クーデレお嬢様のお世話をすることになりました

すずと

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第37話 それが今の流行なんですね

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 期末テストまで日にちが迫ってきた土曜日。
 最近の早起きの流れに乗って休みの日も早く起きてテスト勉強に励む。
 今日もアヤノと共に勉強に勤しむつもりだが、折角の休みの日だし朝に無理やり起こしてやるのも可愛そうなので彼女が起きてから向かう事にする。
 なので『起きたら連絡頂戴』とだけメッセージを送っておく。



 起床してから自分の勉強をしていると部屋が軽くノックされる。
 
「あいあーい」

 ノックに対して返事をしてやると入って来たのは妹のサユキであった。

「兄さん。今良い?」

 サユキの姿を見て俺は走らせていたペンを置いた。

「あれ?」

 彼女の姿を見て疑問の念を抱く。

「部活は?」

 俺の質問にサユキはベッドに腰掛けながら答えてくれる。

「今日は休み」
「ん? もうすぐ大会じゃなかった?」

 そう言うとサユキが肩を落としながら言う。

「バレー部の方が大会早いからって優先させてくれだってさ」
「あー……。共有で体育館使ってる部活あるあるね」
「それだったらバスケ部だって大会近いのに……って感じだよ」

 珍しくサユキが怒っている様な口調である。

「それでさ、兄さん今日バイトあるの?」
「ん? ああ。お嬢様が起きたらテスト勉強しに行こうと思ってるけど、多分昼からだな」
「あ……。テスト前なんだね」
「どうかした?」
「バッシュの約束果たしてもらおうと思って」
「あー……」

 バッシュを買ってやる件か。
 そうだな……。サユキも大会前で忙しそうだし、中々合う日が来ないかもしれない。今日は良い機会かもな。

 俺は机から立ち上がり伸びをして時計を見る。
 意外と時間が経過していたみたいだな。

「行くか」
「良いの?」
「まぁ休憩がてらね。でも、あそこのショッピングモールな」

 あそこなら大きなスポーツ専門店があるし、アヤノの家も近いから行きやすい。

 俺の提案にパンと可愛く手を叩くサユキ。

「どこでも良いよ。ふふっ。今すぐ準備するからちょっと待っててね」

 嬉しそうにサユキは部屋を出て行った。

 俺も軽く準備をしてからアヤノに連絡をする。
 まだメッセージが返ってきてないところを見るとぐっすりみたいだな。

『ショッピングモールいるから、また起きたら連絡くれよな』



♦︎



「――これ可愛いー」

 ショッピングモールに到着したのに中々目的地に到着しない。
 目的地であるスポーツ専門店は1Fにあるのに、サユキは速攻エスカレーターで2Fまで上がり、洋服やアクセサリー等のウィンドウショッピングを楽しんでいた。
 俺だったら買う物が決まっているのなら速攻目的の物を買って帰るのだが、そこは兄妹と言えど男女の違いなのだろうか。
 ここで水をさすと「分かってないなー」と言われてしまうので黙って彼女の後ろを付いて歩く。

「ね? 兄さん。これ可愛いくない?」

 そう言ってアクセサリーショップのピアスを見せてくる。

「可愛いな。でもさ」

 俺はサユキの髪をかき分けて耳たぶを出す。

「お前ピアス開けてないだろ」
「そうだけど……。大会終わったら開けようかなー」
「なんだとっ!?」

 俺は大袈裟に言ってのける。

「サユキ……。お前不良になっちまうのか!?」

 そう言うとサユキは大きく笑う。

「今の時代にピアス開けた位で不良て……。時代錯誤も良いところだよ。その考えだったら花嫁さんも不良になっちゃう」
「ふむ……。それもそうだな」
「兄さん。一緒に開ける?」
「人間穴だらけなのに増やすの?」

 耳たぶに穴を開けるなんて……。怖くてちびっちまうぜ。ピアスしてる人達は勇気あるよな。もはや勇者と言っても過言ではないだろう。

「そんな事言って怖いだけでしょ?」

 心を見抜かれた。

「なぬをー? こ、怖くなんかあるかー!」
「ふふっ。動揺してる動揺してる」

 笑いながらサユキはピアスを棚に戻す。

「ま、私もピアスは花嫁衣装着る時だけで良いや」

 言いながらこちらを見てニヤリとする。

「兄さん。あの超絶美人の綾乃さんに早くプロポーズしないと他の人に取られちゃうよ?」
「だから、お前は話を飛躍しすぎだっての。まだ付き合ってもないのに」
「『まだ』って事は付き合う気ではいるんだね」

 母さんみたいに言葉の揚げ足を取ってきやがる。
 ホント似た者親子だね君達。

「だから――」
「今度お義姉さんに会わせて欲しいよ。あははー」

 俺の言葉など聞く耳持たないみたいだ。

 ――しかし、なんだ。話の流れからアヤノの花嫁姿を想像してしまう。
 
 純白のドレスにベールを被りヴァージンロードを歩くアヤノ――。

 ああ……。絶対に似合うだろうな。



♦︎



「――あのさサユキ」

 俺達はショッピングモール内にある大人気カフェを訪れた。
 ここはいつも人気で席は埋まっているのだが、今は少しだけ席が空いていたのでサユキに無理くり連れてこられた。

 しかし、まぁここのフラペチーノめちゃくちゃ美味しいね。甘い物をあまり食べない俺もグイグイ飲んじゃうわ。

「なんですか? 兄さん」

 サユキもフラペチーノを頼んで美味しそうに飲んでいたところ首を傾げる。

「いつになったら目的地へと行くんだ?」

 流石にここまで目的地に向かう気がないと聞いてしまう。

「久しぶりに来たんだからもう少し色々見て回りたいんだけど」
「まぁ部活で忙しいからその気持ちは分かるけど、俺も午後は予定があるからあんまりゆっくりはしてられないぞ」

 そうは言ったものの、まだアヤノから返信は来ていない。

 アイツいつまで寝てるんだ?

「えー……。まぁ……。そうだよね……。じゃあ最後にお昼食べてからで良いよ」
「昼飯を奢らせる気か……」
「当然だよ。私のお小遣いじゃ好きな物食べられないからね」

 そりゃ中学生はバイト出来ない中、少ない小遣いでやりくりしないといけないから安易に使いたくはないわな。
 ま、部活頑張ってるし昼飯位奢ってやっても良いか。

「別に良いけどさ」
「やった。ふふっ。大好き」

 現金な妹だ。しかし大好きと言われて悪い気はしないな。妹からだけど。

 そうサユキが言うと後ろの席からガタンと言う音が聞こえた。

 振り返ると女性が椅子からコケたみたいだ。

「大丈夫ですか!?」

 俺は立ち上がり女性に駆け寄る。

 この女性。キャスケットを被り、デカイグラサンをしているので表情は見えないが恐らく相当恥ずかしいと思っているに違いない。
 デカイグラサンはアヤノを連想させるが、アヤノがこの前していたのとは明らかに違ったので彼女ではないと思われる。

「だ、大丈夫……」

 しかし、反射的に彼女が答えたその声は、聞き慣れた声であった。

 女性は体勢を整えて何事も無かったかの様に椅子に座り直す。

 そんな彼女を見て俺はスマホをポケットから取り出して連絡帳に登録してある波北 綾乃の電話番号をタップする。

 すると、反射的に彼女がポケットからスマホを取り出して画面を見た所で俺はキャスケットとグラサンを外してやる。
 他人だったら気不味いが、この南方 涼太郎には絶対的の自信があった。

「何……してんの?」

 俺の予想は見事に的中。

「あ、リョータロー。偶然」
「デジャヴ!」

 言葉の使い方が間違っているかもしれないが、ついそんな言葉が出てしまった。

 いくらなんでもスパンが短過ぎるよお嬢様。

 俺のツッコミに気が付いたサユキがこちらを見ると駆け寄ってアヤノを見る。

「あ! もしかして!」

 サユキは俺とアヤノを交互に見て、この人物が誰だか察した様だ。
 アヤノは少し気まずそうにしていた。

「いつも兄がお世話になっております」

 サユキが丁寧に頭を下げて言うとアヤノは目を見開いた。

「兄……?」
「はい。初めまして。私、妹の南方 紗雪といいます」
「あ……。ど、どうも……」

 アヤノは少し困惑気味に声を漏らす。

「波北 綾乃さんですよね?」
「は、はい」
「うはぁ……」

 サユキはアヤノをジロジロと舐め回す様に見ていた。
 アヤノは気恥ずかしそうに照れて萎縮してしまっている。

「こらサユキ。あんまりジロジロと見つめると失礼だぞ」
「だって生綾乃さんめちゃくちゃ綺麗なんだもん。うっはぁ」

 素直な感想にアヤノはどうして良いか分からずに珈琲を飲んだ。苦そうな顔をしている。

「綾乃さん。一緒しても良いですか?」
「え?」
「サユキ?」

 思ってもみない所で小さな願いが叶ったサユキは、そんな提案を出してくる。

「だってどうせ昼から綾乃さんの家に行く気だったんでしょ? だったら別に良いじゃない?」

 そう俺に言った後にアヤノを見て問いかける。

「ダメですか?」

 まるでチワワが訴えかける様な瞳でサユキが問いかけるとアヤノは「構わない」と答えた。

「やった。決まり。ほらほら兄さん。椅子こっち持ってきて」
「良いのか? アヤノ」

 アヤノはコクリと頷いて珈琲を飲んだ。苦そうな顔をしていた。砂糖入れたら良いのに。



 散々アヤノに質問の嵐を投げかけた後にサユキはお手洗いに行ってしまった。
 小さな嵐みたいな妹である。

「で? テスト危ない奴がこんな所で何してんだよ。変装までして」

 アヤノと2人になった所で気になるポイントを聞くとアヤノはドヤ顔で言ってくる。

「変装じゃない。あれがスタンダード」
「嘘つけ!」
「あれが今の流行」
「あれが? 流行?」
「あれが。リョータローが時代に遅れてるだけ」
「俺が……。時代遅れ……」

 確かに女性ファッションなんて俺は分からないけど、でも周りを見てみてもそんな人はいないぞ。

「と、東京ではこれが流行」

 俺が周りを見渡したところで付け加えられる。
 確かに、東京とかなら分かる気がする。

「東京ではあれが流行ってるのか……。危なかった。もう少しで時代に乗り遅れる所だった。ありがとうアヤノ。教えてくれて」

 ふぃー。もう少しでダサい考えの奴になっていたな。危ない危ない。

「どうも」
「――じゃなーい! 何でテスト危ない奴がこんな所でアブラ売ってるんだよ」
「リョータローもだよ」
「俺は息抜きだ」
「私も。息抜きに行きつけのカフェに来ただけ」
「おまっ……。え? そんなに苦そうに飲んでるのに? 紅茶派なのに?」
「この苦味こそが味があって良い。お子ちゃまのリョータローには分からないだろうね」
「ホントかいな……。はぁ」

 溜息を吐いてアヤノに言ってやる。

「もうテストまで日にちないのに大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」

 有名な台詞を言ってのけるアヤノ。それダメなフラグだぜ。

「ともかくだ。こっちの用事が終わったら行くから、そこからはテスト勉強祭りだぞ」
「大丈夫じゃない。問題あり」
「うるせっ! 有無言わずテスト勉強じゃい!」

 そんな俺達のやりとりをしていると小さな嵐の様な妹が帰ってくる。

「ね? 綾乃さん。これから一緒に買い物どうですか?」
「は?」

 小さな嵐の様な妹が先程の俺の台詞を荒らしてくる。

「サユキ。昼からテスト勉強だって言ったろ?」
「構わない」

 俺の言葉を無視してアヤノが頷いた。

「はあ!?」
「やった! それじゃあ早速行きましょう!」
「うん」
「ちょ! まっ!」

 小さな嵐はアヤノを吸収して嵐となり、そのまま店を出て行ってしまった。
 俺の言葉は嵐にのみこまれて聞こえてないみたいであった。
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