氷結の毒華は王弟公爵に囲われる

カザハナ

文字の大きさ
64 / 805
本編

12 (男同士の話し合い 2)

しおりを挟む
「ーーそんな訳で、私はリラの心を傷付けた男の股間を蹴り上げたし、両親共々貴族社会に戻れないようにしましたが、どうせなら蹴るのではなく切り落とせば良かったと、後悔した事がありますね」


 ジーンは過去の制裁をも話して聞かせる。

 この程度で気付けづくなら、所詮、それまでの男だ。そんな男にリラはやれない。ただ、エドワルドはそんな事で引き下がるような男では無い事を、ジーンは本能的に気付いてる。良くも悪くも、多少は違えど似た者同士と言う類いだ。

(あの男の両親が勝手にリラを婚約者候補に考えていたなんて知っていたら、リラを傷付けたと知った時点で切り落としてやったものを……)

 男が聞けば震え上がる事間違いないが、ジーンは平然と物騒な事を思っているし、逆の立場ならエドワルドも同意した事だろう。


「だから、貴方がリラを傷付けるなら、私は容赦しませんよ。リラは私の大切な妹です。もし貴方が他の女にうつつを抜かしたら、その女共々地獄へと送ってみせますから覚悟していて下さい」


 そうは言っても、エドワルドが異性に対する無関心っぷりは、難攻不落と呼ばれる渾名あだなが示す通りだ。

 リラに興味を持った事自体、奇跡に近いと言えるだろう。


「私に興味を抱かせたのはリラ嬢のみなので、その心配は要りませんが、ジーン殿が安心するなら約束しましょう。その代わり、愛故の暴走は大目に見て下さい。私がどれ程リラ嬢に心を惹かれているのか、態度や行動で示さなければ、リラ嬢に信じて頂けそうに無いですからね」


(彼女の全てを手に入れる。あの笑顔が私の物になるのだ。他の男に渡す気は更々無い。彼女の全ては私の物だ)

 エドワルドは二年程前の、リラを見付けた時の事を思い浮かべる。

 最初は、噂通りの令嬢だなと、何の感情も浮かばずに、ただ見ていただけだった。そのリラが、周りを伺い人がいない事を確認し、ふわりと華が綻ぶように浮かべた微笑みに、心臓を鷲掴みにされた気分だった。

 初めて見たリラの微笑が、目に焼き付き頭から離れない。彼女は他に、どんな顔をするのだろう。怒った顔は?驚いた顔は?泣き顔も可愛いだろうが、快感に悶える顔が見てみたい。あの冷たい色合いアイスブルーの瞳を蕩け潤ませ欲情させたい。そして、その瞳に私の姿を捉えさせたい。

 彼女を見掛ける度に、想いが募る。彼女を思い出すだけで恋い焦がれ、欲が湧く。

 だからこそ、この二年の月日はエドワルドにとって、焦燥と苛立ちの連続だった。

 そんなエドワルドが本人を前に、面倒だからと諦めるなんて有り得ない事なのだ。
しおりを挟む
感想 2,440

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...