13 / 43
12
しおりを挟む
約二時間の上映が終わり、二人は映画館の外に出てきていた。宗祇の隣には涙の跡を付けながら興奮気味に感想を語る那由の姿。
「途中どうなるかって思ってたんやけど、ハッピーエンドで良かったね! 最後まで見てやっと繋がったとことか分かったとこもあったけん、もう一回観たらもっと面白いかも! やっぱあと二回は観たいなー。もう私の一番好きな映画になった! 帰ったらネットにレビュー書く!」
携帯電話を取り出して映画情報サイトを開きながら那由は嬉しそうに言っていた。宗祇も那由と同様に映画を見たことに満足したのか、那由が言う感想にうんうんと何度も頷きながら耳を傾けている。そしてひと通り那由の感想を聞き終わると、少し腰を屈めて那由と同じ視線の高さに合わせると嬉しそうに笑った。
「それは良かった。もし劇場で観てなかったら後悔してたかもしれないね」
「うん! 絶対後悔してた! 私後悔だけはしないって決めてるからおススメしてくれてありがと」
「後悔せずに生きるってずっと言ってたもんね」
「ん? 宗祇さんにそんなこと言ったっけ?」
「守護霊舐めるなよ」
にこっと笑って親指を立てた宗祇。那由は宗祇のその楽しそうな笑顔を見て釣られるようにして笑った。
「さすが私のストーカー」
「おい那由。その言い方酷くないか?」
「きゃははは」
那由が大きな声を上げて笑っていると、横を通り過ぎた一組の男女が驚いたように振り返る。そこでちょうど那由とその二人の目が合った。宗祇の姿は那由にしか見えておらず、はたから見ると那由は一人で笑っているおかしな人物でしかない。だからかすれ違った二人は心配そうに声をかけたのだった。声をかけた二人は眉をひそめ、声をかけられた那由はバツの悪そうな表情で固まっている。
「な、那由? どしたん? 大丈夫?」
そうやって心配そうに声をかけたのは那由の友人である沙知だった。その隣には何と声をかけたら良いのか悩むようにして立つ勝也の姿。一方の那由は大声で独り言を言っていたと思われたと感じているのか、恥ずかしげに目を泳がせて言い訳を考えていた。身振り手振りであの、あの、と言いながらパニックを起こしている。
「那由、さっきまで電話で話してたってことにしといたら? ほら、ちょうど手に携帯持ってるし」
見かねた宗祇が助け舟を出す。はっと今気付いたかのように携帯電話を二人に見せると、那由は慌てて言った。
「電話! 電話してたの!」
しかし沙知と勝也は全く信じていないのか、二人そろって那由の肩に手を乗せて言った。
「「辛いことがあるならいつでも聞くけん」」
「ち、違うって!」
二人の腕も振り払う那由とその様子を見て笑う三人。
「冗談は置いといて、那由は何しよん? ひとりで映画?」
話を切り替えてそう言ったのは沙知だった。あまり深く追求するのも可哀想だとでも思ったのだろうか。その顔はいつもの人懐っこい笑顔だった。
「あ! そうそう! 今観たとこなんやけど、これ! この映画むっちゃ良かったけん二人も観て!」
ポスターを指さして飛び跳ねる那由に釣られて沙知が近付いて映画の内容を確認する。
「あれ? 那由ってこういうの観る人やっけ? ちょい意外」
「私も意外やったけどおススメされて観たらむっちゃハマったんよ! やけん二人も……。そういや二人はなんで一緒におるん?」
唐突に湧いてきた疑問を口に出す那由。それに対して二人は何かを誤魔化すかのようにアイコンタクトを取っていた。そして、勝也はゆっくりと那由に答える。
「今週から中間やけん勉強教えてもらうつもりやったんよ。午前中は二人とも部活やったけん、今合流したとこ」
「そうそう。そしたらなんか一人で笑う那由っぽいのがおったけん捕まえたんよ」
「ひとをUMAみたいな言い方せんとって」
「未確認生命体おっぱい女ね」
両手をワキワキと動かして沙知は口元を緩ませた。
「合法ロリが何を妬んでるんだかねー」
「まだまだ違法なJKですー」
中身のない冗談や下ネタを言い合って笑う二人を見ていた勝也は気まずそうに視線を逸らしながらも話に割って入った。
「はあ……お前らはホントに……。まあいい、せっかくやし那由も一緒に勉強するか? テストヤバいやろ?」
「私は赤点さえ取らんかったら良いけん余裕よ」
「那由……勉強しよっか」
ぐっと親指を立てる那由に沙知は遠い目を向けて諭すように言う。しかし那由はちらりと宗祇の方を見てから答えに詰まった。宗祇はそんな那由の目の前にまで移動すると、腕を組んで冷たい微笑みを湛えたまま言う。
「那由。勉強しなさい」
「……はい」
そうして那由は二人に連行される形でカフェに向かったのだった。
「途中どうなるかって思ってたんやけど、ハッピーエンドで良かったね! 最後まで見てやっと繋がったとことか分かったとこもあったけん、もう一回観たらもっと面白いかも! やっぱあと二回は観たいなー。もう私の一番好きな映画になった! 帰ったらネットにレビュー書く!」
携帯電話を取り出して映画情報サイトを開きながら那由は嬉しそうに言っていた。宗祇も那由と同様に映画を見たことに満足したのか、那由が言う感想にうんうんと何度も頷きながら耳を傾けている。そしてひと通り那由の感想を聞き終わると、少し腰を屈めて那由と同じ視線の高さに合わせると嬉しそうに笑った。
「それは良かった。もし劇場で観てなかったら後悔してたかもしれないね」
「うん! 絶対後悔してた! 私後悔だけはしないって決めてるからおススメしてくれてありがと」
「後悔せずに生きるってずっと言ってたもんね」
「ん? 宗祇さんにそんなこと言ったっけ?」
「守護霊舐めるなよ」
にこっと笑って親指を立てた宗祇。那由は宗祇のその楽しそうな笑顔を見て釣られるようにして笑った。
「さすが私のストーカー」
「おい那由。その言い方酷くないか?」
「きゃははは」
那由が大きな声を上げて笑っていると、横を通り過ぎた一組の男女が驚いたように振り返る。そこでちょうど那由とその二人の目が合った。宗祇の姿は那由にしか見えておらず、はたから見ると那由は一人で笑っているおかしな人物でしかない。だからかすれ違った二人は心配そうに声をかけたのだった。声をかけた二人は眉をひそめ、声をかけられた那由はバツの悪そうな表情で固まっている。
「な、那由? どしたん? 大丈夫?」
そうやって心配そうに声をかけたのは那由の友人である沙知だった。その隣には何と声をかけたら良いのか悩むようにして立つ勝也の姿。一方の那由は大声で独り言を言っていたと思われたと感じているのか、恥ずかしげに目を泳がせて言い訳を考えていた。身振り手振りであの、あの、と言いながらパニックを起こしている。
「那由、さっきまで電話で話してたってことにしといたら? ほら、ちょうど手に携帯持ってるし」
見かねた宗祇が助け舟を出す。はっと今気付いたかのように携帯電話を二人に見せると、那由は慌てて言った。
「電話! 電話してたの!」
しかし沙知と勝也は全く信じていないのか、二人そろって那由の肩に手を乗せて言った。
「「辛いことがあるならいつでも聞くけん」」
「ち、違うって!」
二人の腕も振り払う那由とその様子を見て笑う三人。
「冗談は置いといて、那由は何しよん? ひとりで映画?」
話を切り替えてそう言ったのは沙知だった。あまり深く追求するのも可哀想だとでも思ったのだろうか。その顔はいつもの人懐っこい笑顔だった。
「あ! そうそう! 今観たとこなんやけど、これ! この映画むっちゃ良かったけん二人も観て!」
ポスターを指さして飛び跳ねる那由に釣られて沙知が近付いて映画の内容を確認する。
「あれ? 那由ってこういうの観る人やっけ? ちょい意外」
「私も意外やったけどおススメされて観たらむっちゃハマったんよ! やけん二人も……。そういや二人はなんで一緒におるん?」
唐突に湧いてきた疑問を口に出す那由。それに対して二人は何かを誤魔化すかのようにアイコンタクトを取っていた。そして、勝也はゆっくりと那由に答える。
「今週から中間やけん勉強教えてもらうつもりやったんよ。午前中は二人とも部活やったけん、今合流したとこ」
「そうそう。そしたらなんか一人で笑う那由っぽいのがおったけん捕まえたんよ」
「ひとをUMAみたいな言い方せんとって」
「未確認生命体おっぱい女ね」
両手をワキワキと動かして沙知は口元を緩ませた。
「合法ロリが何を妬んでるんだかねー」
「まだまだ違法なJKですー」
中身のない冗談や下ネタを言い合って笑う二人を見ていた勝也は気まずそうに視線を逸らしながらも話に割って入った。
「はあ……お前らはホントに……。まあいい、せっかくやし那由も一緒に勉強するか? テストヤバいやろ?」
「私は赤点さえ取らんかったら良いけん余裕よ」
「那由……勉強しよっか」
ぐっと親指を立てる那由に沙知は遠い目を向けて諭すように言う。しかし那由はちらりと宗祇の方を見てから答えに詰まった。宗祇はそんな那由の目の前にまで移動すると、腕を組んで冷たい微笑みを湛えたまま言う。
「那由。勉強しなさい」
「……はい」
そうして那由は二人に連行される形でカフェに向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる