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第18話 屋上へやって来たステルス機能高めの高嶺の花
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理科の実験の授業が終わり、俺は鞄を持っていつも通り屋上に出向いていた。
いつもの屋上の塔屋にもたれての昼休み。
ぼっちの昼休みも慣れてきたところだ。
最初は辛かったけど、よくよく考えたら、教室で1人寂しくとか、廊下の隅とか、便所飯とかじゃない分、俺は恵まれているのかもしれない。
紫藤先生には感謝しないといけないな。
「ぷっはぁぁぁ」
前言撤回。
「おい、おっさん。飯を食べようとしている生徒の横でタバコ吸うなよ」
紫藤先生の喫煙所と化している屋上を借りている身なので、あまり文句は言いたくないが、わざわざ隣に座り、タバコをふかされたら文句の1つも言いたくなる。
横でタバコを吸われているので弁当箱は開けずに膝に置いたままにしてある。
紫藤先生は俺の言葉を聞いた後、普通に無視してタバコを吸う。
「ほっ、ほっ、ほっ」
「あ、輪っかだ。すご~い」
先生の口からは綺麗な煙の輪っかが出来ており、つい拍手をした。
「じゃねぇんだよ! 聞いてた!? 俺の話し聞いてた!?」
「うるせぇなぁ」
やれやれとだるそうに、ポケットから缶コーヒーの空き缶を取り出してタバコをそこに捨てた。
「飯の隣でタバコとか普通だろうが。居酒屋行ったことねぇのかよ」
「ねぇよ! こちとら未成年だわ」
「あ。そっか」
「おい。意識低い系高校教師。今時脱力系の男なんて流行ってねぇんだよ」
「そうなん? 俺らの頃は……」
「いらんいらん。年長者の俺らの時代自慢は痛いだけだから」
「え、うそ、つら……。めっちゃ言うやん。二股クソやろうのくせに」
「あっ! おっさんが言っちゃいけねぇこと言った!」
「いじられて嬉しいくせに」
「それは否めない」
はぁとため息を吐いてタバコの匂いが残ったこの場所での食事を続ける。
タバコ臭いのは嫌だけど、1人より何倍もマシだ。
1人よりか……。
ふと、先生に思ったことを聞いてみる。
「先生。良いの?」
「はい。主語がない。0点」
「あんたは数学の先公だろうが」
「数学と国語の二刀流だ」
それは二刀流と言えるのだろうか。
「まぁ冗談はさておき、どしたよ?」
先生は真面目な顔して聞いてくれる。
この先生は少しズルい。
こっちがいじって欲しい時と、真面目に聞いて欲しいことを察して使い分けてくれる。
だから生徒に人気なのかもしれない。
「先生が個人に肩入れして良いのかな? と」
「肩入れ?」
「屋上の鍵を貸してくれたり、こうやって様子見てくれたり」
そう言うと先生は、「ぷっ」と吹き出したかと思うと「あっはっはっ!」と笑い出した。
「な、なんだよ」
「いや、わりぃ、わりぃ」
言いながら先生は遠慮なくタバコを取り出して2本目に火を付けた。
「珍しく真面目な顔して聞いてくるからなにかと思ったらクソしょうもなかったから」
「クソしょうもないって……」
「お前がそんなこと気にする必要はないっての」
笑いながらタバコ吸って煙を口を吐く。その姿はさしずめ蒸気機関車だった。
「そもそもだ。屋上でタバコ吸ってるのがバレた時点でアウトだしなぁ。それに枚方を道連れにしただけだ」
「道連れか……」
そりゃ良い道連れだな。なんて言うとなにを言われるかわからないから黙っておく。
「しかしあれだな」
「なんですか?」
「俺はここに赴任してから誰にもバレなかったのだが、まさか高嶺の花にバレるとは思わなんだ」
「え?」
先生が出入り口の方を指すので見てみると、ドアを盾に綺麗な顔を覗かせている優乃がいた。
「優乃」
「ひゅわっ!」
優乃は酷く驚いた声を出すと、慌ててドアを閉めて屋上に出てくる。
「東堂よ。ここがバレたら仕方ねぇ。口封じをさせてもらおうか」
「ひっ!」
「おいおい。先公が生徒脅すなよ」
呆れながら優乃を見て援護してやる。
「優乃も。どっちかって言うとお前の方が有利なんだから言ってやれ」
言ってやると、「そ、そうです!」と指差して紫藤先生に言った。
「タバコ吸っちゃダメなんですよ!」
「よし、東堂。法律の問題だ。喫煙可能な年齢は?」
「20歳からです!」
「正解! ちなみに、俺は30歳」
「うっ……。それではわたしの負け……」
なんの勝負になっているのか理解が追いつかないが、とりあえず俺は優乃の肩を持ってやる。
「ちなみに。学校内は禁煙だぞ」
教えてやると優乃の目に光が宿る。
「それでは紫藤先生が間違っています!」
ズバッと言ってのけると。
「ちょ!? バイプスまじさがりーの昇天ヒュイゴー」
「え? 先生ルリキュア見てるの?」
「サウナでな」
「サウナで!?」
あかん。色々と理解が追いつかない。
「そんなことより」
「そんなこと!? サウナでルリキュアがそんなことなの!?」
「2人付き合ってんの?」
「「!?」」
先生の質問に俺と優乃は、ビクッとなってしまう。
「「付き合ってません!」」
俺達の反応と反論を受けて、先生は気持ちの悪いニヤついた顔をするとタバコを缶コーヒーの空き缶へ捨てた。
「そうですかぁ」
ものすごい含みのある顔をして先生は立ち上がり、背中で手をあげる。
「邪魔者は消えるとするさ。アディオス」
先生は嬉しそうに、「青春、青春」と言いながら屋上を後にした。
あのやろう。間違いなく勘違いしてやがる。
ため息1つ吐いてから優乃を見ると、呆然と立ち尽くしている。
「優乃はどうしてここに?」
質問を投げると、彼女は切り替えるように言ってのける。
「ふっ。わたしのステルス機能をなめないでいただきたいです。京太くんが教室を出て行った後からナイスストーキングをしていました」
ストーカーにナイスとかないから。
「そんな、コソコソしてないで入って来たら良かったのに」
「陰キャボッチをなめないでいただきたいです。屋上は立ち入り禁止。そんなところに易々と行く勇気なんてないです」
「ひよってたのか?」
「ひよってるやついる!? わたし! メビウス吸うぞ」
「ちなみに先生が吸ってたのがメビウスだけどな」
この件がしたかったのでちょっと満足だ。
いつもの屋上の塔屋にもたれての昼休み。
ぼっちの昼休みも慣れてきたところだ。
最初は辛かったけど、よくよく考えたら、教室で1人寂しくとか、廊下の隅とか、便所飯とかじゃない分、俺は恵まれているのかもしれない。
紫藤先生には感謝しないといけないな。
「ぷっはぁぁぁ」
前言撤回。
「おい、おっさん。飯を食べようとしている生徒の横でタバコ吸うなよ」
紫藤先生の喫煙所と化している屋上を借りている身なので、あまり文句は言いたくないが、わざわざ隣に座り、タバコをふかされたら文句の1つも言いたくなる。
横でタバコを吸われているので弁当箱は開けずに膝に置いたままにしてある。
紫藤先生は俺の言葉を聞いた後、普通に無視してタバコを吸う。
「ほっ、ほっ、ほっ」
「あ、輪っかだ。すご~い」
先生の口からは綺麗な煙の輪っかが出来ており、つい拍手をした。
「じゃねぇんだよ! 聞いてた!? 俺の話し聞いてた!?」
「うるせぇなぁ」
やれやれとだるそうに、ポケットから缶コーヒーの空き缶を取り出してタバコをそこに捨てた。
「飯の隣でタバコとか普通だろうが。居酒屋行ったことねぇのかよ」
「ねぇよ! こちとら未成年だわ」
「あ。そっか」
「おい。意識低い系高校教師。今時脱力系の男なんて流行ってねぇんだよ」
「そうなん? 俺らの頃は……」
「いらんいらん。年長者の俺らの時代自慢は痛いだけだから」
「え、うそ、つら……。めっちゃ言うやん。二股クソやろうのくせに」
「あっ! おっさんが言っちゃいけねぇこと言った!」
「いじられて嬉しいくせに」
「それは否めない」
はぁとため息を吐いてタバコの匂いが残ったこの場所での食事を続ける。
タバコ臭いのは嫌だけど、1人より何倍もマシだ。
1人よりか……。
ふと、先生に思ったことを聞いてみる。
「先生。良いの?」
「はい。主語がない。0点」
「あんたは数学の先公だろうが」
「数学と国語の二刀流だ」
それは二刀流と言えるのだろうか。
「まぁ冗談はさておき、どしたよ?」
先生は真面目な顔して聞いてくれる。
この先生は少しズルい。
こっちがいじって欲しい時と、真面目に聞いて欲しいことを察して使い分けてくれる。
だから生徒に人気なのかもしれない。
「先生が個人に肩入れして良いのかな? と」
「肩入れ?」
「屋上の鍵を貸してくれたり、こうやって様子見てくれたり」
そう言うと先生は、「ぷっ」と吹き出したかと思うと「あっはっはっ!」と笑い出した。
「な、なんだよ」
「いや、わりぃ、わりぃ」
言いながら先生は遠慮なくタバコを取り出して2本目に火を付けた。
「珍しく真面目な顔して聞いてくるからなにかと思ったらクソしょうもなかったから」
「クソしょうもないって……」
「お前がそんなこと気にする必要はないっての」
笑いながらタバコ吸って煙を口を吐く。その姿はさしずめ蒸気機関車だった。
「そもそもだ。屋上でタバコ吸ってるのがバレた時点でアウトだしなぁ。それに枚方を道連れにしただけだ」
「道連れか……」
そりゃ良い道連れだな。なんて言うとなにを言われるかわからないから黙っておく。
「しかしあれだな」
「なんですか?」
「俺はここに赴任してから誰にもバレなかったのだが、まさか高嶺の花にバレるとは思わなんだ」
「え?」
先生が出入り口の方を指すので見てみると、ドアを盾に綺麗な顔を覗かせている優乃がいた。
「優乃」
「ひゅわっ!」
優乃は酷く驚いた声を出すと、慌ててドアを閉めて屋上に出てくる。
「東堂よ。ここがバレたら仕方ねぇ。口封じをさせてもらおうか」
「ひっ!」
「おいおい。先公が生徒脅すなよ」
呆れながら優乃を見て援護してやる。
「優乃も。どっちかって言うとお前の方が有利なんだから言ってやれ」
言ってやると、「そ、そうです!」と指差して紫藤先生に言った。
「タバコ吸っちゃダメなんですよ!」
「よし、東堂。法律の問題だ。喫煙可能な年齢は?」
「20歳からです!」
「正解! ちなみに、俺は30歳」
「うっ……。それではわたしの負け……」
なんの勝負になっているのか理解が追いつかないが、とりあえず俺は優乃の肩を持ってやる。
「ちなみに。学校内は禁煙だぞ」
教えてやると優乃の目に光が宿る。
「それでは紫藤先生が間違っています!」
ズバッと言ってのけると。
「ちょ!? バイプスまじさがりーの昇天ヒュイゴー」
「え? 先生ルリキュア見てるの?」
「サウナでな」
「サウナで!?」
あかん。色々と理解が追いつかない。
「そんなことより」
「そんなこと!? サウナでルリキュアがそんなことなの!?」
「2人付き合ってんの?」
「「!?」」
先生の質問に俺と優乃は、ビクッとなってしまう。
「「付き合ってません!」」
俺達の反応と反論を受けて、先生は気持ちの悪いニヤついた顔をするとタバコを缶コーヒーの空き缶へ捨てた。
「そうですかぁ」
ものすごい含みのある顔をして先生は立ち上がり、背中で手をあげる。
「邪魔者は消えるとするさ。アディオス」
先生は嬉しそうに、「青春、青春」と言いながら屋上を後にした。
あのやろう。間違いなく勘違いしてやがる。
ため息1つ吐いてから優乃を見ると、呆然と立ち尽くしている。
「優乃はどうしてここに?」
質問を投げると、彼女は切り替えるように言ってのける。
「ふっ。わたしのステルス機能をなめないでいただきたいです。京太くんが教室を出て行った後からナイスストーキングをしていました」
ストーカーにナイスとかないから。
「そんな、コソコソしてないで入って来たら良かったのに」
「陰キャボッチをなめないでいただきたいです。屋上は立ち入り禁止。そんなところに易々と行く勇気なんてないです」
「ひよってたのか?」
「ひよってるやついる!? わたし! メビウス吸うぞ」
「ちなみに先生が吸ってたのがメビウスだけどな」
この件がしたかったのでちょっと満足だ。
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