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第3章★閑話★

3☆月読様のお気に入り☆

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月読「叢雲、下界に降りる準備をしておけ」

叢雲「人界ですか?」

月読「いや、魔界だ」

叢雲「この前も魔界に降りていませんでしたか」

月読「ああ、別件でな。今回は選別だ。あと数名、人界送りにする」

叢雲「……数名? 多いですね。今回はすでに2名、人界に送り込んでいるでしょう」

月読「それだけ今回は事が大きい。魔人が人間を孕ませたなど、天照に知られたら大変だ。知られる前に子を探し出させる。俺も下界に降りることになりそうだ」

叢雲「ワタルを人界送りにするつもりですか」

月読「そうだな……その資質を確かめに行く。菫もいい。あれは俺と相性が良さそうだ」

叢雲「……あれを眷属にするとワタルがうるさいのでは?」

月読「魔界にいても欠陥だらけではないか。あれは魔界にいるより人界にいた方が活きる。魔界では搾取されて終わりだ。俺なら上手く飼い慣らす。ワタルのようにな」

叢雲「ワタルは……大人しく月読様の命を聞くようなタマではない気がしますが」

月読「あれも欠陥品だ。菫の魂を永劫追う、腐り切って病んだ魂の持ち主だ。菫を使って脅せば俺の言う事は絶対に聞く」

叢雲「欠陥品の魂を持つ者を集結させるつもりですか」

月読「ああ。現にあの狂人や、鬼を滅ぼすきっかけとなった青鬼も俺の眷属になり、人間に擬態して人界に馴染んでいるぞ」

叢雲「……あの欠陥品の青鬼ですか……俺あいつ苦手です」

月読「ワタルは俺には逆らえない。菫が足枷になってくれているからな」

叢雲「……足枷、ですか」


☆☆☆☆☆


ワタル「クシュッ」
菫「クシュッ」

ワタル「……寒い?」

菫「ううん、大丈夫。ワタルは?」

ワタル「平気。ホコリに反応したのかもな」

菫「掃除、したんだけどな……」

ワタル「まあいいや。それで、パーティーのとき、お前大丈夫だったか? なんか忙しそうに動き回ってたじゃん」

菫「ワタルのせいでね」

ワタル「は? 何でおれのせいなんだよ。おれはヒサメをエスコートしただけだぜ」

菫「ワタルとヒサメ様がダンス踊っているとき、あなたに憧れている貴族のお嬢様たちがバタバタ失神したのよ。おかげでわたしたち女中は介抱に駆け回っていたんですよ」

ワタル「そんなのおれのせいじゃねーじゃん。勝手に倒れる方がいけないんじゃん」

菫「そう?」

ワタル「な、なんだよ。急に覗き込むな。びっくりするだろうが」

菫「ワタルがカッコいいから、女の子たちが倒れちゃったの」

ワタル「……だから何だよ。勝手に倒れる方がいけないんだろ」

菫「ワタルって、モテるんだね。こんなに横柄なのに。どこがいいのかな。顔かな」

ワタル「ふーん……けんか売ってんの。ふーん、なるほどなるほど」

菫「な、なに?」

ワタル「おれだって解せねーな。菫のどこがいいんだろうな、太一も、カルラも、コウキも」

菫「……ほんとね。何でだろう」

ワタル「顔か? 体か?」

菫「ニヤニヤしながら言わないでよ」

ワタル「カルラは体だろうな」

菫「舐めるような目で見ないでよ」

ワタル「カルラはお前の体に嵌まってるからな。何せ1日に6回もお前を抱くんだもんなあ」

菫「……ワタルって、ヒサメ様と寝たの?」

ワタル「ブーッ」

菫「やだ、お茶こぼして。ほら、こっち見て。拭くからね」

ワタル「お前、不躾に言うんじゃねーよ!」

菫「不躾はどっちよ。カルラ様を侮辱しないで」

ワタル「してねーし。お前の体に嵌ってるって言っただけじゃねーか」

菫「言い方が侮辱しているのよ」

ワタル「そう? ごめんごめん。で、気持ちよかった?」

菫「うん?」

ワタル「カルラに抱かれて、気持ちよかったの?」

菫「……ワタル、そんなこと言って恥ずかしくないの?」

ワタル「別に。菫は顔、赤いけど。あいつあんまり上手くなさそうだよな、オタクだし」

菫「……色々聞き捨てならないんですけど……オタクだと上手くないの?」

ワタル「あ、悪い悪い。オタクが下手なんじゃなくて『ヒヒヒ~』って笑う研究オタクの橙騎士団長は、下手なんだろうなと思って」

菫「ちょっと似てるじゃない」

ワタル「あいつ、菫が初めてだぞ、きっと。根暗オタクだし、猫背だし、挙動不審だからパーティーのときも隅でボソボソ食ってるだけだし」

菫「……そんなに言うってことは、ワタルは上手なの?」

ワタル「えっ?」

菫「女の子、満足してるの?」

ワタル「な、なんだ急に」

菫「……赤くなってるけど。あれだけ女の子にキャーキャー言われてたら、それはもうリョウマ様並みに百戦錬磨なのよね?」

ワタル「……ほう? リョウマとおれを比べるなんて、悪手に出たなあ」

菫「話、反らした。下手って言われたことあるの?」

ワタル「ねえよ!」

ワタル(あれ、待てよ……? そういえばおれ、今回の転生で誰か抱いたことあったっけ……?)

ワタル「……生き長らえるとやっぱりダメだな。記憶錯綜して……」

菫「え? なに?」

ワタル「いいや、なんでも。リョウマは上手いんだ? 良く知ってるな。あいつともヤッたの?」

菫「ヤッてないわよ」

菫(逆にわたしの暴走を止めて下さるわよ)

ワタル「え? そんなにムキになるなよ。なに、未遂はあったとか?」

菫「……ないわよ。リョウマ様、紳士ですから」

ワタル「あっ、もしかして青薔薇の刻印を確かめるために寝てるな? おれもヒサメに仕掛けたけど、未遂で終わったんだよ」

菫「えっ、ヒサメ様、青薔薇の刻印なかったですか?」

ワタル「だから、未遂で終わったって。菫はおれの服強引に剥いだり、とんでもねえからな。まあカルラにはそれで調べて、なかったことを確認したわけだろ」

菫「まあ……なんで未遂だったの?」

ワタル「パーティーの後、ヒサメの部屋に行った。抱こうとしたら、カボシがおれを探しにきて、未遂で逃げた」

菫「わあ……」

ワタル「ヒサメと一緒にいるところをカボシに見られたら、おれ、命ねえよ、きっと」

菫「ワタルなら大丈夫だと思いますが、刻印を確かめたらポイ捨てとかはダメですからね」

ワタル「わかってるよ。どこのダメ男だよ、それ」

菫「うん、良かった」

ワタル「覚悟してるよ。ヒサメを今生大事にするって。もし、そういう関係になったらな」

菫(面白い言い方するな……一生大事じゃなくて、今生大事なんて、初めて聞く言葉だわ)

菫「ワタルはすごいね。わたし、初めは相手の心を考えずにリョウマ様を追い剥ぎしてしまったの。屈辱的だし、とても失礼だったと思います」

ワタル「それだけ必死だったんだろ。母さんを茨の塔から救い出そうと」

菫「初めはそうでした。騎士団長と寝れば確かめられると思っていて。でもカルラ様に、自分の体を大切にして欲しいって言われて……」

ワタル「へえ、あいつ菫のこと本当に大事にしてくれるんだな。いいヤツじゃん。根暗オタクだけど」

菫「なんでそう突っかかるのかな……」

ワタル「今度はおれに試してくれよ。お前が床上手か判断してやるよ」

菫「あのね、ワタル……双子なのよ、わたしたち……」

ワタル(ああ。三貴子の悪戯でな……)

ワタル「嘘に決まってんだろ。大体わかるよ、お前がどうだかは。双子だしな」

ワタル(前世では抱き合ったしな。おれが鬼のとき)

菫「なんですか、それ……」

☆終わり☆
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