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12 ヴィルのことが好きなわけじゃない ※

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「た、確かめるって…?」

彼はそのまま公園に向かうとベンチに腰掛けた。夜の公園は人一人いないし真っ暗で少し怖い。

ヴィルは俺を膝の上に乗せると、後ろからズボンのチャックをおろした。

「はっ…ちょっと…!ひっ…」

大きな冷たい手が俺のペニスに触れる。ひんやりとした体温に背中がゾクッとした。 

「あ…っ」

彼はそのままゆっくりと手を動かし始める。
こんな…外でしちゃいけないのに久しぶりの感覚に体がどうしても拒めない。
気持ちがいい。何回も体を重ねたからいいところが全部バレてる…。 

「ゔぃ…る…それだめだって…なにするんだよ…」

いつのまにか先走りで潤ったそれはクチュクチュと音を立てた。彼から与えられる快感に体が熱くなってくる。

「ふっ…ぅ…んん」

「勃ってきた…気持ちいい?」

「ん…」

後ろからかけられるヴィルの声にはあまり感情が乗っていない。でも彼に抱きしめられるととても安心した。その安心感が怖い。

「私のこと好き?」

「…」

「なにか不満があるなら改善するから」

不満があるとかじゃない。ただ一緒にいるのが怖いんだ。居心地の良さが怖い。

彼は俺の耳を軽く噛んだ。

「ん…っ」

そして舌を耳の中にねじ込むとくちゅくちゅと動かす。

「ぅ…それだめっ…」

長い指でグリグリとペニスの先を触られてすごく気持ちがいい。

「ライア出して」

「はぁ…ぁ…ぅ…」

耳を舐められてそんなふうに触られたらいく…っ。

「手に射精していいから」

「ヴィル…っ」

ちゅくちゅくと激しく手を動かされて、俺はあっという間にいってしまった。

「はぁ…はぁ…」

びゅくっと白い液が手のひらに飛び散る。

「んー濃いね」

ヴィルは俺が出したそれをじっと眺めると呟いた。

最近してなかったのがバレてなんとなく恥ずかしい。

「だからしてないって…!」

すると彼は心底嬉しそうに俺にキスをした。

「よかった。他の男が君に触るのなんて耐えられないから」

「…」

ヴィルは俺のことを恋人だと思っている。

「ねぇ、君に触れていいのは私だけなんだよね?それが恋人だよね。会いたいときに会うことができて、触れたいときに触れられる。違う?」

「ヴィ…」

「あのおじさんと何するつもりだったの?なんでそんなことをするの?」

「あ…」

「なんで突然消えたの」

「…」

俺は彼を振り返る。暗くてよく見えないけどとても悲しそうな顔をしていた。

「あ…」

そのとき自分が軽はずみで関係を持ってしまったことをひどく後悔した。

彼はとてもきれいな人だ。容姿もだけど、なにより心がすごくきれいだ。真っ直ぐで純粋で…自分とは大違い。

人を純粋に信じて愛せる素敵な人。



自分とは釣り合わない人。


言わなきゃ。今ならまだ戻れる。

「俺、ヴィルと付き合うつもりはなくて、もともと遊びで誘っただけだったんだ。でもいつの間にか付き合ってることになっててそれで距離をおいた」

「…付き合うつもりがない?」

「そう…恋人とかいらないから。だからヴィルとは付き合えない。今日も遊ぶ人探してただけ」

そう告げると彼は目を見開いた。

「そんな…」

そしてひどく悲しげな顔をする。
心が痛い。

「ライアは好きじゃない人とも情交を結ぶの…?」

「そうだよ」

俺はヴィルが好きなわけじゃない。

「誰でもよかったんだ。好きじゃなくてもセックスはできる。ヴィルにいつもついていくのは都合が良かったからだよ。かっこいいし体の相性もいいし、いいホテル連れて行ってくれるから」

そう、彼じゃなくてもいい。代わりがきくように。
好きになっちゃいけない。

「俺は別にヴィルが好きでも特別でもなんでもない」

自分に言い聞かせるようそう告げた。

「…」

「俺、こういうやつだから。ごめんね」

声が震えた。涙声なのがバレないように強くそう言い放つ。


するとヴィルは…

「最低だ」

そう顔を歪めた。

これでいいんだ。嫌われるほうが安心する。 
嫌われていれば夢を見ることもない。


俺はベンチから立ち上がった。ここから逃げたくて。もう会っちゃいけない。早く帰らないと。

そのとき、彼が腕をぐいっと引っ張った。

ヴィルは後ろから俺を抱きしめると、そっとキスをする。

「…っ」

近くで彼を見上げる。するとエメラルドグリーンの瞳がうるうる輝いていた。

涙目で、すがるようにこちらを見ている。俺はこの目をよく知っていた。
…まだグレイさんを好きだったときの自分にひどく似ているんだ。

だめだ。これじゃだめだ。

「気持ち悪い」

もっと嫌われないと。

そういって突き放すとヴィルは傷ついた顔をした。これでいいんだ。

星が降るような夜空の下、俺は一人家まで走って帰った。
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