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番外編
変人が住まう場所、城でした・・・城って家ですか?
14時間のフライト終え、私は初めて異国の地に降り立った。
足元に浮遊感がありおぼつかない足取りになったが、乗り物酔いはなかったらしく安心した。
空港を歩いていると、やっぱり日本とは違う香りが漂っていて
あー、着いたんだ!
なんて感心してしまう。
何もかもが珍しくて観光気分で顔をキョロキョロさせていると、両隣からクスクスと笑われた。
「良いじゃないですか。外国なんて初めてなんですから。」
「いや、悪いとは言っていないよ。別にそれを笑っていないよ、ただ、可愛いと思っているだけだから。」
「それってバカにしてませんか?」
「いいや、違うよ。」
彼は話している間、気持ち悪いぐらいに上機嫌でニコニコだった。
「郁美さんの反応が初々しくて思わずといった感じですから、見逃してください。」
リオウは睨んでいる私にそう言い、ジークのフォローに回っていた。
2人してやっぱりちょっと子ども扱いされている気がして納得できなかったが、よく考えてみれば、私、17歳で未成年だった。この国の法律とか知らないけど。
「ここから電車じゃないんですか?タクシーで向かうんですか?」
電車とタクシーの表示を見ていると、彼らが向かっているのはタクシー乗り場だった。
「いいや、迎えが来ているはずだから車で向かうよ。ここから30分ほど車だから。」
「はあ、そうです・・・・ん?車?」
「そうだよ。車だけど、何をそんなに驚いているの?日本でも乗っていたのに。」
立ち止まっている私にジークは不思議そうにしていて、他3名も同じ反応だった。
これは、驚いている私がおかしいの!?いや、だって、車が迎えに、なんて聞いたら驚かない?
車ってことは当然運転手が必要だから、運転するのは彼の家族かと普通は思うが、ジークはお金持ち。
つまり、ここでいう車っていうことは専属運転手がいるってことだよ。
凡人の頭では理解が追い付かないから。
いつまでも動こうとしない私の背後に回ったジークは両肩を押した。
「ほら、いつまでも立ち止まっていないで行くよ。家族が君に会えるのを楽しみにしているからね。」
彼に押されながら出入口まで一気に進んだ。
心の準備をする時間をくれる選択肢は彼にはないのだろうな。
私はもう諦めた。
「お帰りなさいませ、ジーク様。それと、お会いできるのを楽しみにしておりました。ようこそ、郁美様。」
車の前にスタンバイをした背広を着こなした30代ぐらいの茶髪の男性は深々と頭を下げていた。
それには私は再度固まったが、その状態はさすがに失礼で慌てた。
「いえ、こちらこそ、これからお世話になります。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、何分急ごしらえの部分があり、ご不憫をおかけすることもありかと存じますが、よろしくお願いします。」
その男性は顔を上げて優しい言葉をかけてきた。
彼の瞳は灰色と青色が混ざったような瞳だった。
そこで、私は気づいた。
あれ?
「日本語!?」
驚きで思わず叫んでしまい、周囲を驚かせてしまった。
しかし、すぐにその男性は微笑み、他4人の男性は笑みを浮かべていた。
「彼は執事のポール。彼の他に一応拙くはあるけれど家に仕えてくれている人達はみんな日本語が話せるよ。彼が最も上手な日本語を話すけれど。」
「そうなんですか。日本語を。そうですか。」
なんとなく二回も納得した時に使う相槌を使ってしまった。
「いつまでも立ち話をしては体を悪くされますから、どうぞお乗りください。」
彼に背後のリムジンの後部座席ドアを開けられて促されるままにジークたちとともにその車に乗り込んだ。
車は静かに走り出した。
「雪があるんですね。」
道を走っていると雪がすでにうっすらと道の上に膜のように張っていた。
「そうだね。もう、冬だから。君が住んでいたところはほとんど雪が降らない地域だから新鮮かな?」
「そうですね。冬のスポーツも欠席していましたから、雪を見るのは久しぶりかもしれません。」
「そっか。ここは気候も低いし雪も多く降るからスポーツもできるよ。楽しみにしておいて。」
「いえ、別にスポーツがしたいというわけではないのですが。」
「良いじゃない。何でも経験が必要だよ。」
彼に押し切れる形で、雪のスポーツをすることになった。
なんでも道具は彼の家に揃っているし、スポーツをする場所もあるらしい。
想像しただけで怖い。
「そうだ。郁美は厚着のコートを持っていなかったよね?」
「え?確かにコートは持っていませんけど、静江さんに買っていただいた裏起毛のジャンバーがあるので、十分だと思っていますよ。」
「ここは日本よりずっと寒いんだから、それだけだと風邪を引くよ。親に挨拶をしたら買い物だね。冬用の物が圧倒的に足りないから。あと、ここは朝晩と昼で温度の高低差が激しいから羽織りのものも追加しよう。」
「いや、さすがにそんなには要らないです。」
「ここは長年住んでいる住民の意見を聞いておいてよ。」
「まあ、私で買える程度の品物なら考えておきます。」
彼の言葉にも一理あるので、私が妥協できるギリギリラインを提示すると彼は酷く驚いたようだった。
「え?君が出すの?ここは僕が払うよ。だって、君をここに連れてきたのは僕だし、今提案しているのもそうだからね。言いだしっぺが払うのは常識だと思うけど。」
「私はそれが嫌なので、できれば私に払わせてください。」
「む、手ごわいな。少しは買わせてくれてもいいと思うんだけど。」
「あなたが今まで付き合った女性はそうかもしれませんが、私は何でもかんでも男性に出してもらうのは気が引ける性分なんですよ。」
私の発言に彼は固まり、その奥ではリオウが苦笑していた。
「ッじゃあ、こうしよう。先行投資ということで、君が僕のところで今後も働くからそれで少しずつ返してくれたらいいよ。」
「そんなに高いお店で買おうとしているんですか?」
一体いくらの物を買おうとしているのか。
私は頭が痛くなった。
ただ、寒さで風邪を引いて迷惑をかけるのは避けたい。
黙って視線を逸らす怪しい彼を見た。
「分かりました。できるだけ早く返せるようなお店で選ばせてください。色々とアドバイスをお願いします。」
「もちろん。任せて。」
彼はグッと指を立てた。
「あ、もう見えてきた。ほら、あれが、今日から郁美も一緒に暮らす家だよ。」
窓を覗いたジークが私にも見せようと抱きしめてきて、窓から指を指して説明した。
その方向にある家を見ると、私は目をむいた。
城!?え?なんで城?一体どれくらいの敷地でどれだけの部屋があるの!?
どんだけ家族がいるの??
私の頭は疑問だらけだ。
本当に家というより、よく映画などに出てくる城に似ており、圧巻の存在だった。
白い壁に屋根は灰色で雪が少しだけその屋根の色をぼかしていた。
幻想的な光景があり、写真を見ている気分にさせられた。しかし、これは現実。
「城に住んでいるんですか?」
「城?確かに、あそこは昔王族が別邸として使っていたらしくて200年ぐらい前に建てられたらしいけど、家だよ。」
「絶対に違う!!」
この時、彼の”家”発言に即座に突っ込んでしまったのは悪くない。
家と城は別物だと思う。
容姿も環境も王子なの?・・・・中身は変人だけど。
異名でプリンスってついていたけど、あれは容姿だけでなくこういうところなのだろうか?
なんだか、先を考えると怖くなってきた。
足元に浮遊感がありおぼつかない足取りになったが、乗り物酔いはなかったらしく安心した。
空港を歩いていると、やっぱり日本とは違う香りが漂っていて
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なんて感心してしまう。
何もかもが珍しくて観光気分で顔をキョロキョロさせていると、両隣からクスクスと笑われた。
「良いじゃないですか。外国なんて初めてなんですから。」
「いや、悪いとは言っていないよ。別にそれを笑っていないよ、ただ、可愛いと思っているだけだから。」
「それってバカにしてませんか?」
「いいや、違うよ。」
彼は話している間、気持ち悪いぐらいに上機嫌でニコニコだった。
「郁美さんの反応が初々しくて思わずといった感じですから、見逃してください。」
リオウは睨んでいる私にそう言い、ジークのフォローに回っていた。
2人してやっぱりちょっと子ども扱いされている気がして納得できなかったが、よく考えてみれば、私、17歳で未成年だった。この国の法律とか知らないけど。
「ここから電車じゃないんですか?タクシーで向かうんですか?」
電車とタクシーの表示を見ていると、彼らが向かっているのはタクシー乗り場だった。
「いいや、迎えが来ているはずだから車で向かうよ。ここから30分ほど車だから。」
「はあ、そうです・・・・ん?車?」
「そうだよ。車だけど、何をそんなに驚いているの?日本でも乗っていたのに。」
立ち止まっている私にジークは不思議そうにしていて、他3名も同じ反応だった。
これは、驚いている私がおかしいの!?いや、だって、車が迎えに、なんて聞いたら驚かない?
車ってことは当然運転手が必要だから、運転するのは彼の家族かと普通は思うが、ジークはお金持ち。
つまり、ここでいう車っていうことは専属運転手がいるってことだよ。
凡人の頭では理解が追い付かないから。
いつまでも動こうとしない私の背後に回ったジークは両肩を押した。
「ほら、いつまでも立ち止まっていないで行くよ。家族が君に会えるのを楽しみにしているからね。」
彼に押されながら出入口まで一気に進んだ。
心の準備をする時間をくれる選択肢は彼にはないのだろうな。
私はもう諦めた。
「お帰りなさいませ、ジーク様。それと、お会いできるのを楽しみにしておりました。ようこそ、郁美様。」
車の前にスタンバイをした背広を着こなした30代ぐらいの茶髪の男性は深々と頭を下げていた。
それには私は再度固まったが、その状態はさすがに失礼で慌てた。
「いえ、こちらこそ、これからお世話になります。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、何分急ごしらえの部分があり、ご不憫をおかけすることもありかと存じますが、よろしくお願いします。」
その男性は顔を上げて優しい言葉をかけてきた。
彼の瞳は灰色と青色が混ざったような瞳だった。
そこで、私は気づいた。
あれ?
「日本語!?」
驚きで思わず叫んでしまい、周囲を驚かせてしまった。
しかし、すぐにその男性は微笑み、他4人の男性は笑みを浮かべていた。
「彼は執事のポール。彼の他に一応拙くはあるけれど家に仕えてくれている人達はみんな日本語が話せるよ。彼が最も上手な日本語を話すけれど。」
「そうなんですか。日本語を。そうですか。」
なんとなく二回も納得した時に使う相槌を使ってしまった。
「いつまでも立ち話をしては体を悪くされますから、どうぞお乗りください。」
彼に背後のリムジンの後部座席ドアを開けられて促されるままにジークたちとともにその車に乗り込んだ。
車は静かに走り出した。
「雪があるんですね。」
道を走っていると雪がすでにうっすらと道の上に膜のように張っていた。
「そうだね。もう、冬だから。君が住んでいたところはほとんど雪が降らない地域だから新鮮かな?」
「そうですね。冬のスポーツも欠席していましたから、雪を見るのは久しぶりかもしれません。」
「そっか。ここは気候も低いし雪も多く降るからスポーツもできるよ。楽しみにしておいて。」
「いえ、別にスポーツがしたいというわけではないのですが。」
「良いじゃない。何でも経験が必要だよ。」
彼に押し切れる形で、雪のスポーツをすることになった。
なんでも道具は彼の家に揃っているし、スポーツをする場所もあるらしい。
想像しただけで怖い。
「そうだ。郁美は厚着のコートを持っていなかったよね?」
「え?確かにコートは持っていませんけど、静江さんに買っていただいた裏起毛のジャンバーがあるので、十分だと思っていますよ。」
「ここは日本よりずっと寒いんだから、それだけだと風邪を引くよ。親に挨拶をしたら買い物だね。冬用の物が圧倒的に足りないから。あと、ここは朝晩と昼で温度の高低差が激しいから羽織りのものも追加しよう。」
「いや、さすがにそんなには要らないです。」
「ここは長年住んでいる住民の意見を聞いておいてよ。」
「まあ、私で買える程度の品物なら考えておきます。」
彼の言葉にも一理あるので、私が妥協できるギリギリラインを提示すると彼は酷く驚いたようだった。
「え?君が出すの?ここは僕が払うよ。だって、君をここに連れてきたのは僕だし、今提案しているのもそうだからね。言いだしっぺが払うのは常識だと思うけど。」
「私はそれが嫌なので、できれば私に払わせてください。」
「む、手ごわいな。少しは買わせてくれてもいいと思うんだけど。」
「あなたが今まで付き合った女性はそうかもしれませんが、私は何でもかんでも男性に出してもらうのは気が引ける性分なんですよ。」
私の発言に彼は固まり、その奥ではリオウが苦笑していた。
「ッじゃあ、こうしよう。先行投資ということで、君が僕のところで今後も働くからそれで少しずつ返してくれたらいいよ。」
「そんなに高いお店で買おうとしているんですか?」
一体いくらの物を買おうとしているのか。
私は頭が痛くなった。
ただ、寒さで風邪を引いて迷惑をかけるのは避けたい。
黙って視線を逸らす怪しい彼を見た。
「分かりました。できるだけ早く返せるようなお店で選ばせてください。色々とアドバイスをお願いします。」
「もちろん。任せて。」
彼はグッと指を立てた。
「あ、もう見えてきた。ほら、あれが、今日から郁美も一緒に暮らす家だよ。」
窓を覗いたジークが私にも見せようと抱きしめてきて、窓から指を指して説明した。
その方向にある家を見ると、私は目をむいた。
城!?え?なんで城?一体どれくらいの敷地でどれだけの部屋があるの!?
どんだけ家族がいるの??
私の頭は疑問だらけだ。
本当に家というより、よく映画などに出てくる城に似ており、圧巻の存在だった。
白い壁に屋根は灰色で雪が少しだけその屋根の色をぼかしていた。
幻想的な光景があり、写真を見ている気分にさせられた。しかし、これは現実。
「城に住んでいるんですか?」
「城?確かに、あそこは昔王族が別邸として使っていたらしくて200年ぐらい前に建てられたらしいけど、家だよ。」
「絶対に違う!!」
この時、彼の”家”発言に即座に突っ込んでしまったのは悪くない。
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