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秋の国

白の王の覚悟と愛

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どうやら俺はとんでもない存在に、力の使い方を教えてしまったようだ。


とりあえず国民の声を聞いてみよう、と投書箱を作ってみたところ。
国内から、色々な要望・不満が上がった。

逃げた馬が見つからない、という人の馬を見つけ出して戻してやり。
道が荒れて馬車が揺れる、という地域の道を、全て綺麗に整備して。
岩や木の根が多くて開墾できない、という土地を掘り返してみせて。
大雨で水害が起こる地域には、水門や堤防を作って。
水不足で枯れた土地には井戸を掘りあて、雨を降らせた。

国民からは、もはや神扱いで。
信仰に近い、すごい支持をされてる。


実際、とんでもない能力だった。
その気になれば、世界を支配できるほどの力だろう。


◆◇◆


ソファーで投書の選別をしていたら。ルークが隣に腰を下ろした。

『民からいくら褒められようが、嬉しくもなんともない。イチ、褒めて?』
甘えてくるので。
よしよしと頭を撫でてやる。

「すごいよルーク。あっという間に問題解決しちゃったな!」

ほんとにすごい。
気象まで操るとか。どうやってんだろ。


『……そこで、本気で褒めてくれるから、イチはかわいいんだよね』
ルークは肩を竦めた。

自分が褒めろって言ったくせに!
あと、年下のくせに、かわいい言うな。


『大人なら、ご褒美にいいことしてくれないと』
と。
押し倒されてしまう。

「いいことって、何だよ……」

三つも年下なのに、俺よりも背が高くて体格がいいとか。
ムカつく。


『わからないの?』
と、お尻を撫でられて。やたらエロい流し目を送られる。


えっ。
まさか。ご褒美に、エッチなことしろってこと?

無理! そんな高等技術、俺には無理!


『イチは、何度抱いても、慣れないよね……』
くすくす笑っている。


こんなこと。慣れてたまるか。


◆◇◆


『どうしよう。抱くたびに、愛おしくなる。……ねえ、どうしたらいい?』

知らないよ。
俺に聞かれても困る。


揺さぶられて。突き上げられて。
中に欲望を吐き出されて。

毎回、白く染められてしまう。
手や胸、耳の印を全て。

次の日には、戻ってしまうのに。


「……んっ、」
ルークは今日も白く染めた胸の印に、満足そうに舌を這わせている。

足首や手首に鈴をつけたがるのは、ここの国の人、みんなそうなのかね?
わざと音が鳴るように、揺すってるようだし。


『イチの全身に、わたしのものだとひと目でわかるような印をつけたいな』
愛おしそうに、キスをされて。

あちこちにキスマークをつけられる。


いくら俺がかわいく見えてるといっても、かなり異常だと思う。
何でここまで、想われているんだろう。

兄に取られて悔しかったにしても、もう、取り返したわけだし。
ここまで執着される意味がわからない。

美人には三日で飽きるっていうけど。
……いや、超絶美形はいつまで経っても慣れる気がしないな。そういうもんか。

何なんだよ、俺。”印持ち”を惹きつけるフェロモンでも出てんのか?


……まあでも、俺がついている限り、ルークは力をおかしな風には使わないというなら。
ずっと、ついていないといけないよな。

それには。


ルークを、愛してはいけないんだ。


◆◇◆


『イチ、栗と芋が豊作だと、こんなに献上されたよ』

王様のおかげで助かりました、と。
農家から、たくさんの献上品が贈られてきた。

こういうことは、初めてらしい。

この国は一年中、秋の気候らしいけど。
農業は普通にやってるし。どうなってるんだろう。

……細かいことは考えてもしょうがないか。異世界だもんな。


「わーい栗きんとん作ろう、栗きんとん」
正月に、祖母ちゃんと一緒に作るの楽しみにしてたんだよな。

『?』
ルークは首を傾げた。

「簡単だよ。栗を甘露煮にして、サツマイモをふかして漉して、火を加えながら甘露煮の汁を混ぜて味付けを整えて、栗をぶちこんで冷まして終わり」
色を綺麗に見せるにはクチナシが必要なんだけど。無いので素材の色で。

『???』
わかんないか。
じゃあ、作って見せたほうが早いよね。


栗きんとんを作ったら。マロングラッセより美味しいといわれた。
まあそれぞれ、好みだよね。

それにしても、美味しくできたな。栗きんとん。材料がいいからかも。
王への献上品だし、最高品質のものだろう。


これ、祖母ちゃんにも食べさせてあげたいな。

……祖母ちゃん、元気かなあ。
今、俺は過去にいることになるのかな?

向こうでは、時間が経ってないとかだといいけど。そうじゃなかったら。
ずいぶん心配させてると思う。


◆◇◆


『ど、どうしたの、イチ。泣かないで?』

ルークがあわてて寄って来た。
泣いてたようだ。

「あ、悪い。祖母ちゃんのこと思い出しちゃって。よく一緒に作ったんだよ、これ」


ある日突然、異世界に送られたってことを話した。
お祖母ちゃんっ子だったおかげか、教わったことが、こっちで色々役に立ったとか。

『そうか。色々あったんだ。大変だったんだね』
ハンカチで、頬を拭われる。

ルークは悲しげに、目を伏せて。
『……ごめんね。わたしには、イチを元の世界に帰してあげる力はないようだ』

「ルークが謝ることないよ」
だってそれは、ルークのせいじゃないし。


『でも、イチが望むことなら、何でも叶えてやりたいから』
手を、ぎゅっと握られる。
あたたかい手だ。


そうだ。
ルークは宣言通り、何でも、お願いを叶えてくれたよな。

印の力を人のためにしか使わないし。駄目だっていうことは素直にきいてくれた。


「その気持ちだけでも、嬉しいよ」
優しいな。

好きになっちゃいそうだよ。駄目なのに。


『わたしは、イチが望むような立派な王になるよ。だから』
額に、キスをされる。

『子を、授けてもらいたい』
「え?」


◆◇◆


俺の話を聞いて。ずいぶん考えたという。
いつまでも、自分に縛り付けるのはかわいそうだと。

ルークは、俺を手放す覚悟を決めたらしい。

愛を知って。
自分は変われたのだという。


『イチを愛しているから。……約束するよ。この力はこれからも、人のために使うと』
ルーク。

最後だから、自分をしっかり刻み付けておきたい、と言って。
情熱的に、抱かれた。


鈴の音は、愛のあかしなのだと教えられた。
音を響かせただけ、相手を愛していると、伝えるためだと。


確かに、激しくて深い、愛情を感じた。
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