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ヒーローとの出会い

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死のう。

頭の中で絶えず創造と瓦解を繰り返した結論はいつもと変わらない。オレは誰の役にも立たないゴミ人間。そんな人間は世界から消えてしまった方が世のため人のためになるんだ。
……いや、訂正しよう。人のためになんてならない。オレが生きようが死のうが他人にとってはどうでもいいことだ。オレが死んで感謝感激する人間もいない。根本から、みんなオレに興味なんてないんだから。

雨の音が世界を覆う。極小で単調で単純なオレの世界だ。
狭まった視野に橋の下で荒れ狂う水面は広大で、オレの目には、脳にはもはやそれ以外映らない。
革靴が水を蹴り、雨が傘に弾かれて踊り、雨を嫌う人々はオレをまるで雨の一部かのように素通りしていく。傘をささないオレは異様に映るだろうか。
誰も興味ないか。

雨に濡れた石橋に手をつくとキモいぬめりが手のひら全体にひったりと馴染んだ。ああ、一歩踏み出したならオレは落ちて、溺れて、この世界から弾かれる。それを寂しいと思うか? 答えは、わからない。幾度となく考えた。
冷たい世界から爪弾きにされることを悲しいと思うか。それは、自分に対して興味を持っていない人間の視界から自分という存在が消えることに対して感傷を抱くかという質問と同義ではないだろうか。オレが相手を眺める立場なら、どうでもいいと答えるだろう。そんなもんだ。だって、興味ないし、どうだっていいし。

ならば、ここから落ちたその瞬間、オレという存在を誰かの胸に刻み付けられるか?
答えはノーだ。人が落ちた。ただそれだけの事実。オレの背中を見た誰もが、オレという人間。有宮ハイネという人間を認識することはない。

孤独だよ、死ぬ瞬間さえも。
けど、よかった。やっぱり正解だったんだ。
あの人に、もう話せないと伝えたことは。

さようなら、マイヒーロー。
きみとの出会いはオレの人生の中で唯一の栄光として今も輝いているよ。
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