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第7章 アイム ア キャプテン!
第166話 足を引っ張らない努力
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【ゴルド大平原 馬車内】
「オーブを持ってかれた!?」
リュウヤは驚きのあまり、後ろにゴロンと転げ落ちた。そして、リュウヤの驚く声にまた驚いた吾郎は、茶を喉に詰まらせてゲホゲホとむせた。
「恥ずかしい話、そう言う事になるでありんす」
「ごめん!俺がしっかり持ってなかったばっかりに……」
「タっくん……」
タクマはアリーナに奪われた悔しさから、茶すらも喉を通らなかった。
元々は自分に課せられた魔王討伐の為に協力してくれていると言うのに、言い出しっぺでもある自分が、打倒魔王の為の大切な道具を奪われるなんて。情けない。
「タクマ殿、奪われたのならば、奪い返せば良い事。それに、誰もタクマ殿を責めたりはしないでござるよ」
「そうやでタっくん。今日はとりあえず寝て、明日クロフル監獄に行くで」
「皆、ありがとう!」
「ありがとうございなんし」
「ヘンッ、何を今更。助け合うのがダチじゃあねぇか」
リュウヤは、ガッハッハと大笑いし、お茶を飲んだ。
時間的にもそろそろ良い子は寝る時間、そしてメアとノエルも走った疲れでもうスヤスヤと眠っている。
「さて、明日に備えて寝るとするでござるか」
「タツ姐、今日は一緒に寝てもええ?」
「ええでありんすよ。さ、一緒に手を繋いで寝ましょう」
おタツとナノは笑い合い、馬車に敷いた布団の中に潜り込もうとした。
タクマと吾郎も、布団に潜ろうとした。しかしリュウヤだけ、何故か別方向、調理舎の方へ向かう。
「リュウヤ、寝ないの?」
「えっ?あぁいや、朝飯の仕込み済ませてから寝よっかなーってさ」
「因みに、何でござるか?」
吾郎は待ち切れないのか、笑顔で訊く。
リュウヤは、なんて返すか分かってるくせに、と心の中で言いつつ、笑顔で「オレのモーニングは秘密だぜ?」と返した。
すると吾郎は、予想通りの答えに満足したのか、「楽しみに待つでござる」と言い、最後に「おやすみ」と呟くように残して布団に潜り込んだ。
「ほら、取り返すんだろ?寝なくていいのか?」
「その言い方、何か俺達に早く寝てほしい感じだけど、どうかした?」
何だか様子のおかしいリュウヤに、タクマは心配して声をかける。
するとリュウヤはシシシと笑い、「コレ、皇帝の所から掻っ払ってきた」と円錐状の何かを見せた。
鼻に近付けてみると、嗅いだ事はないものの、ほのかに心が安らぐ香りがした。
「何これ、お香?」
「そっ。男女混合の長旅、偶には安らぎも必要だろ?」
「成る程、寝てる間に嗅がせたいから早く寝ろと」
「えとまあ、そんな所だ。じゃ、おやすみな」
リュウヤは何だか締まらないような感じで返答し、調理舎の方に入っていく。
一体何だったのだろう。タクマは疑問を抱きながらも、眠気に誘われたため眠りについた。
────そして、タクマ達が寝静まり、時刻は午前3時。朝食の仕込みは終わったのか、少し光が漏れ出していた調理舎からは光が消えた。
そして、リュウヤの見せたお香も、あちら側の世界で持ってきた皿の上で静かに燃え続け、外の程よい涼しい風に乗って夢の中に旅立っているタクマ達の心の緊張を解す。
だが、スヤスヤグーグー眠っている中、リュウヤだけはまだ布団には入らなかった。
「……はっ!ふん!たぁぁぁぁ!!」
ガコン、ザク、ゴトン。竹が転がり落ちるような音が、微かに響き渡る。
そして、その音を聞いたナノは、何だろうかと気になり、目を覚ました。
「何やろ?」
「いって~。やべ、血止まらなくね?」
扉を開けてみると、石槍のようなものが括り付けられた竹の上に、リュウヤが座り込んでいた。
そう、リュウヤは夜な夜な、トレーニングに励んでいたのだ。
「あり?ナノナノ、起こしちゃった?」
「ううん、今起きた。それより、何しとん?」
「修行。皆の足引っ張らねぇようにさ」
そう言いながら、リュウヤは近くの石を枕に寝転がった。
ナノも、リュウヤと話をするため、隣の石に腰をかける。
「足引っ張るなんて、リューくん強いのに何でなん?」
「実は俺さ、料理以外なーんにも出来ないトーキングバカだったからさ」
「それを言うなら、クッキングやないの?」
ナノは静かにリュウヤの間違いを訂正する。するとリュウヤは「そうそれ。カタカナ語難しネ」と、片言外国人の真似をして笑って誤魔化した。
「だから本当は、めちゃくちゃ弱いのさ、俺は。ノブナガ様の刀、アホみたいな耐久力、ちっぽけな開花魔法、そしてよく分からん籠手。この4つに守られてるだけでよ」
「でも、それならどうして、こんなコッソリと修行なんかしとるんや?」
「悩みを打ち明けるの苦手だからさ、一緒に修行したくても、どうも言えないんだ」
リュウヤは、ハッハッハと笑いながら言う。しかしその目は笑っておらず、真剣な目をしていた。
「黙ってるなんて、そんなのリューくんらしくないぞ」
「ハハ、ごめん。今度からは、打ち明けれるよう頑張るわ」
「じゃあ、ウチはまた寝る。おやすみやで」
ナノはリュウヤの約束を聞き入れ、馬車の中へと戻った。そしてリュウヤは、戻っていく背中に「おやすみやで」と返し、修行の続きを行った。
今度は誰も起こさないよう、素振りをコッソリと。
「オーブを持ってかれた!?」
リュウヤは驚きのあまり、後ろにゴロンと転げ落ちた。そして、リュウヤの驚く声にまた驚いた吾郎は、茶を喉に詰まらせてゲホゲホとむせた。
「恥ずかしい話、そう言う事になるでありんす」
「ごめん!俺がしっかり持ってなかったばっかりに……」
「タっくん……」
タクマはアリーナに奪われた悔しさから、茶すらも喉を通らなかった。
元々は自分に課せられた魔王討伐の為に協力してくれていると言うのに、言い出しっぺでもある自分が、打倒魔王の為の大切な道具を奪われるなんて。情けない。
「タクマ殿、奪われたのならば、奪い返せば良い事。それに、誰もタクマ殿を責めたりはしないでござるよ」
「そうやでタっくん。今日はとりあえず寝て、明日クロフル監獄に行くで」
「皆、ありがとう!」
「ありがとうございなんし」
「ヘンッ、何を今更。助け合うのがダチじゃあねぇか」
リュウヤは、ガッハッハと大笑いし、お茶を飲んだ。
時間的にもそろそろ良い子は寝る時間、そしてメアとノエルも走った疲れでもうスヤスヤと眠っている。
「さて、明日に備えて寝るとするでござるか」
「タツ姐、今日は一緒に寝てもええ?」
「ええでありんすよ。さ、一緒に手を繋いで寝ましょう」
おタツとナノは笑い合い、馬車に敷いた布団の中に潜り込もうとした。
タクマと吾郎も、布団に潜ろうとした。しかしリュウヤだけ、何故か別方向、調理舎の方へ向かう。
「リュウヤ、寝ないの?」
「えっ?あぁいや、朝飯の仕込み済ませてから寝よっかなーってさ」
「因みに、何でござるか?」
吾郎は待ち切れないのか、笑顔で訊く。
リュウヤは、なんて返すか分かってるくせに、と心の中で言いつつ、笑顔で「オレのモーニングは秘密だぜ?」と返した。
すると吾郎は、予想通りの答えに満足したのか、「楽しみに待つでござる」と言い、最後に「おやすみ」と呟くように残して布団に潜り込んだ。
「ほら、取り返すんだろ?寝なくていいのか?」
「その言い方、何か俺達に早く寝てほしい感じだけど、どうかした?」
何だか様子のおかしいリュウヤに、タクマは心配して声をかける。
するとリュウヤはシシシと笑い、「コレ、皇帝の所から掻っ払ってきた」と円錐状の何かを見せた。
鼻に近付けてみると、嗅いだ事はないものの、ほのかに心が安らぐ香りがした。
「何これ、お香?」
「そっ。男女混合の長旅、偶には安らぎも必要だろ?」
「成る程、寝てる間に嗅がせたいから早く寝ろと」
「えとまあ、そんな所だ。じゃ、おやすみな」
リュウヤは何だか締まらないような感じで返答し、調理舎の方に入っていく。
一体何だったのだろう。タクマは疑問を抱きながらも、眠気に誘われたため眠りについた。
────そして、タクマ達が寝静まり、時刻は午前3時。朝食の仕込みは終わったのか、少し光が漏れ出していた調理舎からは光が消えた。
そして、リュウヤの見せたお香も、あちら側の世界で持ってきた皿の上で静かに燃え続け、外の程よい涼しい風に乗って夢の中に旅立っているタクマ達の心の緊張を解す。
だが、スヤスヤグーグー眠っている中、リュウヤだけはまだ布団には入らなかった。
「……はっ!ふん!たぁぁぁぁ!!」
ガコン、ザク、ゴトン。竹が転がり落ちるような音が、微かに響き渡る。
そして、その音を聞いたナノは、何だろうかと気になり、目を覚ました。
「何やろ?」
「いって~。やべ、血止まらなくね?」
扉を開けてみると、石槍のようなものが括り付けられた竹の上に、リュウヤが座り込んでいた。
そう、リュウヤは夜な夜な、トレーニングに励んでいたのだ。
「あり?ナノナノ、起こしちゃった?」
「ううん、今起きた。それより、何しとん?」
「修行。皆の足引っ張らねぇようにさ」
そう言いながら、リュウヤは近くの石を枕に寝転がった。
ナノも、リュウヤと話をするため、隣の石に腰をかける。
「足引っ張るなんて、リューくん強いのに何でなん?」
「実は俺さ、料理以外なーんにも出来ないトーキングバカだったからさ」
「それを言うなら、クッキングやないの?」
ナノは静かにリュウヤの間違いを訂正する。するとリュウヤは「そうそれ。カタカナ語難しネ」と、片言外国人の真似をして笑って誤魔化した。
「だから本当は、めちゃくちゃ弱いのさ、俺は。ノブナガ様の刀、アホみたいな耐久力、ちっぽけな開花魔法、そしてよく分からん籠手。この4つに守られてるだけでよ」
「でも、それならどうして、こんなコッソリと修行なんかしとるんや?」
「悩みを打ち明けるの苦手だからさ、一緒に修行したくても、どうも言えないんだ」
リュウヤは、ハッハッハと笑いながら言う。しかしその目は笑っておらず、真剣な目をしていた。
「黙ってるなんて、そんなのリューくんらしくないぞ」
「ハハ、ごめん。今度からは、打ち明けれるよう頑張るわ」
「じゃあ、ウチはまた寝る。おやすみやで」
ナノはリュウヤの約束を聞き入れ、馬車の中へと戻った。そしてリュウヤは、戻っていく背中に「おやすみやで」と返し、修行の続きを行った。
今度は誰も起こさないよう、素振りをコッソリと。
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