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第3章 食の国、大和の魔王

第42話 港町、ガルキュイの依頼

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あれから夜が明け、タクマ達は次の旅路を決めようと、ギルドの飯屋で朝食を食べながら、メンバー会議をしていた。

「この島の中でまだ行ってなくて、魔王が居そうな国か……」
「この辺じゃと、ヴァルガンナは滅んだし、ガイナス帝国しかないのぅ」

そう二人で話している中、ノエルはジュースの氷をゴリゴリと言う小さな音を立てながら『アルメラ速報』なる物を読んでいる。
その内容は、殆ど『キョーハイ遺跡の地下に古代遺跡発見!?』だの『キョーハイ遺跡は、古代デルガンダル人よりも遥か昔に存在していた居住区?』など、殆どが先日行った近未来的な研究所の調査報告ばかりが載っている物だった。
にしても、ビーグの部下達があの場所の事を言ったとはいえ、あそこへ行ったのはつい昨日の話。
速報の名の通り、ここまで公になるのは流石に速い、速すぎる。

「ノエル、そんな物を読んで何をしておるのじゃ?」
「これですか?オーブとか魔王みたいな、そんな感じの物があったらニュースとかになってそうだな~と思いまして……!?」

ノエルは、メアに読んでいる理由を話しながら、それ系っぽい記事を探していると、急に驚きの声を上げ、紙を落とした。

「何じゃ?そんなに驚くほどの事が……!?」
「ガイナス帝国が……消えた!?」

メアとタクマが覗いた記事には、こう書かれていた。

先日、ガイナス帝国もまた何者かに襲撃され、立派だった国がガイナス皇帝や帝国民諸共、跡形もなく消えていた事が判明しました。
それも、先月に発生したヴァルガンナと同様に、帝国で売買されていた奴隷や観光客、ガイナス出身ではない冒険家らだけは、怪我もなく無事だったとの事。
国王会談では、アルゴ王とその他協力者が掴んだ犯人と思わしき人物「アナザー」がまたやったのではないかとして、調査を進めています。

そして、その文と共に、アルゴ王が持っていたアナザーの姿絵を模写した物が載っていた。

「なんてこった、こんな偶然あるかよ……」
「とすると、後は港町ガルキュイ、聖地ギルナ、そして秘境の地・大和の三つになりますね」
「じゃが、ガルキュイはただの港、デルガンダルの聖地は聖職者の許可なく立ち入れないぞ」
「となると、怪しいのは秘境の大和だけ……」

タクマ達は、行く手を完全に塞がれ、頭を抱える。
そして、タクマは「なら、ここは諦めて別の島に行こう!」と提案した。

「じゃな、妾は賛成じゃ」
「よーし!それでは港町ガルキュイへ出発です!!」

ノエルは元気よく気合を入れ、タクマ達はガルキュイ行き馬車のチケットを買いに、ギルドの受付へ向かった。

「ガルキュイ行きを三枚お願いします!」
「はい、一人1万だから、合計3万ゼルンになります!」

タクマは、その少々高めな値段に驚きながらも、3万ゼルン金貨を手渡した。
何せ、大人などからすれば安い方でも、子供からしたら、3万は高く見えるものだ。
あんまり言ってはいなかったが、宿泊費やら食費、その他諸々で5万+αだったタクマの財布は残り1万ゼルンになっている。

「ガルキュイ行ったら、数日間は依頼頑張らないとな……」

タクマは、一気に広くなった財布の中身を除いて呟く。
そして、その馬車に乗ってガルキュイへと向かった。


【港町 ガルキュイ】

『港町~!港町~!降り口は左側となっております~!』

なんとも久しいアナウンスが、馬車の中に響く。
タクマ達はその声を聞き、目を覚ます。
すると、辺りから微かに潮の香りや波の音、カモメの鳴く声が聞こえてきた。
さて、次もここで頑張るぞ!と意気込んでタクマが背伸びをしていると、後ろから「ぎゃぁぁぁ!!」と悲鳴が聞こえた。

「どうしたっ!?」
「全く、妾が出る度に何故お主らはそう驚く」

何事かと思えば、またメアが異次元並に関節を曲げて、荷物入れの中で寝ていたようだ。
この光景もまた久々だが、そろそろ狭い所でしか寝れない癖を治してくれ。

「それよりタクマ、ちょっと首が戻らなくなったから、ゴキッとやってくれ」
「次からは控えてくれよ、分かっていてもそろそろトラウマになりそうだ」

タクマは静かにそう言いながら、メアの寝違えた首を戻し、今度こそガルキュイに足を踏み入れた。

外へ出ると、赤いレンガで作られた美しい家々、魚やら新鮮な果物やらを売る商店街、そしてここからでも見える澄んだ青の海達が、タクマ達を歓迎してくれた。

「なんて美しい海なのじゃ……」
「ですけど、ビーチではありませんでしたね……」

感動する者と、何故か残念そうにする者が居る中、タクマはそんな事は気にせず、近くのおじさんにギルドの場所を訊ねていた。
ノエルは残念そうな目で、紺色の布、まるでスク水のような物が入った袋を見つめていた。

「ここのギルドは船着場前だとさ、んでノエル、何だそれ」
「べっ、別になんでもいいじゃないですかっ!!」

ノエルは、背中に袋を隠し、頬を赤くして照れながらタクマに言った。


【ガルキュイ ギルド】
ここもやはり、アルゴやウォルと構造は変わっていない。
飯屋、クエストやチケット受付、馬車。
だいぶ違う所は、木造ではなく、レンガ100%であるところだろう。

「いらっしゃ~い!本日の依頼はあのようになっておりますよ~!!」

受付嬢らしき褐色肌の金髪お姉さんが、元気よく他の冒険家に接している。
毎度毎度、受付嬢は目のやり場に困るお姉さんしか居ない。
別にそう言った趣味ではないが、たまにはおっさんとか居ても良いのでは?と思いながら、タクマは船の料金を調べた。

「えーっと、ヴェルハラ行きが20万、ペルドゥラス行きが50万ですか」
「とすると、×3で60万と150万!?」
「どうするのじゃ?タクマ」

メアは、あまりの金額のデカさに驚いて何も言えなくなっているタクマに訊いた。

「そりゃあもう、ヴェルハラ代だけでも依頼引き受けて貯めないと」
「ですが、そんな簡単に大金を稼げるクエストなんてあるんですか?」
「あれば皆やるし、残ってても強敵クエストくらいしか……」
「いや、多分簡単そうなのあるぞ」

タクマは、まさかそんな美味い話があるものかとは薄々思いながらも、メアの持つクエスト用紙を見た。

「迷いの竹林に現れる骸骨兵士10体の討伐、報酬金2万ゼルン。骸骨兵士の頭蓋骨の納品で……一つ1万の追加報酬!?」

タクマは目を丸くして驚いた。
例え60万の目標には遠くとも、倒した10体全てから取れば追加報酬併せて12万だ。これは大きい!
タクマ達は即決し、このクエストを受けることにした。

「あら?こんな高難度のクエスト受けて大丈夫なの?」
「え?高難度……?」
「えぇ、目的地は迷いの竹林だし、依頼主不明。それに骸骨兵士は強くて、なかなか見つけにくいのよ?」

それを聞き、タクマは少し身構えた。
だけど使命も掛かっている……

「それでも俺、行きます!」

タクマは大きめの声でクエスト用紙とギルドカードを出した。
すると、それを見ていた受付嬢が笑顔で「それじゃあ、気をつけてね」と、笑顔で受注を済ませてくれた。
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