出会いと別れと復讐と

カザハナ

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 復讐する術があるのに、喩えその手が悪魔の手だろうと、その手を取らない理由にはならない。

 男は、カルラの問いに答える。


「あいつ等に復讐出来るなら、何だってしてやるさ。条件はなんだ。何なら、あんたの靴に口付けだってしてやるぞ」


 それは、奴隷が主に絶対服従の忠誠を誓う仕草。中には、無理矢理させる奴もいると聞くが、カルラにそんな趣味はない。


「悪いけど、そういった冗談は笑えないわ。私が欲しいのは、ここの管理者よ。あなた、腹をかっ捌かれたって言ってたけど、魔力順応能力者?」

「ああ。元は魔力目視と筋力強化だ。移植によって、複数の能力を持っているが、移植相手が死んでからでないと使えない。ただし、俺に移植された奴は研究所員に殺されてる。一人に対し、どれだけの能力が持てるかの実験だとよ。どんなに拒絶反応が起きようが、あいつ等にとっては死ななければ問題ないからな。この右目も左手も他人の物で、内臓も幾つかそうだ。あんたがどんな能力者で化物だろうと、復讐に手を貸してくれるなら何だって構いやしない。俺も、ある意味化物みたいな物だしな」


 魔力順応能力者とは、他人の能力を引き継げる特殊能力者だ。普通だと、移植をしても魔力を引き継ぐ事はないし、移植後に拒絶反応を引き起こせば死に至る事もあるが、この能力者の場合、拒絶反応を引き起こしても死ぬ事はなく、魔力が馴染めば移植相手の能力を引き出す事が出来る。

 本来は移植ではなく、死んで直ぐの死体に触れる事で、その能力を少し、引き継ぐ事が出来るのだが、研究所は強い魔力のまま引き継がせたくて、移植と言う手段に出たのだろう。


「相変わらず、人を人とすら思わないクズっぷりよね。だからこそ、躊躇う事なく復讐が出来るんだけど。でも、魔力順応能力者なら、放出型魔力でしょ。なら、魔力と共に薬の成分を放出出来るから、一気に減らすのは無理でも、薬を徐々に減らしていけば成分も薄まり、その内薬無しでも生きていけるわ」

「?!本当、なのか?」

「ええ。あいつ等はモルモットには知らせて無いだろうけど、そうした実験データも残してるのよ。ただし、体内を巡回する循環型は投薬し続けなければ生きてはいけないし、放出型でも体内魔力を出し切っても、薬の成分は少ししか出ないから、かなりの年月が必要だわ。でも、リミッターが掛かるまで魔力を使い切らなきゃ意味はないの。魔力が体内に沢山ある場合、成分は抜けないから気を付けて。私が望むのは、そういったモルモットを、あなたがここで治療する事。ただし、研究所員に嬉々として手を貸すクズはしなくて良いし、判断は任せるわ」
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