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第5章★閑話★

5☆あなたを呼ぶ☆

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ワタル「なんだよ、このプレゼントの山は? めでたいことでもあったのか?」

コウキ「これ、全部ワタルへのプレゼントだってさ。貴族令嬢や市民のお前ファンから」

ワタル「頭めでたいんだな……」

コウキ「いやいや、そんなこと言うなよ。ワタルのことを想って贈ってくれるんだからさ! さて、これで最後だな。カルラ、こっち!」

カルラ「あ~重かった~。ヒヒヒっ、ワタルって人気あるんだ。あやかりたいね~」

ワタル「……からかってんじゃねーよ」

カルラ「からかってないよ。魔物討伐数、天界国歴代1位、おめでと~」

コウキ「おめでとう!」

ワタル「……ありがとう。例えばカルラにファンクラブができて、毎月雑誌が刊行されて、隠し撮りされた写真が載ってて、初体験はいつですかー? なんてインタビューされたらどうだよ?」

カルラ「うわ~悲惨……モテなくて良かった、俺」

ワタル「真顔で言うんじゃねーよ。惨めになるだろ、おれが!」

コウキ「あっ、これヒサメからだ! 直接ワタルに渡せばいいのに。なにやってんだ、あいつ」

カルラ「恥ずかしかったんだろ。やるじゃん、よっ! 色男! ひゅ~」

ワタル「口笛吹くな! からかうな、バカルラ!」

カルラ「バカルラ!? へ、ヘコむんですけど~……」

☆☆☆☆☆


火輪「と、いうことが昨日あった」

菫「ふんふん、大変でしたね」

火輪「おい、聞き流すなよ」

菫「え? 今コウキ様の部屋掃除してるんだから、仕方ないでしょ」

火輪「後でいい。それより今の会話で気になるところがあっただろう?」

菫「……あやかりたいね~?」

火輪「違う! なんだそれ。心底どうでもいいカルラの言葉だろうが」

菫「どうでも良くないじゃない。カルラ様、モテモテになりたいのかな……」

火輪「なれるわけないだろう、あんな根暗研究オタク」

菫「わかってないですね……ああいう優しい人がモテるんですよ」

火輪「は? モテるわけないだろ、あんな猫背髪グシャグシャダサ眼鏡」

菫「火輪様口悪いんですけど……」

火輪「うるせえな。女中なんだから生意気な口利くな!」

菫「コウキ様の顔でそんな口利かないで欲しいんですけど……」

火輪「ヒサメ……コウキ兄さんのことが好きだったんじゃないのかよ。なんで白騎士団長なんかにプレゼント渡してるんだよ」

菫(ああ……気になるのはそこか)

菫「ヒサメ様、勲章もらう騎士団長全員にプレゼント贈ってるんじゃないですか?」

火輪「リョウマやカルラはもらっていないはずだ。ヒサメはやつらを嫌っているからな」

菫「リョウマ様は仕方ないとして、カルラ様はなんで嫌われているの?」

火輪「仕草や言動が生理的に受け付けないそうだ」

菫「あら……フィルターかかってますね、もったいない」

菫(まあカルラ様がそう見えるよう演技してるところがあるからな……)

火輪「くそっ! あんな性格悪いやつのどこがいいんだ! 結局女は顔で判断するんだよ」

菫「そんな人ばかりじゃないですよ」

火輪「カボシ姫だって、ワタルが好きだぞ。あいつはカボシ姫に贔屓されているんだ」

菫「白騎士様は、外見だけで騒がれてるだけでしょ」

火輪「は? は? お前、ヒサメが外見だけ見て人を判断するような浅ましい女だと言ってるのか?」

菫「こ、怖い怖い! 詰め寄らないで下さい」

火輪「ヒサメのことを侮辱するからだ!」

菫「してません、ごめんなさい。白騎士様は外見だけの方じゃないですよね」

火輪「は? は? 何でそうなるんだよ。お前も顔で判断するのか。だよな、ワタルとリョウマに色目を使っているもんな」

菫「色目か……わたしは顔というより、表情で判断するかも。笑顔が素敵な方に惹かれますよ。あなたも笑えば、きっと可愛いわ」

火輪「かっ……そんなわけない」

菫「可愛いと思いますよ。穏やかに目を閉じている火輪様の表情は、魅力的でしたから」

火輪(あ……俺の本体……器のことを言っているのか……)

火輪「でもどうせ、みんなワタルを好きになる」

菫「それはどうかな……あの子傍若無人だから……」

火輪「お前だって、カボシ姫だって、ルージュだって、ワタルが好きだろう」

菫「まあ、そう……ですね……」

火輪「ほらみろ。ヒサメだってきっと……」

菫「ヒサメ様といえば、コウキ様が氷の魔物に右太ももを凍らされたとき、聖女の力を使ったんですけど……」

火輪「ああ、使ったな」

菫「そのとき、コウキ様の足見なかったのかな? コウキ様の足も、その……傷があるのではないですか?」

火輪「ああ……ヒサメはお前と違って男に免疫がないし、お前と違って純真無垢で、お前と違って心が綺麗だから、服の上から聖女の力を使い、コウキの肌は見ていない」

菫「何よ何よ、どうせわたしはアバズレですよ」

火輪「うわっ! 急に近付くな!」

菫「……えっ? ダメなの?」

火輪「お前なんか、近付かれただけで妊娠しそうだ。責任取れなんて言いそうだし」

菫「ひどい……」

火輪(コウキの体だからか、近付かれると心拍数が上がる……)

火輪「むかつく、こんな女に……」

菫「何よ何よ、コウキ様はそんなこと言わないもん」

火輪「うるさい。コウキコウキうるさいんだよ、淫乱」

菫「さすがに心折れそう……ゼンタ様でももう少しまろやかですよ……」

火輪「いいから、ヒサメが白騎士に何をプレゼントしたのか探ってこいよ」

菫「わたしもどちらかというと、ヒサメ様から警戒されてるっぽいし……無理です」

火輪「チッ、役立たずが」

菫「コウキ様に交代して、ヒサメ様に直接聞けばいいじゃない」

火輪「嫌だ。そんなみっともないことできるか」

菫「コウキ様がちょっと言えば、すぐに教えてくれると思うけどな」

火輪「悔しいだろ! 俺の器じゃないのに!」

菫「もう……そんなこと言っていられないでしょ。わたしをヒサメ様だと思って、コウキ様になりきって聞いてみて下さいよ」

火輪「ヒサメ、わ、ワタルに何をあげたの?」

菫「ぎこちない……」

火輪「仕方ないだろ!」

菫「ヒサメ、今日も綺麗だね! ところで昨日、ワタルにプレゼントしたんだな。何贈ったの? 俺も討伐数歴代1位のお祝い贈れば良かったかな……みたいにできません?」

火輪(なんだこいつ……)

火輪「できるわけないだろ! そんなアイドルスマイルみたいなの!」

菫「コウキ様の顔なんだから、余裕でできるでしょ」

火輪「無茶言うな。俺はコウキ兄さんみたいにヘラヘラできない」

菫「だって、演技することあるでしょ? 火輪様の意識のときに人と話したり……」

火輪「極力黙ってる」

菫「なんで? わたし火輪様ととても話しやすいわ」

火輪「……まさか。俺は言い方がきついし、嫌われる。明朗快活で人気者のコウキ兄さんとは違う……」

菫「ふふ、自覚してるんだ。可愛い」

火輪「なんだそれ! 淫乱なんかに言われても嬉しくない!」

菫「はいはい、そうね、ごめんなさいね」

火輪「聞いてるのか? ヒサメに確かめてこいよ、淫乱」

菫「アバズレの方がまだいいですね……火輪様、淫乱じゃなくてせめてアバズレって呼んで下さらない?」

火輪「か、変わってるな……お前……」

菫「だって、どうせ呼べないでしょ、菫って」

火輪「そんなことはない!」

菫「ふーん……じゃあ呼んで。呼べたらヒサメ様に聞いてきてあげる」

菫(ごめんね、嘘ついて。ワタルに聞くんだけどね)

火輪「菫……さん」

菫「菫さん!?」

火輪「な、なんだよ……菫さんじゃないのかよ?」

菫「いや、てっきり呼び捨てかと思っていたので……不意打ちというか……」

火輪(コウキに化けたときは呼び捨てできるのに……くそ)

火輪「俺、まだ12歳だし……」

菫「……永遠の12歳ね。本来なら18でしょ。同じですよ、わたしと」

火輪「お前だって俺のこと、火輪様って敬称付けるだろう……俺も付けてるだけだ、菫さん」

菫「コウキ様の顔で菫さんと呼ばれるのも……なかなかいいわね……」

☆終わり☆
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