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haya

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計画

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 酒場の灯りも消え街に完全な静寂に包まれる深夜に俺は部屋の備え付けであったテーブルに座り、買ってきてもらった地図と羊皮紙を拡げペンを走らせる。


「う~ん・・・ごふゅじんしゃま~。」

「もう食べられないよ~。」


 部屋のベッドからは二人の寝言が聞こえてくる。まったく、何の夢を見てる事やら。


「ははは。 さてと、もうひと踏ん張りしますかね。」


 気合いを入れ直し羊皮紙に書き込みを再開する。


「ヨォ。 面白い事をやってルナ。 ドレドレ? フーン・・・ナルホドネェ~。」


 デビちゃんは地図と羊皮紙に書いた物を見ている。


「え? デビちゃん、コレ分かるの・・・?」

「マァナ。 これより手の込んだ計画じゃナイガ、300年前の恋金術師が似たような事をしたカラナ。」


 デビちゃんは昔の事をまた少し寂しそうな顔をして話した。

 昔の恋金術師が俺がやろうとしている事をやっていたのは驚きだが、本当に驚いたのはそこじゃない。俺が書いている計画書は王国の人に見つかるとマズイので『日本語』で書いたのだ。デビちゃんはそれが読めた事になる。


「それで300年前の時はどうだったの?」


 日本語の事は後にして今は当時はどうだったかが知りたかった。参考になる事もあるかもしれないし。


「結論から言うと失敗シタサ。その時の恋金術師は白狼族ダッタ。王国と戦争をしていた時その作戦を実行シタガ、獣人だったから人族の支配地域では目立ってしまうからあまり行動デキナカッタ。」


 当時も戦争があったのか。それに白狼族って事はキナと同じ種族か。


「それにコノ作戦は遅効性の毒を素早く撒き続ける様な作戦ダロ? いくら身体能力の高い獣人でも効果が出るには遅スギタンダ・・・ 」

「あっ! そうか! 速さの事を忘れてた! しまったな・・・獣人の身体能力でダメなら俺じゃなおさらダメじゃないか!」


 早くもこれからやる計画の肝が崩れていくような感じがしてきた。


「諦めるのは早イゼ。 どうせ帝国もコノ話には乗ルダロ? ヤツラの『足』を使えば良イノサ。」

「足・・・? あっ! 帝国にはアレがある!」


 そういえば俺が王都の宿で働いてた時に行商人が話していたっけ。急に光明が見えてきた。


「なぁデビちゃん・・・ その恋金術師はどうなったんだ?」

「死ンダサ・・・  コノ作戦の失敗が直接の原因じゃ無イガナ・・・」

「そう・・・」


 きっとデビちゃんは悲しい顔をしながら話しているんだろうな。
 いつも笑っているような顔をしているが、昔の話をするときは決まって悲しい顔をする。
 俺はそれを見たくなくて机の上の羊皮紙に視線を落とし、先程のアドバイスを書き込む。

 デビちゃんから声がしなくなったのでふとデビちゃんの方に顔を向けるとデビちゃんの視線は寝ている二人の方に向いていた。


「マダ・・ジョウ・・カ・・」


 デビちゃんが何か言っていたが声が小さくて良く聞き取れなかった。


「デビちゃん?」

「ン? アァ~悪イ。それじゃあオイラは帰ルナ。」

「うん。多分デビちゃんに力を借りる事になるから、その時は宜しくね。」

「分カッテル。折角ローンが終わるのに難儀なヤツダナ。」

 
 そう言ってデビちゃんは虚空へと消えていった。
 昔の人と同じような事をするからきっと心配で来てくれたのだろう。


「ありがとうデビちゃん・・・」


 デビちゃんが消えた場所に向かってお礼を述べた。



 朝になり二人がモゾモゾと動きだす。そろそろ起きるのだろう。


「おはようございます・・・って! ご主人様、寝てないのですか!?」

「目の下におっきなクマだー!」

「おはよう二人とも。あぁ、今日は移動するから馬車で寝るから大丈夫。」


 さすがに30も過ぎれば完徹はキツイ。早めに夢の世界へ旅立ってしまいたい。


「え? ダンジョンでは無くて違う所に行くんですか?」

「あぁそうだ。俺はこれから起こる王国と帝国の戦争に参加する。勝手に戦争の為に召喚した王国に一泡吹かせたいからな。二人はどうする? 無理に付いて来いとは言わない。二人が望むならここで解放するぞ?」


 まったく危険が無い訳ではないし、お金のメドも立つ予定だ。二人が望むなら奴隷解放しても構わなかった。 


「行きます! 私にはもう帰る場所がありませんから!」

「そうそう。王国のせいで村が無くなった・・・だからやられっぱなしは嫌なの!」


 二人の目からは強い意思を感じる。意地でも付いてくるのだろう。


「分かった。もう時間が無い。すぐに出発するから準備してくれ!」

「はい! じゃあ次の目的地は帝国ですね!」

「いいや。次に行くのは・・・」


 リエルの問いに俺はすぐに否定する。そして机の上で拡げられたままの地図の一部分に人差し指を下ろす。


「商業国家ルブルリント共和国だ!」
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