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第9話 日曜日の朝
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なんで俺が日曜日の朝っぱらから動かにゃならんのだ。
日曜日は昼過ぎまで寝てから行動するのが法律で定められているはずだ。なのに、あのバカめ。
『い、今から会議をします。家に来てください』
なんて鬼電してきやがった。
俺が起きるまで電話をやめないスタイル。東堂優乃から2桁を超える着信履歴があった。
なにこれ、新しいいじめなの?
そう思うのと同時に、どこかありがたい気分も生まれてくる。
転落していた俺を東堂が気遣って誘ってくれているのだろうか。
なんて思ったが……。
「ないな……」
自分が高校デビューするために脅してくるやつだ。俺への気遣いなんてないのだろう。
家から徒歩数分。近所にある東堂家のチャイムを押す。
ピンポーンと音がすると、すぐに玄関のドアが開いた。
「あら? 京太くん」
「おはようございます。雫さん」
玄関から顔を出したのは、東堂雫さん。東堂優乃と優美ちゃんのお母さん。
見た目は40代とは思えないほどの若さで、20代と言われても信じてしまいそうな美魔女。
流石は東堂優乃と優美ちゃんのお母さんだけあり、とても綺麗でスタイルも抜群。
それに物腰柔らかく、謙虚な姿勢で、俺みたいな子供でもきちんと対応してくれる。
ただ……怒らすとめちゃくちゃ怖いらしい。特に年齢のことを言うと殺されるかも知れないみたいなので、絶対にいじっちゃダメらしい。そして、おばさんとか言うと即死らしい。
「もしかして優美が休みの日にも来てってわがまま言っちゃいましたか?」
「あ、いえ。今日は優美ちゃんではなく、その、お姉さんの方に朝から呼び出されまして……」
「優乃が? 京太くんを呼び出し……。あー……」
反射的に家の中を見て、雫さんは悟ったような顔をした。
「ごめんなさいね。あの子友達いないから、強引な誘い方したんじゃないかしら」
「ええっと……」
なんとも言えずにいると雫さんは優しく首を横に振った。
「いいんです。わかっているのよ。京太くんがなにを言いたいか、わかります」
そして雫さんは懇願するような瞳で俺を見つめる。
「京太くんには優美の家庭教師を頼んでいるけど、それは優美が優乃みたいにならないようにするため」
「言ってましたね」
「でも、優乃も私の可愛い娘です。無下にするつもりは毛頭ありません。ですけども……。優乃とお友達になってあげてなんて大そうな願いは言いません。ゴミを見る目で多少気にかけていただけたらと思います」
無下にしてるなぁ。ゴミを見る目って……。
「あ、もちろん、優美はそんな目で見ないでくださいね」
「当然です。優美ちゃんをそんな目で見ないです」
「恋愛対象としてもダメよ? まだ小学生なんだから」
「当然です。恋愛対象なら雫さんです」
「あら? 嬉しい。私で良いの? 優乃ならいくらでも好きにして良いのよ?」
「雫さんです」
「即答なのね。優乃……」
それはそれで複雑と言わんばかりに困った顔をしていた。
「冗談はさておいて、とりあえず上がってください。優乃なら優美とリビングにいるので」
「あ、すみません。お邪魔します」
そう言って俺は雫さんと入れ違いで東堂家にお邪魔することになった。雫さんは手に財布を持っていたのでコンビニにでも出かけたのだろう。
日曜日の朝に女子の家に入ると、お父さんがいるのではないかという緊張が一瞬走ったが、そういえばお父さんは単身赴任中と言っていたことを思い出して安堵を得る。
リビングにいるとのことで、優美ちゃんの家庭教師ですっかりなれたリビングの扉を開ける。
ちゃーちゃららー♫
リビングのテレビからは朝の女の子向け番組の変身シーンでの音楽が流れていた。
そのリズムに合わせて、ソファーで踊り狂っている美少女がいた。テレビに映っているアニメキャラと写鏡みたいに完璧な踊りである。
「『力こそパワー! ルリレッド!』」
「きゃあ! お姉ちゃん可愛い!」
ゴスロリ衣装を着た姉の決めポーズを妹が絶賛していた。
俺は一体、なにを見せられているのだろうか。
「あ、京太お兄ちゃんだ」
呆然と立ち尽くしていると、まともな優美ちゃんが俺の存在に気がついてくれる。
それに連動するかのように、ルリレッドもこちらに反応する。
「出たわね! うぇーい族!」
「なんだようぇーい族って……」
こちらのツッコミに、テレビから、『出たわね! うぇーい族!』と同じセリフが飛んでくる。
「公式なの!? 公式でうぇーい族なの!?」
「今日という今日はその軽いノリを成敗してあげるわ! とぅ!」
言いながら、ソファーのバネを使い、トランポリンの要領で俺の目の前に着地……。
「アデッ!」
出来ずにその場に転んだ。
運動神経悪いんだな。ゴスロリ衣装のスカートがめくれて、パンツが丸見えである。
「相変わらずエロいパンツ履いてんな」
つい出た言葉にルリレッドは即座に起き上がりすぐにスカートを押さえる。
「やるわね……。流石はうぇーい族」
「うぇーい族の強さは知らんが、お前が雑魚いのだけはわかった」
「くっ……。この強さ……。ま、まさか!? わたしのパンツを見て力をつけたっていうの!?」
「だとしたらお前が勝手に力を分け与えてくれたよ?」
「こうなったら奥の手を使うしかない」
「通常攻撃もなしにもう奥の手使うの? それはもう奥の手ではなくない?」
「いくわよ……」
ルリレッドはその場で踊り出した。
「なんで運動神経悪いのに、ダンスはキレッキレなんだよ」
「きゃあ! お姉ちゃん! かっこいい!」
はっ……!? 優美ちゃんがルリレッドを応援している。
「くらいなさい! ルリパワー!」
言いながら、ボディビルのポージングである、モストマスキュラーポーズを見してくる。
どうやら、これが奥の手らしい。
テレビの方を見ると、これで敵がやられている。というか、これが公式の必殺技みたいだな。
どうなってんの? 日曜日の朝のアニメ。
しかし、優美ちゃんを見ると、ワクワクしている様子。これは……。
「ぐあああ! やられたー!」
やられたセリフを吐きながら、その場に倒れると、ルリレッドが近づいてくる。
「あの……。ちゃんとやってください。ここは、『ちょ!? バイプスまじさがりーの昇天ヒュイゴー』ですよ」
ゴミを見る目で見られてしまう。
「お前がゴミを見る目で見てくんな」
日曜日は昼過ぎまで寝てから行動するのが法律で定められているはずだ。なのに、あのバカめ。
『い、今から会議をします。家に来てください』
なんて鬼電してきやがった。
俺が起きるまで電話をやめないスタイル。東堂優乃から2桁を超える着信履歴があった。
なにこれ、新しいいじめなの?
そう思うのと同時に、どこかありがたい気分も生まれてくる。
転落していた俺を東堂が気遣って誘ってくれているのだろうか。
なんて思ったが……。
「ないな……」
自分が高校デビューするために脅してくるやつだ。俺への気遣いなんてないのだろう。
家から徒歩数分。近所にある東堂家のチャイムを押す。
ピンポーンと音がすると、すぐに玄関のドアが開いた。
「あら? 京太くん」
「おはようございます。雫さん」
玄関から顔を出したのは、東堂雫さん。東堂優乃と優美ちゃんのお母さん。
見た目は40代とは思えないほどの若さで、20代と言われても信じてしまいそうな美魔女。
流石は東堂優乃と優美ちゃんのお母さんだけあり、とても綺麗でスタイルも抜群。
それに物腰柔らかく、謙虚な姿勢で、俺みたいな子供でもきちんと対応してくれる。
ただ……怒らすとめちゃくちゃ怖いらしい。特に年齢のことを言うと殺されるかも知れないみたいなので、絶対にいじっちゃダメらしい。そして、おばさんとか言うと即死らしい。
「もしかして優美が休みの日にも来てってわがまま言っちゃいましたか?」
「あ、いえ。今日は優美ちゃんではなく、その、お姉さんの方に朝から呼び出されまして……」
「優乃が? 京太くんを呼び出し……。あー……」
反射的に家の中を見て、雫さんは悟ったような顔をした。
「ごめんなさいね。あの子友達いないから、強引な誘い方したんじゃないかしら」
「ええっと……」
なんとも言えずにいると雫さんは優しく首を横に振った。
「いいんです。わかっているのよ。京太くんがなにを言いたいか、わかります」
そして雫さんは懇願するような瞳で俺を見つめる。
「京太くんには優美の家庭教師を頼んでいるけど、それは優美が優乃みたいにならないようにするため」
「言ってましたね」
「でも、優乃も私の可愛い娘です。無下にするつもりは毛頭ありません。ですけども……。優乃とお友達になってあげてなんて大そうな願いは言いません。ゴミを見る目で多少気にかけていただけたらと思います」
無下にしてるなぁ。ゴミを見る目って……。
「あ、もちろん、優美はそんな目で見ないでくださいね」
「当然です。優美ちゃんをそんな目で見ないです」
「恋愛対象としてもダメよ? まだ小学生なんだから」
「当然です。恋愛対象なら雫さんです」
「あら? 嬉しい。私で良いの? 優乃ならいくらでも好きにして良いのよ?」
「雫さんです」
「即答なのね。優乃……」
それはそれで複雑と言わんばかりに困った顔をしていた。
「冗談はさておいて、とりあえず上がってください。優乃なら優美とリビングにいるので」
「あ、すみません。お邪魔します」
そう言って俺は雫さんと入れ違いで東堂家にお邪魔することになった。雫さんは手に財布を持っていたのでコンビニにでも出かけたのだろう。
日曜日の朝に女子の家に入ると、お父さんがいるのではないかという緊張が一瞬走ったが、そういえばお父さんは単身赴任中と言っていたことを思い出して安堵を得る。
リビングにいるとのことで、優美ちゃんの家庭教師ですっかりなれたリビングの扉を開ける。
ちゃーちゃららー♫
リビングのテレビからは朝の女の子向け番組の変身シーンでの音楽が流れていた。
そのリズムに合わせて、ソファーで踊り狂っている美少女がいた。テレビに映っているアニメキャラと写鏡みたいに完璧な踊りである。
「『力こそパワー! ルリレッド!』」
「きゃあ! お姉ちゃん可愛い!」
ゴスロリ衣装を着た姉の決めポーズを妹が絶賛していた。
俺は一体、なにを見せられているのだろうか。
「あ、京太お兄ちゃんだ」
呆然と立ち尽くしていると、まともな優美ちゃんが俺の存在に気がついてくれる。
それに連動するかのように、ルリレッドもこちらに反応する。
「出たわね! うぇーい族!」
「なんだようぇーい族って……」
こちらのツッコミに、テレビから、『出たわね! うぇーい族!』と同じセリフが飛んでくる。
「公式なの!? 公式でうぇーい族なの!?」
「今日という今日はその軽いノリを成敗してあげるわ! とぅ!」
言いながら、ソファーのバネを使い、トランポリンの要領で俺の目の前に着地……。
「アデッ!」
出来ずにその場に転んだ。
運動神経悪いんだな。ゴスロリ衣装のスカートがめくれて、パンツが丸見えである。
「相変わらずエロいパンツ履いてんな」
つい出た言葉にルリレッドは即座に起き上がりすぐにスカートを押さえる。
「やるわね……。流石はうぇーい族」
「うぇーい族の強さは知らんが、お前が雑魚いのだけはわかった」
「くっ……。この強さ……。ま、まさか!? わたしのパンツを見て力をつけたっていうの!?」
「だとしたらお前が勝手に力を分け与えてくれたよ?」
「こうなったら奥の手を使うしかない」
「通常攻撃もなしにもう奥の手使うの? それはもう奥の手ではなくない?」
「いくわよ……」
ルリレッドはその場で踊り出した。
「なんで運動神経悪いのに、ダンスはキレッキレなんだよ」
「きゃあ! お姉ちゃん! かっこいい!」
はっ……!? 優美ちゃんがルリレッドを応援している。
「くらいなさい! ルリパワー!」
言いながら、ボディビルのポージングである、モストマスキュラーポーズを見してくる。
どうやら、これが奥の手らしい。
テレビの方を見ると、これで敵がやられている。というか、これが公式の必殺技みたいだな。
どうなってんの? 日曜日の朝のアニメ。
しかし、優美ちゃんを見ると、ワクワクしている様子。これは……。
「ぐあああ! やられたー!」
やられたセリフを吐きながら、その場に倒れると、ルリレッドが近づいてくる。
「あの……。ちゃんとやってください。ここは、『ちょ!? バイプスまじさがりーの昇天ヒュイゴー』ですよ」
ゴミを見る目で見られてしまう。
「お前がゴミを見る目で見てくんな」
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