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3.隣国戦争

20.

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次の日、戦況は更に佳境に入っていた。
救護テントに迄前衛の様子が耳に入って来た。

「三葉、やばいよ。あいつら今度は全身に爆弾を付けて単身で突っ込んで来たって」
「え…?」

爆弾を付けて突っ込んでくるなんて自殺行為だ。どうしてそこまで人の命を軽く見れるのだろう?そんな指示を出した敵の本部に怒りが湧いた。

「それのせいでこっちもかなり被害が出てるらしい。患者増えるかも。覚悟しといて」
トミーが言った通り少し時間が経った後、怪我人が押し寄せて来た。あちらは一人に対してこちらは何人も怪我をする。こんなんではうちの兵力が持たない。

「俺らはもう終わりだ…このままここで死ぬんだ…」
目の前に居た兵士が膝を抱え弱音を吐く。顔に生気はなく正に絶望の表情をしていた。
この人達に何て声を掛ければいいのだろうか?きっとどんな言葉を掛けても彼らの心は癒されないだろう。

「家に帰りたい…妻と子供に会いたい」
懐から出したボロボロで血だらけの写真を握りしめて泣いている。
その姿を見て俺も教会の皆んなやジュリー、孤児院の皆を思い出した。
早く増援が来る事を祈るばかりだ。

「美味しいスープを食べませんか?」
「へ?」
「疲れた時は美味しいご飯を食べる事が大事です。実はハイセン団長のお墨付きなんですよ?」

わざと茶目っけたっぷりに兵士に話かける。気分転換は大事だ。それに満足した食事を取る事でいくらか心も満たされる。俺が出来るのはこう言う事だけだから。アヒン殿下の為にも俺は俺が出来る事をする。
魔法の鞄を持ってきて良かった。鞄の中に入っている物の時が止まるのでアヒン殿下に相談して生野菜を沢山持って来ていた。流石に毎日全員分を賄う材料はない為、救護テントの食事の一部を俺の料理で対応している。
こんな状況での生野菜だったので多少は元気が出る者もいた。ハイセン団長が時々ウロウロしているので人が見えない所でちょいちょい食事を分けてあげていた。普段はつっけんどんなのにご飯を食べている時は顔が綻んでいて素直だ。何だか野良猫に餌をやってるみたいで少し和む。

「おい聖女候補」
「はい何でしょう?」
珍しい。いつも黙々とご飯を食べるだけのハイセン団長が俺に話しかけて来た。

「何でお前はこんなに料理が上手いんだ?聖女様も上手いのか?」
「んー俺は家庭の事情もありますけど料理するのが結構好きなんです。美優さんは……料理している所は見た事ないですね…」

あの人は俺が作ったご飯に手をつけたがらなかった。でも料理している所は見たことないから買い食いをしていたのかもしれない。

「何で仲悪いんだ?」
「何故か嫌われてるんです」
ははと頭を後ろ手でかく。
「嫌われる様なことしたのか?」
ぎろりと睨まれ肩がすくむ。
「んー個人的にはしたつもりがないのですが恨みは買っている自信があります」
「何だその自信は」
ふっと笑われた。
「今笑いました…?」
「何を言ってるんだ?笑うわけないだろ」
ハイセン団長はすくっと立つと。ご馳走になったと言ってテントから出て行った。
「素直じゃないな…」
ふっと俺は笑うとまた治療に向かった。
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