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ネイディーンへ
意志の疎通
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二人はなにやら真剣に相談をしているようだ。
色違いでお揃いの衣装といい、仲が良さそうだ。友達同士だろうか?
海瑠は首を傾げて二人を見守ってみた。
じゃんけんのような勝負で何かを決めた様子で。
黒いほう、クリシュナが勝ったらしい。
白いほう、オーランドは見るからにがっくりしている。
『***、***』
クリシュナに肩を掴まれて、向かい合うかたちになる。
少々表情の乏しい、人形のような美しい顔が間近に迫り、海瑠はドキドキしてしまった。
綺麗な人というのは、男女の区別なく全てを魅了するものである。
「………………!?」
クリシュナの唇が触れ。
舌先が侵入してきたのであった。
一応、役者なので。女とも男とも、演技でキスをしたことはあったのだが。
ファーストキスではなかったものの。
舌まで入るキスは、それほど経験がなかったのである。
◆◇◆
「て、てめえ! 何しやがる!?」
思わずクリシュナの胸板を押し、突き飛ばすと。
いつの間にか現れた騎士風の男が二人、剣を抜き、首許へ突きつけて来た。
突然浴びせられた殺気に、びくっとしたが。
『よせ、ナイジェル、リッター。この方にとって、不埒な行いをした私が悪いのだ』
クリシュナが二人を止めた。
『はっ、』
白い鎧の騎士は大人しく下がった。
『しかし、王子』
『ナイジェル、』
クリシュナに睨まれて渋々下がった、黒い鎧の騎士はナイジェルというらしい。
では、白い騎士がリッターか、と納得する。
『花のような唇を奪った無礼をお詫び申し上げる。こちらの言葉が理解できる魔法をかけるのに必要であったゆえ』
クリシュナは跪いて海瑠の手を取り、謝罪した。
魔法とは? と首を傾げたが。
実際に言葉が通じるようになったので。
「そうだったんだ。ありがとな」
まあいいか、と思い、海瑠は素直にお礼を言った。
海瑠はこの年齢で天真爛漫、と言えば聞こえはいいが。かなり単純な性格であった。
◆◇◆
『改めて自己紹介をしよう。私は黒きもの。希望の国の第一王子だ』
『私は輝く太陽。同じくネイディーンの第二王子です』
聞いたことない国だが。本物の王子のようだ。
騎士からも王子と呼ばれていた。
「水無月海瑠。一応、役者デス……」
思わず声が小さくなってしまう海瑠だった。
じゃんけんのようなものは、やはりじゃんけんだったようだ。ハサミと石つぶてと紙。
こういう遊びは全世界共通なのだろうな、と海瑠は思った。
「で、さっきおれに、何て言ってたんだ? マルか、とかなんとか」
『是非、我々の女王になってほしい、とお願い申し上げた』
クリシュナは真顔で。
『共に城に来て、私たちの女王になってください』
オーランドは輝くような笑顔で言った。
……女王に、なってください?
空耳でもなんでもなく。確かにそう言った。
SM的な意味で?
「女王って……おれ、男なんだけど……?」
そう言うが。
海瑠の繊細な白く細い指先。白い肌。華奢な肢体も、少女めいた愛らしい顔立ちも、まさしく美少女そのものであった。
男らしさの要素がカケラも見当たらなかった。
◆◇◆
王子二人は、上から下まで海瑠の姿を見て。
『ははは、またまたご冗談を』
「男だってば、ほら」
海瑠は笑うオーランドの手を握り、股間へ導いた。
『え、そんな、大胆な……! ええっ!? ……おお、ささやかながらも、これは、』
もにもにもに。
もにもにもに。
もにもにもに。
オーランドは驚くどころか、その感触を明らかに楽しんでいた。
テクニカルな指先で。
「はう、……ちょ、おま、大胆なのはおまえだろ! 揉むな! あやうくイっちゃいそうになっちゃっただろ!」
海瑠は股間を押さえて涙目だった。ささやかとか言われたし。
クリシュナは、それを羨ましそうに見ている。
『ええ、確かに男性でした。しかしまあ、これなら男でも構わないんじゃないかな、この際。ねえ兄上?』
と、オーランドは兄のほうを見た。
『ああ、異世界人なのは間違いない。バレなければ問題なかろう』
クリシュナは頷いた。
「兄弟だったのか……」
全く似てないどころか、人種も違うように見えるのに。
そういえば第一王子と第二王子、とか言っていたような気がする、と海瑠は首を傾げた。
『とにかく、私たちと一緒に城へ来てもらえませんか?』
オーランドが手を差し出した。
「……断ったりしたら?」
王子の背後で、騎士二人が剣を構えていた。
OK、命があぶない。
よくわからないが、せっかく転落死を免れて助かった命である。こんなかたちで失いたくはない。
海瑠は泣く泣く、王子たちに着いて行くことになった。
◆◇◆
それにしても、ここはどこなんだろう……外国だろうか?
再びのじゃんけんの末、またも勝利を収めたクリシュナの腕の中。
馬に揺られながら海瑠は思った。
オーランドは最初にグー……石つぶてを出す癖があるようだ。
それをクリシュナに言うと、内緒、とウインクされた。
そういう表情をすると、案外若いのかもしれない。
じゃんけんで勝負したりしてるし。と思い、年齢を聞いてみたところ。
「じゅ、15歳……だと……!?」
自分の半分しか生きてない小僧のクセに。こんなでかいのか。
海瑠の身体を余裕ですっぽり覆ってしまうほどの体格差。
腕など、自分の太股ほどある。
海瑠は悔しさを噛み締めた。
『カイル姫は……いえ、レディに年齢を訊くなど、失礼でしたね』
隣で優雅に白馬を操っているオーランドが笑顔で言った。
白馬の王子姿が似合いすぎる男であった。
「姫じゃねえ……」
今まで、彼らは実際に女を見たことがないという話なのに。何故、レディに対する態度を知っているのだろうか。
自分はレディではないが。
聞いてみると。昔はいたというが。女神が消してしまったらしい。
女神こわい、と海瑠は震えた。
『しかし、女性がいた頃の書物は残っているので。……貴方は書物で見た、女性そのものです』
「ぜんっぜん褒めてねえっつーの……。ちなみにおれは、30歳だ」
『………………』
『………………』
『………………』
『………………』
王子も騎士も。
四人とも、沈黙している。
『あー。魔族とかは、千歳くらいまで若いまま生きると言いますよねー』
白の騎士リッターが沈黙を破り、笑顔で言った。
「おれは魔族じゃねえ、人間だ!」
色違いでお揃いの衣装といい、仲が良さそうだ。友達同士だろうか?
海瑠は首を傾げて二人を見守ってみた。
じゃんけんのような勝負で何かを決めた様子で。
黒いほう、クリシュナが勝ったらしい。
白いほう、オーランドは見るからにがっくりしている。
『***、***』
クリシュナに肩を掴まれて、向かい合うかたちになる。
少々表情の乏しい、人形のような美しい顔が間近に迫り、海瑠はドキドキしてしまった。
綺麗な人というのは、男女の区別なく全てを魅了するものである。
「………………!?」
クリシュナの唇が触れ。
舌先が侵入してきたのであった。
一応、役者なので。女とも男とも、演技でキスをしたことはあったのだが。
ファーストキスではなかったものの。
舌まで入るキスは、それほど経験がなかったのである。
◆◇◆
「て、てめえ! 何しやがる!?」
思わずクリシュナの胸板を押し、突き飛ばすと。
いつの間にか現れた騎士風の男が二人、剣を抜き、首許へ突きつけて来た。
突然浴びせられた殺気に、びくっとしたが。
『よせ、ナイジェル、リッター。この方にとって、不埒な行いをした私が悪いのだ』
クリシュナが二人を止めた。
『はっ、』
白い鎧の騎士は大人しく下がった。
『しかし、王子』
『ナイジェル、』
クリシュナに睨まれて渋々下がった、黒い鎧の騎士はナイジェルというらしい。
では、白い騎士がリッターか、と納得する。
『花のような唇を奪った無礼をお詫び申し上げる。こちらの言葉が理解できる魔法をかけるのに必要であったゆえ』
クリシュナは跪いて海瑠の手を取り、謝罪した。
魔法とは? と首を傾げたが。
実際に言葉が通じるようになったので。
「そうだったんだ。ありがとな」
まあいいか、と思い、海瑠は素直にお礼を言った。
海瑠はこの年齢で天真爛漫、と言えば聞こえはいいが。かなり単純な性格であった。
◆◇◆
『改めて自己紹介をしよう。私は黒きもの。希望の国の第一王子だ』
『私は輝く太陽。同じくネイディーンの第二王子です』
聞いたことない国だが。本物の王子のようだ。
騎士からも王子と呼ばれていた。
「水無月海瑠。一応、役者デス……」
思わず声が小さくなってしまう海瑠だった。
じゃんけんのようなものは、やはりじゃんけんだったようだ。ハサミと石つぶてと紙。
こういう遊びは全世界共通なのだろうな、と海瑠は思った。
「で、さっきおれに、何て言ってたんだ? マルか、とかなんとか」
『是非、我々の女王になってほしい、とお願い申し上げた』
クリシュナは真顔で。
『共に城に来て、私たちの女王になってください』
オーランドは輝くような笑顔で言った。
……女王に、なってください?
空耳でもなんでもなく。確かにそう言った。
SM的な意味で?
「女王って……おれ、男なんだけど……?」
そう言うが。
海瑠の繊細な白く細い指先。白い肌。華奢な肢体も、少女めいた愛らしい顔立ちも、まさしく美少女そのものであった。
男らしさの要素がカケラも見当たらなかった。
◆◇◆
王子二人は、上から下まで海瑠の姿を見て。
『ははは、またまたご冗談を』
「男だってば、ほら」
海瑠は笑うオーランドの手を握り、股間へ導いた。
『え、そんな、大胆な……! ええっ!? ……おお、ささやかながらも、これは、』
もにもにもに。
もにもにもに。
もにもにもに。
オーランドは驚くどころか、その感触を明らかに楽しんでいた。
テクニカルな指先で。
「はう、……ちょ、おま、大胆なのはおまえだろ! 揉むな! あやうくイっちゃいそうになっちゃっただろ!」
海瑠は股間を押さえて涙目だった。ささやかとか言われたし。
クリシュナは、それを羨ましそうに見ている。
『ええ、確かに男性でした。しかしまあ、これなら男でも構わないんじゃないかな、この際。ねえ兄上?』
と、オーランドは兄のほうを見た。
『ああ、異世界人なのは間違いない。バレなければ問題なかろう』
クリシュナは頷いた。
「兄弟だったのか……」
全く似てないどころか、人種も違うように見えるのに。
そういえば第一王子と第二王子、とか言っていたような気がする、と海瑠は首を傾げた。
『とにかく、私たちと一緒に城へ来てもらえませんか?』
オーランドが手を差し出した。
「……断ったりしたら?」
王子の背後で、騎士二人が剣を構えていた。
OK、命があぶない。
よくわからないが、せっかく転落死を免れて助かった命である。こんなかたちで失いたくはない。
海瑠は泣く泣く、王子たちに着いて行くことになった。
◆◇◆
それにしても、ここはどこなんだろう……外国だろうか?
再びのじゃんけんの末、またも勝利を収めたクリシュナの腕の中。
馬に揺られながら海瑠は思った。
オーランドは最初にグー……石つぶてを出す癖があるようだ。
それをクリシュナに言うと、内緒、とウインクされた。
そういう表情をすると、案外若いのかもしれない。
じゃんけんで勝負したりしてるし。と思い、年齢を聞いてみたところ。
「じゅ、15歳……だと……!?」
自分の半分しか生きてない小僧のクセに。こんなでかいのか。
海瑠の身体を余裕ですっぽり覆ってしまうほどの体格差。
腕など、自分の太股ほどある。
海瑠は悔しさを噛み締めた。
『カイル姫は……いえ、レディに年齢を訊くなど、失礼でしたね』
隣で優雅に白馬を操っているオーランドが笑顔で言った。
白馬の王子姿が似合いすぎる男であった。
「姫じゃねえ……」
今まで、彼らは実際に女を見たことがないという話なのに。何故、レディに対する態度を知っているのだろうか。
自分はレディではないが。
聞いてみると。昔はいたというが。女神が消してしまったらしい。
女神こわい、と海瑠は震えた。
『しかし、女性がいた頃の書物は残っているので。……貴方は書物で見た、女性そのものです』
「ぜんっぜん褒めてねえっつーの……。ちなみにおれは、30歳だ」
『………………』
『………………』
『………………』
『………………』
王子も騎士も。
四人とも、沈黙している。
『あー。魔族とかは、千歳くらいまで若いまま生きると言いますよねー』
白の騎士リッターが沈黙を破り、笑顔で言った。
「おれは魔族じゃねえ、人間だ!」
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