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冬の国
冬の国でアイスクリームを作ろう。
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”夏の国”と”冬の国”の住民は、元々は同じ国の住民だったのが、何らかの理由で分かれたものらしい。
へー、それで国の言い方とか、人種の感じが同じなんだー。
……じゃなくて。
「”伴侶になる者”って。どういうことだよ!? 俺に何の相談もなく勝手に決めるなよ!」
『どうもこうも。今までの話を総合したら、そうなるだろ』
ザラームは僕の文句を聞き流し。
コートを脱いで、ぽーんと放った。
それを兵士っぽい人がキャッチして、去っていく。
王様、何やってんの?
◆◇◆
『まず”夏の国”へ行って、印をつけられて子供作って。”春の国”へ行って、また印をつけられて子供作ったんだろ? で、この”冬の国”へ来たわけだ。俺があんたに印つけて、俺と愛し合って子供を作れば、また次へ行くんじゃねえの?』
いやいや、ちょっと待て。他人事みたいに言うなよ。
俺だけじゃなく、自分のことでもあるんだよな?
「いや、”夏の国”で子供が出来てたかは、知らないんだけど……」
この世界の子作りって、いまいち自覚がないのが困る。
俺は子供の姿を見てないんだし。
シグルズには、実際会ったから。子供が出来てたんだってわかったけど。
『出来てたと思うぜ? 多分、それが”鍵”なんじゃねえかな。場所移動の。次は更に未来の”秋の国”だろうな』
とか言ってるけど。
「愛し合ったら即移動とか、神様外道過ぎない!?」
『んー、神の考えなんか知らねえけど。”春の国”はそれでいい風に変化したんだから、”夏の国”もそうだったんじゃね? 頼む! うちにも繁栄をもたらしてください!』
俺に拝まれてもな。
「……愛がないと授からないの、知ってるよな?」
そんなすぐハイ次、みたいに言われて、ホイホイ好きになるわけないっての。
ウルジュワーンは、初めて俺が好きになった人で。
ラグナルは真剣だったし。二人とも、俺に対して愛があったのはわかったけど。
ザラームからは、俺に対して愛があるようには見えない……。
ザラームは真顔で。
『大丈夫、もうとっくに愛してる』
嘘くせえ!!!!
『だってさー、あの、赤の発明王が生涯かけて愛した后妃だぜ? 超燃える! 愛さずにはいられないっての!』
曇りなき眼で言い切った。
それは。
俺でなく、ラグナルへの愛なのでは?
◆◇◆
そもそも国王が、何で犬ぞりで青春一人旅してたのかを聞いてみたら。
お忍び視察で、国を見て回っていたらしい。
自分の目で、国内の状況を見るのも王の務めのうちだと。
憧れのラグナルに倣ってみたと言う。
ラグナルと同じ目をした、オオカミ犬、ダーフィを連れて。
”愛に生きた我が人生”というラグナルの自伝が出てて、それを精読してるんだそうだ。
なにそれちょっと読んでみたいんだけど!
『そしたら、俺のとこに后妃の印を持ったイチが来るとかさー。運命感じるだろ? もー超運命的な出会いすぎね?』
「……お、おう……」
そうだね。
ほんとにラグナルが大好きなんだね。
……早く次行きたい。
愛して子を授からない限り、次には行けないようだけど。
愛せる要素を、今のところ見つけられないのが問題だ。いや、寒さに凍えてたとこ拾ってくれたのは、感謝してるけどさ。
考えてみれば。ラグナルの俺への愛が、巡り巡って未来の俺を助けてくれたって感じ?
まあいいか。
俺は俺に出来ることをするまでだ。
「とりあえず、”冬の国”の現状を教えてくれるか?」
『おう。人口、徐々に減少中。国土のほとんどが雪に埋もれ、畜産も農業もうまくいかない。地下資源である石油や天然ガスを売って凌いでいるが、そう長くはもたない状況』
……それは。
かなりやばい状況なのでは。
「あのさあ。ヴォルンドルが、望み通りの報酬をくれるって言ってたよな? 何で援助求めなかったの?」
『俺は人として当然のことをしただけで、報酬をもらえるようなことはしてねえ。見返りが欲しくてあんたを連れてったわけじゃない』
きっぱりと言った。
そうだよな。
単純に、ラグナルの遺言が聞きたかったんだよな。
くっ。男らしい潔さにちょっと惚れそう。
でも、財政が厳しい国の国王としては駄目だろそれ。
そこは自覚して欲しい。
「民のために、そこはあえて見返りを求めるのが、王としての正しい姿だと俺は思う」
ザラームは、目に見えてしょんぼりしてしまった。
「まあでも、しょうがないな。俺が今、ここにいる理由が、この国を立て直すことなら。俺にできることがあれば、協力するよ」
せっかく子や孫もいることだし。
あっちにも協力を要請しよう。俺から頼むならいいだろう。
「じゃ、まずは氷菓子を作って、他国に売りつけようか!」
◆◇◆
冷蔵庫は、ラグナルが開発したのがだいぶ普及してきているらしい。
”冬の国”にもあった。外よりは寒くないから、凍らせないで食べ物を保存できて助かると言ってた。逆転の発想……。
”夏の国”にも、売れてるだろうな。
いい? 一時的に爆売れしても、簡単に機械を増やしちゃダメだよ。……え、売れるときに売れ?
祖母ちゃんから聞いた、昔の話なんだけどさ。
日本でナタデココブームがあった時。……ああ、ナタデココって名前の食べ物があるんだよ。外国のマイナーなデザートだったんだけど。
それは、元々小さな工場で作ってて。発注が多すぎたから工場を増やして、借金して、高い機械をいくつも買って。
さあたくさん作るぞ、って大量生産の体制が整った時にブームが終わっちゃった。
飽きたら、誰も買わなくなるわけで。
どうなると思う?
そう。
結局、莫大な借金だけが残ったんだって。ひどい話だよね。
そうそう。商売って怖いんだよ。……小豆相場で損したって人の話もあるけど聞く?
あ、そう。怖いから聞きたくない?
んじゃ、手堅く行こうな。
クオリティは、下げちゃいけない。
材料費ケチって安いもの使うと、舌の肥えた客は二度と戻ってこないよ。味が落ちたとの噂で客足が減って、潰れた店もある。
安売りもしない。
一度下げちゃうと、下がった値段が基準になって、正値では売れなくなるって、総菜屋の爺ちゃんが愚痴ってた。
一日限定何個、とかで売るのもいいね。
一日これ以上作るのは無理ですって、希少価値上げるの。美味しいものなら、何ヶ月、年単位だって待って、お取り寄せする客はいるもんだよ。
あと、年間契約とかしてくれた上顧客には、サービスしてもうひと箱とか。
パンケーキにのせたり、果物と混ぜて食べたりフレーバー変えたりとか。
氷菓子の色々な食べ方を提示して、飽きさせないこと。
え? 俺がすごいんじゃないよ? みんな、爺ちゃん婆ちゃんに聞いたことだし。
先人の教えって大切だよな。
へー、それで国の言い方とか、人種の感じが同じなんだー。
……じゃなくて。
「”伴侶になる者”って。どういうことだよ!? 俺に何の相談もなく勝手に決めるなよ!」
『どうもこうも。今までの話を総合したら、そうなるだろ』
ザラームは僕の文句を聞き流し。
コートを脱いで、ぽーんと放った。
それを兵士っぽい人がキャッチして、去っていく。
王様、何やってんの?
◆◇◆
『まず”夏の国”へ行って、印をつけられて子供作って。”春の国”へ行って、また印をつけられて子供作ったんだろ? で、この”冬の国”へ来たわけだ。俺があんたに印つけて、俺と愛し合って子供を作れば、また次へ行くんじゃねえの?』
いやいや、ちょっと待て。他人事みたいに言うなよ。
俺だけじゃなく、自分のことでもあるんだよな?
「いや、”夏の国”で子供が出来てたかは、知らないんだけど……」
この世界の子作りって、いまいち自覚がないのが困る。
俺は子供の姿を見てないんだし。
シグルズには、実際会ったから。子供が出来てたんだってわかったけど。
『出来てたと思うぜ? 多分、それが”鍵”なんじゃねえかな。場所移動の。次は更に未来の”秋の国”だろうな』
とか言ってるけど。
「愛し合ったら即移動とか、神様外道過ぎない!?」
『んー、神の考えなんか知らねえけど。”春の国”はそれでいい風に変化したんだから、”夏の国”もそうだったんじゃね? 頼む! うちにも繁栄をもたらしてください!』
俺に拝まれてもな。
「……愛がないと授からないの、知ってるよな?」
そんなすぐハイ次、みたいに言われて、ホイホイ好きになるわけないっての。
ウルジュワーンは、初めて俺が好きになった人で。
ラグナルは真剣だったし。二人とも、俺に対して愛があったのはわかったけど。
ザラームからは、俺に対して愛があるようには見えない……。
ザラームは真顔で。
『大丈夫、もうとっくに愛してる』
嘘くせえ!!!!
『だってさー、あの、赤の発明王が生涯かけて愛した后妃だぜ? 超燃える! 愛さずにはいられないっての!』
曇りなき眼で言い切った。
それは。
俺でなく、ラグナルへの愛なのでは?
◆◇◆
そもそも国王が、何で犬ぞりで青春一人旅してたのかを聞いてみたら。
お忍び視察で、国を見て回っていたらしい。
自分の目で、国内の状況を見るのも王の務めのうちだと。
憧れのラグナルに倣ってみたと言う。
ラグナルと同じ目をした、オオカミ犬、ダーフィを連れて。
”愛に生きた我が人生”というラグナルの自伝が出てて、それを精読してるんだそうだ。
なにそれちょっと読んでみたいんだけど!
『そしたら、俺のとこに后妃の印を持ったイチが来るとかさー。運命感じるだろ? もー超運命的な出会いすぎね?』
「……お、おう……」
そうだね。
ほんとにラグナルが大好きなんだね。
……早く次行きたい。
愛して子を授からない限り、次には行けないようだけど。
愛せる要素を、今のところ見つけられないのが問題だ。いや、寒さに凍えてたとこ拾ってくれたのは、感謝してるけどさ。
考えてみれば。ラグナルの俺への愛が、巡り巡って未来の俺を助けてくれたって感じ?
まあいいか。
俺は俺に出来ることをするまでだ。
「とりあえず、”冬の国”の現状を教えてくれるか?」
『おう。人口、徐々に減少中。国土のほとんどが雪に埋もれ、畜産も農業もうまくいかない。地下資源である石油や天然ガスを売って凌いでいるが、そう長くはもたない状況』
……それは。
かなりやばい状況なのでは。
「あのさあ。ヴォルンドルが、望み通りの報酬をくれるって言ってたよな? 何で援助求めなかったの?」
『俺は人として当然のことをしただけで、報酬をもらえるようなことはしてねえ。見返りが欲しくてあんたを連れてったわけじゃない』
きっぱりと言った。
そうだよな。
単純に、ラグナルの遺言が聞きたかったんだよな。
くっ。男らしい潔さにちょっと惚れそう。
でも、財政が厳しい国の国王としては駄目だろそれ。
そこは自覚して欲しい。
「民のために、そこはあえて見返りを求めるのが、王としての正しい姿だと俺は思う」
ザラームは、目に見えてしょんぼりしてしまった。
「まあでも、しょうがないな。俺が今、ここにいる理由が、この国を立て直すことなら。俺にできることがあれば、協力するよ」
せっかく子や孫もいることだし。
あっちにも協力を要請しよう。俺から頼むならいいだろう。
「じゃ、まずは氷菓子を作って、他国に売りつけようか!」
◆◇◆
冷蔵庫は、ラグナルが開発したのがだいぶ普及してきているらしい。
”冬の国”にもあった。外よりは寒くないから、凍らせないで食べ物を保存できて助かると言ってた。逆転の発想……。
”夏の国”にも、売れてるだろうな。
いい? 一時的に爆売れしても、簡単に機械を増やしちゃダメだよ。……え、売れるときに売れ?
祖母ちゃんから聞いた、昔の話なんだけどさ。
日本でナタデココブームがあった時。……ああ、ナタデココって名前の食べ物があるんだよ。外国のマイナーなデザートだったんだけど。
それは、元々小さな工場で作ってて。発注が多すぎたから工場を増やして、借金して、高い機械をいくつも買って。
さあたくさん作るぞ、って大量生産の体制が整った時にブームが終わっちゃった。
飽きたら、誰も買わなくなるわけで。
どうなると思う?
そう。
結局、莫大な借金だけが残ったんだって。ひどい話だよね。
そうそう。商売って怖いんだよ。……小豆相場で損したって人の話もあるけど聞く?
あ、そう。怖いから聞きたくない?
んじゃ、手堅く行こうな。
クオリティは、下げちゃいけない。
材料費ケチって安いもの使うと、舌の肥えた客は二度と戻ってこないよ。味が落ちたとの噂で客足が減って、潰れた店もある。
安売りもしない。
一度下げちゃうと、下がった値段が基準になって、正値では売れなくなるって、総菜屋の爺ちゃんが愚痴ってた。
一日限定何個、とかで売るのもいいね。
一日これ以上作るのは無理ですって、希少価値上げるの。美味しいものなら、何ヶ月、年単位だって待って、お取り寄せする客はいるもんだよ。
あと、年間契約とかしてくれた上顧客には、サービスしてもうひと箱とか。
パンケーキにのせたり、果物と混ぜて食べたりフレーバー変えたりとか。
氷菓子の色々な食べ方を提示して、飽きさせないこと。
え? 俺がすごいんじゃないよ? みんな、爺ちゃん婆ちゃんに聞いたことだし。
先人の教えって大切だよな。
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