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美男子とのディナー(中編)
前菜で出てきた5種類の料理を詳しく説明してくれたが、料理名がお洒落で覚えられなかった。いや、私の場合はそんなものに興味なかったと言った方が正しいかもしれないが。
「特に順番などありませんから、お好きなように食べてください。」
「はい、ありがとうございます。いただきます。」
説明をしていた誠の言葉を引き継いだ美琴が食べるように勧めてきたので、私は遠慮なく取り皿に一種類ずつ少量だけ取って食べた。どういうのがマナーとか分からないので、適当だったが前に座るジークは特に注意しないどころか笑みを向けているだけだったので、構わないということだろう。
「いただきます。」
合掌してからさっそくフォークで1種類ずつ口に運んでいった。
サーモンとかトマトとかチーズとか、日常的に食べている食材ばかりなのに、どれもこれもが今まで食べてきたものとは別のものだと舌が訴えてくることが不思議だった。
つまり、めっちゃうまいってことだ。
「あー、美味しい。幸せ。」
思わず頬が緩んでしまい、心の声まで吐露してしまった。
人間、美味しい物の前では決してしかめっ面も真顔もできるはずもない。
そんな風に抗うことができないほどに、目の前の料理は素晴らしかった。
ちょっと上から目線になってしまった。反省します。
「そう、それはよかった。郁美を連れてきた甲斐があったよ。」
「それほどまでに喜んでいただけるとは、こちらも作り甲斐があります。」
「本当だね。あ、郁美ちゃん、飲み物があいてるよ。何か飲む?」
ジークはニコニコ、人1人通れるぐらいに離れて横に立つ美琴も嬉しそうにな表情、そして、誠はそんな中でもきちんとこちらの状態を気遣う仕草、そんな風に穏やかに丁寧に扱われると夢心地になってしまう。
「飲み物、オレンジジュース?それとも、他のにする?」
誠はグラスを持って尋ねた。
私はお腹具合を確認して首を横に振った。
「お水で十分です。ジュースでお腹膨れそうですから。」
「え?もしかして、ここに来る前に何か食べてきた?ジークが待たせたのか?」
私の答えに驚いた誠はジークの方にジト目を向けた。
ジークは、心外だ、と言わんばかりの表情で応対しており、私は説明を加えた。
「あ、違うんです。元々、そんなに食べる方でもないし、ジュースでお腹いっぱいになってメインで選ぶ料理やデザートが食べられなくなったら勿体ないので、温存しようかと思いまして。」
「小食なの?」
私の発言に3人が驚いた顔をしており、ジークが首を傾げて代表で尋ねた。
彼らはきっと外見と発言の不一致を言っているのだろう。今までもそんなことを言われたことは多々あった。
『ダイエットしてるの?』
『体に悪いからやめておきなよ。』
『もっと食べないと駄目よ。』
『何をそんなに遠慮してるんだ?』
『そんな風にちまちま食べるんじゃない!』
『私の料理、美味しくない?』
親、親戚、学校の同級生、様々な人を悲しませたり怒らせたり、心配されてきたことだった。
でも、仕方がない。そんなにお腹空かないんだから。
この人達はどんな反応をするのだろうか?
「まあ、昔からそんなに食べる方ではなかったですね。小学校の給食は学校で最後まで食べていました。」
「給食?」
「ああ、ジークはスイスだから知らないか。学校は給食といって決められたメニューを決められた量だけ配られてそれを食べるんだ。」
「へえ。」
「それを全部食べるまでは休憩なしで、食べきれない場合は教師に言うんだよね?」
「はい、私はほとんど担任に報告してました。」
「そうなんだ。」
「いつもは1食どれくらいの量を食べていますか?」
誠が説明した給食を知って感心しているジークをよそに静観していた美琴が尋ねた。
「えーと、夕食はバイトの後なんですが、梅とおかかのおにぎり2個とお味噌汁とメインって感じです。」
「なるほど。一般的な量ですね。」
「たぶん。」
彼女の評した”一般的”の量が具体的に分からないので、曖昧な返事しか返せなかった。
「本日はジーク様の半分ずつ召し上がるので同じぐらいの量で収まると思いますけど、辛かったら無理しないでください。」
「すみません、ありがとうございます。」
「あ、パンとご飯はどちらがいいですか?」
「え?ご飯も提供するの?ミーちゃん。」
私に尋ねてきていたのに、美琴の質問にジークが食らいついた。
「ええ、やはりご飯を好きな方がおられますから。」
「へえ、そうなんだ。何でもありになってきたね。」
「お客様の要望に応えるのは私の仕事ですからね。」
「そうだよ、ジーク。ここはお客様の疲れを癒し元気になっていただくお店なんだから。肩が凝るようなフレンチばかりではないんだよ。」
「そうでした。ハハッ。」
誠の言った内容のどこに笑いが起こったのか分からないが、ジークは少しだけツボったようだった。
まあ、私には分からないことなので、誠にもらった水をグビグビ飲んだ。
気づけばジークも話しながらも食べてはいたようで、前菜の皿はほとんど空になっていた。
「次はお待ちかねのメインだね。肉にする?」
「はい。肉がいいです。」
「魚はそんなに好きじゃないの?」
「いいえ、特には。ただ、魚の方が食べる機会が多いのでお肉がいいなと思って。」
「了解。」
さっきから私の意見ばかり取り上げられているけど、ジークは本当に本心からいいと思っているのだろうか?
会話をしながら不思議に思ってしまう。ここの代金は彼が払うことになっているんだから、意見が食い違えば彼の意見に全面的に首を縦に振っていただろう。いや、コース料理で予約しておけば、一も二もなく頷いていた。
それなのに、彼は先ほどから私が言ったメニューしか頼んでいない。これにはさすがに彼に悪すぎる。
「あの、私よりあなたが食べたい物を注文してください。ここの代金はあなたが払うんですし。私はただの付き添いですから。」
「いいんだよ。僕、この店、結構来ているし。それに、君の好きな物とか知りたいからね。」
「・・・そうですか。」
平然と言う彼の言葉に詰まってしまうし、それ以上、何も言えなくなってしまう。
小食だと言ったときも彼は意外そうな表情はしてもそれ以外には何もなかった。それに、今もただただ嬉しそうにこちらを見てくる。この視線を居心地悪く思いながらも片隅では嬉しいと思っている自分がいた。そんな自分が恥ずかしくなった。
メインの肉煮込みは時間がかかるらしく、その間待ち時間になった。
「郁美はバイト何しているの?」
「えっと、清掃員です。(もう行けないけど)」
心の内は決して話せないけど、それ自体は嘘じゃなかった。ただ、昨日までの自分のことだけど。
「休みは?学校は休みは週末かな。」
「そうですね。今、本来なら夏休みですけど授業単位が少なくて学校は休みじゃないんです。その代わり、夏休み課題がなくてラッキーです。」
「そうなんだ?何でそんなことになったの?」
「風邪で1か月学校閉鎖だったからです。」
「ああ、流行したって聞いたな。」
話に納得したのは手持ち無沙汰で横に立っているどころかいつの間にか椅子を持ってきて座っている誠だった。それには、ジークが睨みつけていた。
「誠、ウエイターなんだから仕事したら。」
「だって、貸切にしたお客が注文ないから暇なんだよ。」
「じゃあ、奥さん手伝ってきなよ。」
「えー、厨房入ると邪魔だった追い出されるから嫌だよ。僕は味見役、美琴はシェフで役割分担されているから夫婦仲が上手くいっているんだよ。」
「あ、そう。」
もう相手にするのが面倒くさくなったジークは誠を軽く流した。
「風邪か。郁美は大丈夫だった?」
「はい、私は何ともなかったです。だから、1か月はバイトをずっとシフト入れていました。」
「日本人はワーカホリックだね。そんなに働かなくても好きなことをすればいいのに。」
「私、それがないんですよね。掃除は好きですから今のバイト向いているんですよ。」
「そうなんだ。」
「郁美ちゃんって、ここの近くの都立の高校だよね?」
あまり深くは突っ込んでこないジークに安堵して話題が1段落したかと思えば、誠が入ってきて混乱した。
「まあ、そうですね。」
「今日も確か5時ぐらいまで授業だよね?もしかして、サボり?」
なんで、この人こんなに詳しいの!?
確かに、今日は金曜日で普通に学校で授業があるし、7コマ授業だから5時までは授業で正しい。たぶんだけど。もう学校行けないと思っているから時間割なんて覚えていなかった。
いや、それよりもこの話題を切り抜けられる自信がなく、2人の男性からすごく熱い視線を感じた。それで、冷房の効いた部屋なのに汗がダラダラと流れていた。
「いや、あの、まあ、そうですね。」
「漫画を探していたから?」
「ええ、まあ。」
「本当に?」
「ええ、まあ。」
「ふうん。郁美ちゃんって苗字なんて言うの?」
「え?何でですか?」
怖っ
誠からの質問には頭の中で最上級の警鐘が鳴り響いた。
今まですでに頭が混乱状態で彼の質問に適当に答えていたのに、最後の質問だけはその混乱は全て真っ白にされて、ただただ頭の中を爆音のサイレンだけが鳴り響いていた。
「俺、この辺りの出身なんだよ。母が近所付き合いは大事とか言って駅周辺の住宅を1件ずつ回ったりして、それから結構な家と付き合いができたんだ。でも、その中で郁美ちゃんみたいな目立つ子を見たことがなかった。それだけスタイルが良くて美人だとご近所で有名だと思うんだけど。。」
誠は不思議そうに首をひねっていた。
彼の言葉に唖然とした。そんな人がいたなんて聞いたこともなかった。
いや、聞いたことがなくても不思議じゃないな。うん。
「ああ、それはないかもしれません。私は引っ越してきたので、1年半ほど前に。」
「そうなんだ。母が配っていたのはもう8年も前だったな。そう言えば。じゃあ、俺が見たことないのも納得かも。」
「そうですね。」
よし、切り抜けた。
私は勝利を確信した。
「それで、郁美ちゃんの苗字は?」
「お待たせしました。」
勝利を確信したのに、まだ誠は諦めていなかったようでゲンナリしたところに、彼の奥さん、美琴が料理を運んできた。
メインはお肉で固まりがドドンと存在感があった。他に雑穀が混ぜられたようなパンが添えられていた。
「ワイン煮込みです。きちんとアルコールは飛ばしましたから大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
彼女はにっこり笑って付け加えた。未成年に料理だとしてもお酒は出しませんと言われているようで安心した。
誠だとジークとの仲が深そうだから一服盛るかもしれないからね。危険度でいえば美琴の方が低いだろう。
「さて、召し上がってください。」
彼女の声を合図に私は肉に手を伸ばした。
ジークは何か考えているように顎に手を当てていたが、私と目が合うとニッコリ笑っていた。
それが、本当の笑顔か作り物か私には判断できなかった。
ただ、1つ言えることはこれ以上誠と話すのは、私の立場を悪くすることだけだった。
恐るべし、ご近所さん!!
「特に順番などありませんから、お好きなように食べてください。」
「はい、ありがとうございます。いただきます。」
説明をしていた誠の言葉を引き継いだ美琴が食べるように勧めてきたので、私は遠慮なく取り皿に一種類ずつ少量だけ取って食べた。どういうのがマナーとか分からないので、適当だったが前に座るジークは特に注意しないどころか笑みを向けているだけだったので、構わないということだろう。
「いただきます。」
合掌してからさっそくフォークで1種類ずつ口に運んでいった。
サーモンとかトマトとかチーズとか、日常的に食べている食材ばかりなのに、どれもこれもが今まで食べてきたものとは別のものだと舌が訴えてくることが不思議だった。
つまり、めっちゃうまいってことだ。
「あー、美味しい。幸せ。」
思わず頬が緩んでしまい、心の声まで吐露してしまった。
人間、美味しい物の前では決してしかめっ面も真顔もできるはずもない。
そんな風に抗うことができないほどに、目の前の料理は素晴らしかった。
ちょっと上から目線になってしまった。反省します。
「そう、それはよかった。郁美を連れてきた甲斐があったよ。」
「それほどまでに喜んでいただけるとは、こちらも作り甲斐があります。」
「本当だね。あ、郁美ちゃん、飲み物があいてるよ。何か飲む?」
ジークはニコニコ、人1人通れるぐらいに離れて横に立つ美琴も嬉しそうにな表情、そして、誠はそんな中でもきちんとこちらの状態を気遣う仕草、そんな風に穏やかに丁寧に扱われると夢心地になってしまう。
「飲み物、オレンジジュース?それとも、他のにする?」
誠はグラスを持って尋ねた。
私はお腹具合を確認して首を横に振った。
「お水で十分です。ジュースでお腹膨れそうですから。」
「え?もしかして、ここに来る前に何か食べてきた?ジークが待たせたのか?」
私の答えに驚いた誠はジークの方にジト目を向けた。
ジークは、心外だ、と言わんばかりの表情で応対しており、私は説明を加えた。
「あ、違うんです。元々、そんなに食べる方でもないし、ジュースでお腹いっぱいになってメインで選ぶ料理やデザートが食べられなくなったら勿体ないので、温存しようかと思いまして。」
「小食なの?」
私の発言に3人が驚いた顔をしており、ジークが首を傾げて代表で尋ねた。
彼らはきっと外見と発言の不一致を言っているのだろう。今までもそんなことを言われたことは多々あった。
『ダイエットしてるの?』
『体に悪いからやめておきなよ。』
『もっと食べないと駄目よ。』
『何をそんなに遠慮してるんだ?』
『そんな風にちまちま食べるんじゃない!』
『私の料理、美味しくない?』
親、親戚、学校の同級生、様々な人を悲しませたり怒らせたり、心配されてきたことだった。
でも、仕方がない。そんなにお腹空かないんだから。
この人達はどんな反応をするのだろうか?
「まあ、昔からそんなに食べる方ではなかったですね。小学校の給食は学校で最後まで食べていました。」
「給食?」
「ああ、ジークはスイスだから知らないか。学校は給食といって決められたメニューを決められた量だけ配られてそれを食べるんだ。」
「へえ。」
「それを全部食べるまでは休憩なしで、食べきれない場合は教師に言うんだよね?」
「はい、私はほとんど担任に報告してました。」
「そうなんだ。」
「いつもは1食どれくらいの量を食べていますか?」
誠が説明した給食を知って感心しているジークをよそに静観していた美琴が尋ねた。
「えーと、夕食はバイトの後なんですが、梅とおかかのおにぎり2個とお味噌汁とメインって感じです。」
「なるほど。一般的な量ですね。」
「たぶん。」
彼女の評した”一般的”の量が具体的に分からないので、曖昧な返事しか返せなかった。
「本日はジーク様の半分ずつ召し上がるので同じぐらいの量で収まると思いますけど、辛かったら無理しないでください。」
「すみません、ありがとうございます。」
「あ、パンとご飯はどちらがいいですか?」
「え?ご飯も提供するの?ミーちゃん。」
私に尋ねてきていたのに、美琴の質問にジークが食らいついた。
「ええ、やはりご飯を好きな方がおられますから。」
「へえ、そうなんだ。何でもありになってきたね。」
「お客様の要望に応えるのは私の仕事ですからね。」
「そうだよ、ジーク。ここはお客様の疲れを癒し元気になっていただくお店なんだから。肩が凝るようなフレンチばかりではないんだよ。」
「そうでした。ハハッ。」
誠の言った内容のどこに笑いが起こったのか分からないが、ジークは少しだけツボったようだった。
まあ、私には分からないことなので、誠にもらった水をグビグビ飲んだ。
気づけばジークも話しながらも食べてはいたようで、前菜の皿はほとんど空になっていた。
「次はお待ちかねのメインだね。肉にする?」
「はい。肉がいいです。」
「魚はそんなに好きじゃないの?」
「いいえ、特には。ただ、魚の方が食べる機会が多いのでお肉がいいなと思って。」
「了解。」
さっきから私の意見ばかり取り上げられているけど、ジークは本当に本心からいいと思っているのだろうか?
会話をしながら不思議に思ってしまう。ここの代金は彼が払うことになっているんだから、意見が食い違えば彼の意見に全面的に首を縦に振っていただろう。いや、コース料理で予約しておけば、一も二もなく頷いていた。
それなのに、彼は先ほどから私が言ったメニューしか頼んでいない。これにはさすがに彼に悪すぎる。
「あの、私よりあなたが食べたい物を注文してください。ここの代金はあなたが払うんですし。私はただの付き添いですから。」
「いいんだよ。僕、この店、結構来ているし。それに、君の好きな物とか知りたいからね。」
「・・・そうですか。」
平然と言う彼の言葉に詰まってしまうし、それ以上、何も言えなくなってしまう。
小食だと言ったときも彼は意外そうな表情はしてもそれ以外には何もなかった。それに、今もただただ嬉しそうにこちらを見てくる。この視線を居心地悪く思いながらも片隅では嬉しいと思っている自分がいた。そんな自分が恥ずかしくなった。
メインの肉煮込みは時間がかかるらしく、その間待ち時間になった。
「郁美はバイト何しているの?」
「えっと、清掃員です。(もう行けないけど)」
心の内は決して話せないけど、それ自体は嘘じゃなかった。ただ、昨日までの自分のことだけど。
「休みは?学校は休みは週末かな。」
「そうですね。今、本来なら夏休みですけど授業単位が少なくて学校は休みじゃないんです。その代わり、夏休み課題がなくてラッキーです。」
「そうなんだ?何でそんなことになったの?」
「風邪で1か月学校閉鎖だったからです。」
「ああ、流行したって聞いたな。」
話に納得したのは手持ち無沙汰で横に立っているどころかいつの間にか椅子を持ってきて座っている誠だった。それには、ジークが睨みつけていた。
「誠、ウエイターなんだから仕事したら。」
「だって、貸切にしたお客が注文ないから暇なんだよ。」
「じゃあ、奥さん手伝ってきなよ。」
「えー、厨房入ると邪魔だった追い出されるから嫌だよ。僕は味見役、美琴はシェフで役割分担されているから夫婦仲が上手くいっているんだよ。」
「あ、そう。」
もう相手にするのが面倒くさくなったジークは誠を軽く流した。
「風邪か。郁美は大丈夫だった?」
「はい、私は何ともなかったです。だから、1か月はバイトをずっとシフト入れていました。」
「日本人はワーカホリックだね。そんなに働かなくても好きなことをすればいいのに。」
「私、それがないんですよね。掃除は好きですから今のバイト向いているんですよ。」
「そうなんだ。」
「郁美ちゃんって、ここの近くの都立の高校だよね?」
あまり深くは突っ込んでこないジークに安堵して話題が1段落したかと思えば、誠が入ってきて混乱した。
「まあ、そうですね。」
「今日も確か5時ぐらいまで授業だよね?もしかして、サボり?」
なんで、この人こんなに詳しいの!?
確かに、今日は金曜日で普通に学校で授業があるし、7コマ授業だから5時までは授業で正しい。たぶんだけど。もう学校行けないと思っているから時間割なんて覚えていなかった。
いや、それよりもこの話題を切り抜けられる自信がなく、2人の男性からすごく熱い視線を感じた。それで、冷房の効いた部屋なのに汗がダラダラと流れていた。
「いや、あの、まあ、そうですね。」
「漫画を探していたから?」
「ええ、まあ。」
「本当に?」
「ええ、まあ。」
「ふうん。郁美ちゃんって苗字なんて言うの?」
「え?何でですか?」
怖っ
誠からの質問には頭の中で最上級の警鐘が鳴り響いた。
今まですでに頭が混乱状態で彼の質問に適当に答えていたのに、最後の質問だけはその混乱は全て真っ白にされて、ただただ頭の中を爆音のサイレンだけが鳴り響いていた。
「俺、この辺りの出身なんだよ。母が近所付き合いは大事とか言って駅周辺の住宅を1件ずつ回ったりして、それから結構な家と付き合いができたんだ。でも、その中で郁美ちゃんみたいな目立つ子を見たことがなかった。それだけスタイルが良くて美人だとご近所で有名だと思うんだけど。。」
誠は不思議そうに首をひねっていた。
彼の言葉に唖然とした。そんな人がいたなんて聞いたこともなかった。
いや、聞いたことがなくても不思議じゃないな。うん。
「ああ、それはないかもしれません。私は引っ越してきたので、1年半ほど前に。」
「そうなんだ。母が配っていたのはもう8年も前だったな。そう言えば。じゃあ、俺が見たことないのも納得かも。」
「そうですね。」
よし、切り抜けた。
私は勝利を確信した。
「それで、郁美ちゃんの苗字は?」
「お待たせしました。」
勝利を確信したのに、まだ誠は諦めていなかったようでゲンナリしたところに、彼の奥さん、美琴が料理を運んできた。
メインはお肉で固まりがドドンと存在感があった。他に雑穀が混ぜられたようなパンが添えられていた。
「ワイン煮込みです。きちんとアルコールは飛ばしましたから大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
彼女はにっこり笑って付け加えた。未成年に料理だとしてもお酒は出しませんと言われているようで安心した。
誠だとジークとの仲が深そうだから一服盛るかもしれないからね。危険度でいえば美琴の方が低いだろう。
「さて、召し上がってください。」
彼女の声を合図に私は肉に手を伸ばした。
ジークは何か考えているように顎に手を当てていたが、私と目が合うとニッコリ笑っていた。
それが、本当の笑顔か作り物か私には判断できなかった。
ただ、1つ言えることはこれ以上誠と話すのは、私の立場を悪くすることだけだった。
恐るべし、ご近所さん!!
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