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haya

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マジックバッグ

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 パーティーで冒険をして6日が過ぎた。
 今週の【悪魔の借入】での借金返済分は確保したので、今日は休みにした。
 うちはブラック企業ではないから休める時にしっかり休みを取る方針だ。そんな訳で三人でゆっくり朝食を取っているところだ。


「やふぁり、まふぃっくびゃっきゅがふぃちゅにょうなにょ。」

「え? 何だって?」


 リスのように食べ物を口に詰め込んだキナが話すが何て言ったか分からなかった。


「こらキナ! 食べながら話すなんて行儀が悪いですよ!」


 リエルに怒られ口の中身をいそいで片づける。


「やはりマジックバッグが必要なの。いちいち帰るのは面倒だよー。」

「そうですねぇ。確かにマジックバッグは異空間に収容できるから便利な魔道具ですよね。」


「やっぱそうだよなぁ・・・」


 二人が言ったように、俺達はある問題を抱えていた。狩り自体は順調なのだが、すぐに荷物がいっぱいになり王都までに引き返す事になる。再びクロナの森へと向かいたいところだが、行って帰って来るには夜になってしまい危険になるから諦めていた。
 この稼ぎ損を減らし、現地で滞在時間が延ばせるようにマジックバッグが必要という話が出たのだ。
 まぁ、荷物を持っていると急な戦闘も危険になる理由もあった。

「ただ非常に高価な代物で有名ですが・・・」

「よし! 今日は休みだし。街で探してみるか! 道具屋に行けばあるかな? 買うかは別として値段を確認しておきたいしな。」

「そうですね。この王都なら売ってると思いますよ。」


 とりあえず今日の行動が決まった俺達は朝飯を片づけて街に向かう事になった。


※※※※※


「マジックバッグ? それならあるよ。」

「ホントですか!? 見せてもらいたいんですけど。」


 道具屋に向かい、店主に聞くと目当ての物があった。


「一応、入れられるサイズによって値段が変わるんだけど、どういう物がいいんだい?」

「一番安いのでどれくらい入るんですか?」

「そうだなぁ~。大体3m四方の部屋くらいの大きさかな?」


 3m四方も入るならフォレストウルフが2、30匹は入るくらいの大きさだから、今の俺達には十分な代物だろう。


「分かりました。ちなみにおいくらですか?」

「これは金貨400枚だね。」

「400!? たかっ!!」


 値段の高さにビックリする。値段にすると400万ゴルだ。


「そりゃマジックバッグは運搬に優れ、数が少なく、欲しい人が多いからね。これでも他より安いくらいさ。」

「ご主人様、マジックバッグは諦めて地道に運搬して稼ぎましょうか・・・」

「うーむ・・・」
   

 あまりの値段で普通ならとても買えないが【悪魔の借入】を使えば恐らく買えるだろう。
 しかし、借金がある身で更に借金をするのは抵抗感がある。一時的に借金は増えるが、稼ぎも増えそうだから長い目で見れば買った方が良いかもなぁ。


「スマン、二人とも少しここで待っててくれ。」


 そう二人に言い残し、俺は道具屋の隣にある脇道に入る。【悪魔の借入】を使う為、人に見られないようにするからだ。


「この辺で良いかな? ここなら誰にも見られないだろう。」

「誰に見られないッテ?」


 頭上から声がしたので上に顔を向けるとタレ目の悪魔・・・ではなく精霊のデビちゃんがいた。


「え!? デビちゃん!? まだ【悪魔の借入】を使ってないのに・・・」

「オレは魔法を使わなくても出て来れるんダゼ。 まぁ、出て来ている間はオマエのMPは消費されてるけどナ。」


 デビちゃんはギャハハと笑いながら話す。勝手に出てきてMPが減るのは腹が立つところだが、愛らしい姿をしているから何となく憎めない。


「まぁいいや。デビちゃんに頼みたい事があるから丁度良いや。」

「追加の融資は受け付けないゼ?」

「え!? 何で? そもそも何で分かったの?」

「そりゃ見ていたからナ。 まだ借金も全額返せてないのに新しく借金作るなんて・・・返せなくなったら本当に死ヌゼ? ちなみに今まで【悪魔の借入】で死んだ恋金術師はいないカラナ。」


 そうだったのか。危うくもし返せなくなったら史上初の自滅する恋金術師になるところだった。


「やっぱり返せないと本当に死ぬの?」

「あぁ、間違いなく死ヌ。そういう『契約』だカラナ。知らないだろうから言うガ、【悪魔の借入】は恋金魔法ではあるガ、『本質は恋金魔法でもアリ、精霊魔法でもアリ、契約魔法でもあるんダゼ。』」


 リエルの精霊魔法のシルフみたいにデビちゃんを喚べるから精霊魔法って事か。


「契約魔法ってのは何なの?」

「契約魔法は特殊な魔法ダ。お互いの同意が必要で効果は魂や体に刻まれル。オマエの奴隷がいるダロ? アレも契約魔法を使ったんだろうナ。例えば命が助かる代わりに奴隷になるみたいな契約をしたんダロ。オマエの場合はお金を返せないと魔法が発動して魂が死ヌ。そして魂が死ヌから肉体も死ヌゼ。」

「そうだったのか・・・」

「そんな訳でバカな事は考えずに地道に返済するんダナ。」

「はぁ、分かったよ。大人しくマジックバッグは諦めるか・・・」


 効率は悪いけど森との往復をして稼ぐしかないだろう。


「他にも稼ぐ方法が無い訳でも無いケドナ。」

「え!? ほんと!? 教えてデビちゃん!!」


 俺はデビちゃんを両手でがっちり掴み、詰め寄る。


「チョ、教えるから離しヤガレ!!」

「あ、ごめん!!」


 俺は慌ててデビちゃんから両手を離す。


「マッタク・・・  いいか? ここより北に半日行った所に大きな街がアル。そこなら今のオマエ達みたいな冒険者は稼ぎやすいと思うゼ。」

「街? 街で何か仕事でもあるの?」

「ダンジョンがあるのサ。」

「ダンジョン!?」

「ダンジョンの中は魔素の塊みたいな物サ。魔物がウジャウジャ沸いてクル。しかも倒した魔物の死体はダンジョンに吸収されて残るのは魔石ダケダ。もちろん人間も死んだら吸収されちまうガナ。魔石だけ集めれば大した荷物にはならないダロ?」

「そうだね。それならマジックバッグも買わなくて済みそうだ。」


 ダンジョンかぁ。そういえば国王がこの国は魔石を沢山取れるって言ってたっけ。行ってみる価値はありそうだな。


「それにダンジョンにはスキルオーブや死んだ人間の持ち物が宝箱に入って出てクル。うまくいけば大金も夢ジャナイゼ。」

「おー! なおさら行くっきゃないね! でも何で街にダンジョンがあるの? モンスターはダンジョンから出てこないの?」

「そりゃ出てクルサ。昔からモンスターが大量に生まれてダンジョンから出てくるなんてよくある話サ。」


 やはりそうなのか。いつ魔物が溢れてくるかなんて分からない場所に俺なら怖くてとても住めないなぁ。


「ダンジョンは金を生ム。だからダンジョンの近くは栄えるのサ。だがモンスターが溢れたら危険ダロ? 街の人間が犠牲になっている間に王都が防衛体制を整える事ができるからナ。」

「それは酷い話だなぁ。」

「ホラ、オマエの国ではこう言うんダロ? 『人は石垣』ダッテ。文字通り人の壁ダナ。」

「本来の意味は違うけどね・・・」


 人は城、人は石垣、人は掘り、情は味方、仇は敵という武田信玄の言葉だ。本来はどんな強固な城でも人の心が離れてしまえば世の中を収める事ができないみたいな意味だ。


「意味は違うけどデビちゃん良くこの言葉を知っていたね?」

「マァナ。昔、あるヤツが色々話してくれたカラナ・・・」


 デビちゃんは一瞬だけ少し寂しそうな顔をしてそう言った。 そして、すぐにいつもの顔に戻して俺に告げる。


「マァ、オマエが行き詰まりを感じているナラ、ダンジョンに行くべきダナ。」

「そっか分かったよ! ダンジョンに目指してみるよ。」


 せっかく異世界に来たならダンジョンにも行ってみたいし、俺は次の目的地をダンジョンに決めたのだった。
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