頬に落ちる、透明な君

いちごみるく

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ポトッ……

「つめてっ!!!!」

体感20分くらい。

無意識のうちに寝ていた俺は、突然顔にかかった謎の冷たい液体のような感触で目を覚した。

「……なんだよこれ…雨も降ってねえのに」

頬を濡らす雫を指で恐る恐るふき取ってみる。

それは透明な、無臭の液体だった。


「……」

わけが分からずあたりを見回してみる。

遠くから聞こえる騒がしい声。

きっと昼休みが終わり、皆5時間目の授業に向けて移動でもしているのだろう。

俺もそろそろ重い腰を上げて教室に戻らなければいけないか…

結局昼休みを丸々昼寝に使ったせいで、一口も食べなかった弁当を持って立ち上がった。

弁当を包むハンカチには、保冷剤が溶けてできた水滴が汗のように滲んでいる。

俺も暑い中で寝てしまったことを後悔するくらい、目元にまでじんわりと汗をかいていた。


(あー…なんか、誰かいるな。こんな暑いところで何してんだ?)

寝ぼけ眼で汗に濡れた目をこすりながら、俺はぼんやりと見える制服姿の生徒をうっすらと目で捉えていた。

(なんか……こっちに来てないか?)

きっと中庭を突っ切って移動でもしようとしているのだろう。

俺は特に気にも止めずに、しつこいくらい流れてくる汗と眠気を必死に抑えるべく目をこすりまくっていた。


「ねえ。」


向こう側から歩いてきた制服姿の女子生徒とすれ違おうとした時、汗まみれな俺の耳を一瞬で冷やすかのような凛とした声で、俺は間違いなくそう呼び止められた。


「…はい」

「あなた、いつもここにいるの?」

「…はい?」

「お昼休み。毎日ここに一人でいるの?」

「…はい」


これは、俺がコミュ障なせいじゃない。

イントネーションの違う「はい」しか言えないのは、彼女の……


目の前にいる彼女の目が、あまりにも美しく俺を貫いたからだった……。

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