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【IF番外編√】★天界国赤騎士団長・炎のリョウマ★

IF.3☆経験値の差☆

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リョウマ「菫様、あれはなんですか」

菫「鬼魚すくいです。すくえたら鬼魚をもらえますよ。成長したら鬼を食べてしまうので、人界の鬼ヶ島から追放されてしまった哀れな魚なの」

リョウマ「あの怪しい女は?」

菫「陰陽師占いです。紙人形にまじないを施してくれて、御守りにすると叶えてくれます。ただ、対価として願いと比例した代償があるので、お願い事は軽いものをおすすめします」

リョウマ「なんだあれは……魔物の群れ?」

菫「ああ、神輿担ぎですね。崇める御神体が神輿に乗っていて、周囲を妖怪や式神のみなさんが担いで練り歩きます。倭国が誇る百鬼夜行です」

リョウマ「……あれが噂の百鬼夜行か。倭国の祭りは独特だな……」

菫「花火もやるみたいですよ。一緒に見ようね」

リョウマ「はい、喜んで」

菫「えっ、待って。お祭り会場でひざまずいたら、目立ちますよ」

リョウマ「そうなのですか?」

菫「そうなのですよ。目立たないようにしなきゃ。天界国での振る舞いしていたら、ぎょっとされます」

リョウマ「どうすれば目立ちませんか」

菫「うーん……普通に歩いて、屋台を見て、それからわたしと手を繋いだりしたらいいかも」

リョウマ「なるほど。では、お手をどうぞ、菫様」

菫「違う違う」

リョウマ「は?」

菫「それじゃ、プリンセスと護衛の騎士じゃないですか」

リョウマ(? 合ってるじゃないか)

菫「もっとフランクにしないと、バレちゃいますよ」

リョウマ「あのな、元々の立場が王女と騎士なのだから、周りから立場通りに見えても仕方がないだろう」

菫「そうかな……わたしじゃじゃ馬だって評判なんですけど」

リョウマ「そんなの、カボシ姫だって言われていますよ! 騎士を翻弄してばかりです」

菫「大変ね、騎士様は……じゃあ、やってみるからわたしに合わせて下さいね」

リョウマ(聞いちゃいない…………)

菫「こうです」

リョウマ「こうですか」

菫「そうそう。並んで同じ方向を見ながら、お互いの右手と左手を掴んで歩くんです」

リョウマ「……これだと、右手が塞がれてしまうが」

菫「? 手をつなぐって、そういうことでしょ?」

リョウマ「俺は右利きです。いざというときあなたを守るために左手でつなぎたいのですが……菫様も右利きですよね? いや、この前左で書類書いていましたっけ?」

菫「あ、はい。両利きです」

リョウマ「え!? そうなのですか」

菫「そうなのですよ。時間が迫っていたら、両手で別々の書類を書けるように、無理やり両利きに矯正しました。元々左利きというのはありましたけど。ふふ、人界の鬼みたいでしょ」

リョウマ「ああ……鬼族はもれなく左利きですからね……」

リョウマ(器用だな……)

リョウマ「では、右手を出して下さい。おつなぎします」

菫「違う違う」

リョウマ「あ?」

菫「なんか仰々しいのよね……」

リョウマ「……注文の多いプリンセスですね」

菫「そうかな? 騎士様は何をするにも形式的なのね。もういいや、腕に抱きついちゃうから」

リョウマ(ん? 抱きついてきた?)

菫「嬉しい?」

リョウマ「え? はい、もちろん嬉しいです。愛する菫様と誰にも邪魔されずに屋台デートができるのですから」

菫「違う違う」

リョウマ「おい……なんださっきから。俺のことバカにしているのか」

菫「リョウマ様なら、そこでこめかみにキスでしょ」

リョウマ「あのな……俺は自分からは菫様に触れないと言いませんでしたか。エスコートなら別ですが、今は違うでしょう」

菫「ちぇっ。ミラー様にはキスして、わたしにはしないんだ」

リョウマ「ゴホッ……」

菫「アコヤ様と離婚したこと、後悔してるんだ」

リョウマ「ゴホッゴホッ」

菫「紫苑の塔の最上階になった女の子は、全員リョウマ様に抱かれてるんだ」

リョウマ「す、菫様……」

菫(困ってる。可愛い……)

リョウマ「俺のこと、どれだけ女たらしだと思っているんですか。そんなに大人数にはなりませんから」

菫「ん? お付き合いの数? 抱いた数?」

リョウマ「つ、付き合った数です。結婚前に付き合ったのは3人くらいです。百戦錬磨とは程遠い」

菫「ふーん、でも沢山の女の子は抱いてるのね。それなのにわたしのこめかみにキスはできないんだ」

リョウマ「……こんな雑踏でやったら、目立つでしょう。目立つなと言ったのは菫様ですよ」

菫「ふふ、そうだったね」

リョウマ「だいたい菫様は誰彼かまわずキスをするんですか?」

菫「しますよ。親愛の気持ちを唇に込めて、頬に」

リョウマ「は? 誰にでも? するのか?」

菫「親愛を感じたら……ありがとうと気持ちを込めて……しますけど……倭国では異質かもしれませんね」

菫(ワタルなんかは絶対にしないしな……)

リョウマ「御剣にも、コウキにも、ゼンタにも、バカ長男にも……セージにもしたことがあるんですか?」

菫(バカ長男? ああ、センジュ様か)

菫「……声大きくない? たかがキスでしょ」

リョウマ「は? は? たかが? おい、カルラがまた泣くぞ」

菫「わたしみたいな穢れた魔人、大切な人には嫌われた方がいいのよ」

リョウマ「……ひねくれ過ぎだろう」

菫「それでさっきの話ですけど、御剣様とセージ様には、自分からキスをしたかな」

リョウマ「……セージにもしたのか」

菫「昔からわたしの右腕ですしね」

リョウマ「菫、今後は俺を頼れ。俺が菫の右腕になる」

菫「え? リョウマ様はわたしの可愛いワンちゃんでしょ?」

リョウマ「ふ、ふざけるなよ……」

菫「お手」

リョウマ「……」

菫「また反抗期かな。お手」

リョウマ「…………わん」

菫「いい子いい子。この状態で手を下ろすと……ほら、手、つなげた。これですよ、これ」

リョウマ「…………ずいぶん嬉しそうだな」

菫「だって恋人デートみたい。浴衣着てデートなんて初めて!」

リョウマ「え? 初めて?」

菫「はい。わたしあなたと違って、誰ともお付き合いしたことないし、カルラ様以外は経験ないから」

リョウマ「……そうか。では、今日は王女も騎士もなしだ。普通の恋人デートをするか」

菫「はい……って、引っ張らないで下さい、どこ行くの? 花火会場は奥ですよ。もうすぐ時間だわ」

リョウマ「人気のない神社内で見る。この椅子に並んで座ろう。どうぞ、ハンカチを敷きますから」

菫「ありがとう……あっ、花火! 打ち上がりましたよ」

リョウマ「はい、綺麗ですね。噂通り、倭国の打ち上げ花火は豪華絢爛だな。隣、失礼します」

菫「……えっ?」

菫(座るときにキスした?)

菫「今するの? びっくりした……」

リョウマ「……菫様が両利きなら、俺、左腕を目指しますから、覚悟して下さい」

菫「え? え?」

リョウマ「目、つぶれ。キスは誰にでもするのだろう?」

菫「え? 親愛の……気持ちを込めて……頬に……」

リョウマ「ああ。俺もお前に親愛の気持ちを込める。俺が親愛の情を抱くのは、今後菫だけだがな」

菫「きょ、狂犬リョウマの日?」

リョウマ「ああ。早くしろよ、このままだと目を開けたままキスをすることになるぞ」

菫「……どこにするつもりか、見届けないと……狂犬だと怖いので」

リョウマ「フッ、時間切れだ。覚悟しておけよ、俺の本気を」

☆終わり☆
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