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epilogue

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 休日の昼下がり。柔らかな陽の光が降り注ぐ。

「今度、美久が遊びに来てくれるって」
「それは嬉しいな。僕も会いたい」

まだまだたどたどしい歩き方の光樹の手を、私と和樹さんとで両脇から手を繋いで、よちよちと公園へ向かっていた。

「そろそろ若林さんを安心させないとな」
「うん」

美久に連絡できずにいた時期があった。生活が落ち着いた頃にこちらから連絡した時には、こっぴどく怒られて。そして泣きながら喜んでくれた。いつも私を支え励ましてくれる存在だ。

「いつも助けてもらっていたから。今度は私も美久の助けになれるといいな」
「寄り添う気持ちがあれば支えになれるさ。柚季ならできる」

ふわりと包容力に満ちた笑をくれた。

「光樹もそう思うよな? ママはとっても優しいもんな」
「ぱーぱ!」

光樹に視線を合わせるように身を屈めると、光樹が突然叫んだ。

「今、パパって言わなかった?」
「そうですか?」
「絶対、そうだよ!」

和樹さんが興奮する。

「パパって、言った? そうだよ、『パパ』だよ」

大きく口を開いて発音してみせていた。

「ぱーぱ」
「そうだ。えらいぞ。光樹はえらい」
「ぱ、ぱ、ぱ、ぱ」

どれだけ嬉しいのか、和樹さんが光樹を抱き上げて頬ずりしている。

 休みの日には三人で公園に出掛けて、こうして笑い合う。そんな日常が、どれだけ特別で幸せなことか。これから先も忘れないでいたい。

「――柚季」

光樹を抱っこした和樹さんが私を呼ぶ。

「凄く幸せだよ。柚季のおかげだ」
「私も、和樹さんに出会えてよかった」 

ダメな自分も弱い自分も嫌と言うほどに知った。誰かを傷つけ、傷ついて。苦しいことも、辛いことも、たくさん経験した。
 それでも私は、和樹さんに出会えて良かったと心から思える。

 大学生の時、初めて恋に落ちた瞬間を今でも鮮明に思い出せる。私は和樹さんに恋をした。ずっと変わらず好きだった。

「私、すごく幸せです!」

思いっきり笑う私を見て、和樹さんがたまらなく嬉しそうに目を細めた。




【完】
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