えがあったほうが良い。

 そういうわけで、エルゼのミストラル公爵家、レリアのモーガス帝国の皇家をベースにして、あとはバルション学園長に国滅ぼしのモンスターであるタキが背後にいることを知らしめるそうだ。


―――――私ハ良イトコ無シダケドネ。
「まぁまぁ、バトも応援してくれればいいからね」

 ポケットから顔をだし、すねるように頬を膨らませるバトに対して、ルースは苦笑した。

 彼女の場合は強固なバックがない。

 まぁ、今回のこの決闘でルースの手許にいることが知られれば、必然的にルースの背後の方も視野に入るので彼女が好事家のような輩に狙われる確率も0に等しくなるだろう。




 とにもかくにも、あとは決闘での相手の出方次第である。

 天性の大馬鹿野郎でもない限り、ぶっ飛んだ大馬鹿な事をやらかすこともないだろうし、バルション学園長いわくバズカネェノ侯爵家がそもそも他の貴族たちにも嫌がられているそうなので、ここで派手にボロボロにしてあげれば、自然と他の貴族たちからも完全に見放され、自然消滅するだろうという見方であった。


「流石に、決闘までの間に勝機がないから毒を盛るとか、暗殺者を仕向けるとか、何か妨害工作として人質を取るなんてことはしないだろうな」
「グリモワール学園の寮にいる限り毒も暗殺者もセキュリティ上無理よね」
「ルースに対して人質というのも・・・・・なりそうなのは肉親か?でも、ここからそこそこの距離の村にいるというし、取りに行くのは無理だろうな」
―――――人質トシテ有効ナノハソモソモ学園在住ダヨネ。
【ま、簡単に言えばどれも無理じゃな。とはいえ、経験上伝説的な馬鹿で我々の常識外の超ろくでもないことをしでかすし、油断は禁物じゃ】

‥‥‥経験上って、何があったタキよ。

 とにもかくにも、決闘まで時間はある。

 力を見せつけ、圧倒的かつ印象深くするためにも精進をしないとね。


 ぐっとこぶしを握り、改めてそう心に誓うルース。

 一方で、エルゼたちがこっそり裏で、そんな馬鹿野郎な事がされないように仕掛けているのは気が付かないのであった。


(陰から守り、ルース君を万全にさせる。これこそ絶対的な愛よね。しかし、叩けば叩くほど出るわ出るわ・・・・一体どれだけの馬鹿なのかしら?)
(帝国との力関係のバランスと言ったとはいえ、やっぱり好きな人には全力を・・・・って、私は何を考えているんだ)
(うーん、決闘時に召喚される可能性はあるとはいえ、やはり派手に登場はしてみたいのぅ。いっその事、火竜の奴も誘ってみるか?あいや、召喚魔法じゃとできぬか)
(タマニ不審者イルケド、コッソリ学園長ニ連絡シテ排除シテモラッテイルカラ大丈夫ダヨ主様)








 ちょうどその頃、ようやくソークジ達は代理人を見つけようとしていた。

 斡旋しようにもなかなか見つからず、この際自ら出てやるかと思っていたが、思わぬところから手を差し伸べられたのである。


「なるほど・・・・そちらが出してくれるのか。下賤な民とはいえ、感心だ!」
「ええ、そうでございますでやす。あなたさまのような高貴な貴族はしっかり勝ってもらわないといけないでやす」
「うむ!!その通りだ!」
「ところでソークジ様、物は相談ですが・・・・・この決闘で、ちょっとこれはいかがでやすか?」
「ほう?これはこれは・・・・・なるほど、その手もあるのか!!」

 盛り上がり、そして勝利を確信するソークジ。

 彼は今、勝利しか見えていない状態。

 だがしかし、気が付いたときにはすでに何もかも失ってしまうのだが・・・・・・・この時はまだ、知らぬことであった。
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