Another world currency

haya

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旅立ち

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 今日はいよいよ王都を出発する日だ。
 昨日は結局二人とも泣き疲れて眠ってしまったから、少しでも元気になってくれれば良いなと思いながら二人の部屋をノックする。


「おーい俺だ。二人とも起きてるか?」


 ノックして呼ぶとすぐに扉が開かれる。


「ご主人、おはよう。二人とも起きてるよ。」

「ご主人様、おはようございます。 昨日はすみませんでした。」


 二人の目元は分かるくらい赤く腫れていて、何度も擦っていたのが手に取るように分かる。


「あー。今日は出発する予定だったが、もう1日休むか? 別に急ぎではないし構わないぞ?」

「大丈夫! いつまでもウジウジしてたら皆に笑われちゃうよ!」

「そうですね。忌み子の私にも優しく接してくれたおじさん夫婦の気遣いを無下にする訳にもいきませんしね。」


 リエルも気丈に言うが気になる言葉が出てきた。


「ん? 忌み子?」


 俺は思わず聞き返したが、返って来たのは別の言葉だった。


「さ、朝ご飯が出来ているでしょうから早く行きましょうか。」


 触れられたくなかったのだろうかリエルはどんどん下の食堂に向けて歩いて行った。
 誰にでも触れられたくない事の一つや二つはあるしなと思い、俺も後に続いた。



 朝食を食べ終え、王都に来てから世話になった宿屋のナイラさん一家に挨拶をし、冒険者ギルドに向かった。


「それじゃあ、ポドにフランさん二人とも本当に世話になったね。」


 お礼を言い、ポドにはちょっと良いお酒をフランさんには王都で有名な焼き菓子をプレゼントした。


「おう、まさか薬草とウサギしか取って来なかったヤツがダンジョンに挑むとはな。くれぐれも気を付けていけよ? 余力のある内に引き返すようにしないと酷い目にあうぞ。後、嬢ちゃん達を大事にな。」

「あぁ、分かったよ。ポドも飲み過ぎには気を付けろよ。」


ポドはハイハイと言いながら小さく笑う。


「ユウジさん、寂しくなりますが体には気を付けてください。冒険者は体あっての職業ですからね。」

「はい、フランさんも元気で。」


「それとコレを。」


 フランさんはそう言い、俺に一通の手紙を渡す。


「これは?」

「街に着いたらまず冒険者ギルドへ向かってください。そこに私の姉のマールがいますので、その手紙を渡してください。色々と良くしてやって欲しいと書いておきました。」

「それはありがとうございます。」


 その後、ポドとフランさんに見送られ相乗り馬車の停留所へ向かう。ダンジョンのある街への定期便が出るからだ。
 少し待つと俺達と数名の客を乗せて馬車は動き出した。

 屋根も無い、まるで荷台のような馬車に揺られながら俺は後ろを振り返りどんどん小さくなる王都を見る。


「(この世界に来て、あそこで色々あったなぁ・・・)」


 俺はこの世界に来て、今日までの出来事を振り返る。


「(そう言えば一緒に召喚された高校生達はどうしてるかな? いや、彼らが望んで残ったんだし気にする事はないか。自分の事で精一杯だしね。)」


 そう思い、俺は荷物を枕代わりにして眠りについた。




※※※※※

 ダンジョン地下15階、王国の兵士に付き添われながら召喚された高校生達はいた。


「おらぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっとカズヤ! 一人で突っ込まないでよ! 回復する方の見にもなってよね!」


 そう聖女として回復役をするユリに窘められたが、拳聖で肉弾戦を得意とするカズヤは聞く耳を持たずコボルトの群れに突撃する。

 コボルトは犬の獣人みたいに一部分が犬ではなく、犬そのものが大きくなり二足歩行する亜人だ。
 身長はゴブリンと同じく1mくらいだが、ゴブリンよりかは体格が大きく、力も強ければ足も速い。群れでいるのが多く、低級冒険者では手こずり逃げる事にもなる時があるが、持ち前の嗅覚で逃げ切れず命を落とす者も出る。


「へっ、こんな雑魚共なんか俺の敵じゃねぇよ!」

 
 カズヤは得意の肉弾戦でコボルト達を次々と倒していく。しかし肉弾戦である以上、一度に倒せる数に限界がある為に群れの数は減っていかなかった。


「カズヤどけ!! 【雷光剣】《サンダーブレード!!」


 そう叫ばれた後、カズヤはジャンプするとカズヤのいた場所を巨大な弧状の稲妻が通過する。稲妻はコボルトの集団に当たりコボルト達に雷撃を浴びせていく。


「テツ! 危ねぇじゃねぇか!」

「ちゃんと言ってから撃っただろ? それよりも一気に片づけるぞ。」


 カズヤはチッと小さく舌打ちしながら突撃を再開した。

 程なくして大量にいたコボルト達は全て魔石へと変わり床へと散らばる。


「おい高司、ちゃんと魔石を拾っておけよ。」

「う、うん。分かったよ。」


  錬金術師でもあり、【アイテムボックス】のスキルを持つ高司は戦闘ではほとんど参加せず、今みたいにドロップ品の収集や他のメンバーの荷物持ちに徹する事が多い。


「ねぇねぇ~。そろそろ地上に戻ろうよぉ~。もう3日もお風呂に入ってないんだよ? もう限界~。」


ユリから苦情が出てきたのでリーダーであるテツマはため息まじりで答える。


「分かった。 今回はこの辺で切り上げて上に戻るか。」

「やた! ねぇねぇ~。宿に着いたらテツマの部屋に遊び行ってもいい~?」


 テツマは前髪を手で救い上げながら、しょうがねぇなと呟く。


「ケッ、やってらんねーぜ。」

「なぁにぃカズヤ。もしかして妬いてんの??」

「ちげーよバカ! 誰がお前なんかに妬くんだよ! 俺は外に出たらお前より可愛い子がお酌してくれる店で飲むからいーんだよ!」

「あっそう! アンタなんか酔い潰れちゃえばいいんだわ!」


 ベーっとユリはカズヤに舌を出す。その三人の背中を見ながら高司はトボトボと付いて行く。


「(僕だけが仲間外れか・・・まぁ、それは向こうの世界でも同じか。)」


 高司は世界が変わっても自分の立場は変わらないなぁと思った。


「( そういえば・・・ 一緒に来たお兄さん。今頃どうしてるだろ? この知らない世界に放り出されてるんだから、もしかしたら僕よりも酷い目にあってるのかも・・・)」


 出来たらもう一度会って、召喚されたあの日に公園で助けようとしてくれたお礼がしたいと高司は考えながら歩き始めた。
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