面倒くさがりの奮闘記〜面倒だけど、可愛い子のために頑張ります〜

棘花翡翠

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その後 父視点

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僕は呆然としてあの子が乗った馬車を見送った。

罪悪感が押し寄せてきて、夢だろうかと思い始めるが、擦れる金貨の重み、音で我に返る。

僕の手には、あの子が残していった5枚の金貨が握られていた。

あの子、レミスは最後にこう言っていた。『そのお金はティアのために使ってね』
レミスの、最初で最後のお願い。最初で最後の我儘。

なんでティアのために?他にも色んな疑問が湧き上がってくるが、今は深く考えられない。

僕達はふらついた足取りで家へ帰った。





あれから数日後、ティアが戸惑ったような顔で僕達をチラチラと見てきた。

「ティア、どうしたんだい?何か、あったのかい?」

優しく聞くと、ティアは意を決したように頷くと、僕の方を向いた。

「おとーさん、あのね…私の、おねーちゃんはどこ?」

予想外の言葉に答えることが出来なかった。しかし妻は、怒鳴り出した。

「あなたに姉なんていないわ!今すぐそんな事を言うのをやめなさい!」

ティアはビクリと肩を跳ねさせ、俯く。

「ご、ごめん、なさい…。ひっく、もお、おね、ちゃんなんて、ひっ、これからいいま、せん。だ、だから…教えて、ください」

ティアが泣きながらもそう言った。

「ふんっあんなのは元からいなかったわ!」


「どおし、て、うっ、そんな事言、うんで、すか。私は、やくそくを、や、やぶって、会ってました…。ごめんなさい!…だ、からぁ、おしえて、おじえで、くだざぃ…うぇぇん」

ティアは大声を上げながら泣き出してしまった。

僕はここで違和感に気づく。
ティアはなぜ商人や貴族のような言葉使いができるのだろうか。

「ティア、いつそんな言葉使いを覚えたんだい?」

「うぅ、ゆ、言ったら、おし、えて、うぅ、くれる?」

「うん、約束するよ」

「う、ひっく。お、おね…ひっく、れみすから、教えて、もらった、ひっく」

しゃくり上げながらも教えてくれた。

「そうか、そうだったのか…。分かった。全て話そう」

「はあ!?何言ってるのよ!あんなのは元からいなかったの!!」

「お前はまだそんなことを言っているのか!あの子が、レミスが何をしてくれたのか忘れたのか!この子のためにお金を渡し、この子に丁寧な言葉使いまで教えてくれたんだぞ!
レミスが言った通りお前はクズだな!人の心がない。レミスは親からの愛情を向けられていなかったのに、自分の妹には嫉妬もせず、愛情を注いでくれた」

「何よ!自分の妹なんだから当たり前じゃない!」

「子に愛情を注ぐという当たり前の事をしなかったお前は母親失格だ!」

「っ、なら、アンタも父親失格よ!!」

「その通りだ」

「…っ。もう、離婚よ離婚!」

「望むところだ」

「ティア、行くわよ!!」

「…私、おとーさんといる。おねーちゃんのお話聞きたいもん」

「…もういいわ!」

妻は家を飛び出していった。

「ごめんな、ティア。大声なんか出して…。おねーちゃんの話をする前に、おねーちゃんとどんな事をしたか教えてくれるか?」

そう問いかけると、ティアは嬉しそうに笑った。

「うん!あのね、あのね!!」

ティアは嬉しそうに教えてくれた。
レミスが文字を教えてくれた事。絵本を読んでくれた事。おままごとで計算を教えてくれた事。言葉使いの事。
そして、レミスはとても美人で物知りな事も教えてくれた。

それはもう、嬉しそうに。ティアは、レミスの事が大好きだったのだろう。

だから、自分がした事を、言うのが辛くなった。

「ティア、ごめん、ごめんなぁ…!」

僕は泣きながらあの日の事を話す。まだ5歳の子に話す内容ではないが、隠す事は出来なかった。

「…え?売った?なんで、だって人は売れないよ?おねーちゃんがそれはわるいことって言ってたもん。お金がないとか、どうしてもって理由がないと、ダメだって。


…もう、会えないの?
なんで…。いや、いやだよ!

もっと、もっと遊んでよおねーちゃん!いやだ!だって、みんなにじまんしたいもん!

おねーちゃん!!」

ティアはその後、泣き疲れて眠るまで泣き続けた。

「…ごめんな、レミス。お前は、たくさんのものを与えてくれたのに、僕達は何も与えてあげられなかった…。
だが必ず、必ず、きちんと育てるから!
これから、償っていくから…!

だから、どうか許しておくれ…」




それからしばらく、この家庭で笑顔を見ることはなかった。




  
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