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第22話 新しい扉
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足取り軽く学校の正門を抜けた。
職員室での紫藤先生の言葉は俺の弱っていた心を少し軽くしてくれる、ありがたいお言葉であった。良い行い、親切な行いをすると還ってくるとは言ったものだ。
正門を出て、普段なら南に進むところを、本日は逆の北に進む。
学校の隣にある広めの公園。
なにもない広場と、遊具がある広場に分かれている公園には、小学生がサッカーをしていたり、幼稚園児が親御さん監視の下、遊具で遊んだりしているのが伺える。
電車通学の人達は北側に駅があるのだが、公園を通ると遠回りになるのでここを通ることはないだろう。
そのため、公園内には同じ制服姿の人が1人しか見当たらなかった。
「優乃」
この公園内を利用している人の中で、明らかにレベルの違いを醸し出している優乃を呼ぶと、視線を遊具広場の方からこちらに切り替えてくれる。
「京太くん……。良かったです。無事に会えて」
「戦地から帰って来た旦那を待っていた嫁みたいなテンションだな」
「だ、だって、先に公園にいると思っていたのにいなかったもので。スマホも返信がないので心配しました」
「スマホ?」
言われてポケットからスマホを取り出すと、着信とLOINが入っていた。
「ごめん。職員室行ってたから気が付かなかったよ」
「あ、そうだったのですね」
「そんじゃ行こうか」
「そういえば、京太くんのバイト先ってどこにあるのです?」
言われて、詳細を全く言ってなかったことに気がつき、すぐに教えることにした。
「言うの忘れてたな。カフェのバイト先は家の近くなんだよ。家から徒歩数分の場所にある」
「好立地なバイト先なのですね」
「まぁ俺の爺ちゃんが経営してるカフェだからな」
言うと優乃は、「あ、あー」と納得した声を漏らしていた。
「バイトである京太くんが勝手にバイトを紹介して良いものかと不安だったのですが、身内でやっているのなら京太くんの言動も頷けますね」
「そうそう。爺ちゃんにも最近、誰か友達でバイトしたい子いないか? って言われてたんだよな。でも、俺はほら……」
「二股クソやろうですもんね♪」
「爽やかにいじってくんな」
「あでっ!」
美少女にチョップをしてやると、お互い笑い合う。
「そこで同志である美少女の出番ってわけですか。仕方ありません。京太くんのために人肌脱ぎましょうか」
言うと、優乃は本当にブレザーのボタンを外して脱ぎだした。
「あ、ちょ! 言葉の意味違うから!」
「ふぇ?」
優乃はブレザーを綺麗に折りたたみ、腕にかけた。
「今日、暑くありません? なので脱いだだけですが……」
流石にそこまではバカじゃなかったか。いや、下着で迫ってきたり、着替え見せてくれたりする奴だから、ここで脱ぐ可能性もあったよな。油断したら、次はワイシャツ脱ぎそうだぞ。その時は目にやきつけよう。
「確かにな」
言いながら俺もブレザーを脱いだ。
すると優乃が手を差し出してくる。
「持ちますよ」
「なんでだよ」
軽く笑いながら冗談を流すが、優乃は差し出す手を引っ込めなかった。
「匂い嗅ごうと思いまして」
「なんちゅうこと言ってんの!?」
いきなりの爆弾発言に動揺を隠しきれなかった。
「あ、いや、すみません。あれですよあれ。サッカーのユニフォーム交換的なノリですよ」
「遅い遅い。全てが遅い。暑くて脱いだのに交換の意味がわからないし、理由は不純だし」
「わたしのブレザーの匂いも嗅いで良いですよ?」
「かあぁんぁああ」
両手で顔を覆う。
「かぁあぁぐぅぅ」
誘惑に負けてブレザーを差し出した。
「ふふ。京太くんは匂いフェチなんですね♪」
「く……」
それはお前だろうがっ! とは言えずに甘んじて俺は匂いフェチの称号を得てしまう。
グゥの音も出ないとはこのことだ。
しかし、それにしても優乃はなんで平然とこんな発言ができるのだろうか。
もしや、真正の変態?
なんて思いながらも美少女のブレザーを受け取る。
女子のブレザーは男子のブレザーと違い、ボタンの位置が違う。それに腰の部分が、キュッとなっている違いもある。見た目は相違ないが細かな違いがある。
「くんくん」
優乃は容赦なく俺のブレザーを嗅いでいた。
その姿を見て、俺も高嶺の花のブレザーの匂いを嗅ぐことにした。
彼女のブレザーからは、お昼に隣に来た時と同じ匂いが微かに感じられて、どこか優しい花のような匂い。高嶺の花の美少女のブレザーは予想通り良い匂いであった。
「うん。なんだ……無臭ですね」
「なんでそんな残念そうなんだよ」
優乃が肩を落として言ってきたので質問を投げた。
「陽キャうぇーい族の男子は良い匂いって聞いたので」
「都市伝説だから。人それぞれだから。あと俺は陽キャうぇーい族ではないから」
「そうですか」
残念そうな声を出して、優乃は俺のブレザーを着た。
「ちょ!? なに着てんの!?」
「いえ。京太くんのブレザー着たいって思いまして」
「わぁ。思い立ったら即実行するタイプなんだね。実業家に向いてるよ。じゃねんだよ! 勝手に着るなよ!」
「京太くんがノリツッコミしている間に着ました」
こちらの言葉を無視して俺のブレザーに身を包んだ優乃。
「やっぱり大きいですね」
袖から手が出ずに萌え袖になっていた。
「着てどうすんだよ?」
「うーん……。どうしましょう。とりあえずわたしのブレザー着ます?」
「着る」
もう恥じらいを捨て、欲望に素直になった俺は即答した。
彼女の小さなブレザーは、ピチピチで少し苦しかったが、同時に優乃の匂いに包まれた感じがする。
あかん。新しい性癖の扉が今開かれてしまったみたいだ。
「ぴゅぴゅへ。京太くん、全然似合っていませんね」
「お互い様だろうが」
「ちっちっちっ。これを見て下さい」
言いながら、優乃は萌え袖を軽く振り回す。
「どうです? 良いでしょう?」
悔しいが、萌え袖が好きな俺には結構ささってしまう。
「くっ……」
「でゅへへ。どうです、どうです? 新しい性癖の扉が開きそうですかぁ?」
もうすでに開いた後なんだよ、ばかやろう。
「ほ、ほらほら。あほなことやってないで行くぞ。バイトに遅刻しちまう」
「おっと。それもそうですね」
俺が歩みを始めると、急ぎ足で追いついてくれる優乃。
俺達はそのまま公園の中を通って家の方角を目指す。
その時に優乃が遊具広場に目を向けた。
視線の先に気が付いて首を捻ると、こちらのリアクションを察した優乃が説明してくれる。
「ここの広場にはお父さんとお母さんに連れて来てもらって遊んでもらったことを思い出しておりました。そして、わたしは優美を連れて遊んで、優美もお気に入りの公園になって。思い出のある公園を子供達が利用してくれているのは喜ばしいと思いまして」
「思い出の公園がずっと続くのは良いことだよな」
「はい。これからも、わたし達の子供の代も続いたのなら幸いですよね」
「え? わたし達?」
言葉の違和感をぶり返して聞くと優乃は、ビクッとなった。
「俺と優乃って結婚してたっけ?」
笑いながら聞くと優乃は頬を膨らました。
「もうっ。言葉のあやです!」
「あはは。わかってるっての」
冗談とわかっていることを言い放ち真実をぶつけてやる。
「優乃の思いはわかるが、互いのブレザーの匂いを嗅いで交換している変態が言うセリフではないな」
「わかりみが深い」
職員室での紫藤先生の言葉は俺の弱っていた心を少し軽くしてくれる、ありがたいお言葉であった。良い行い、親切な行いをすると還ってくるとは言ったものだ。
正門を出て、普段なら南に進むところを、本日は逆の北に進む。
学校の隣にある広めの公園。
なにもない広場と、遊具がある広場に分かれている公園には、小学生がサッカーをしていたり、幼稚園児が親御さん監視の下、遊具で遊んだりしているのが伺える。
電車通学の人達は北側に駅があるのだが、公園を通ると遠回りになるのでここを通ることはないだろう。
そのため、公園内には同じ制服姿の人が1人しか見当たらなかった。
「優乃」
この公園内を利用している人の中で、明らかにレベルの違いを醸し出している優乃を呼ぶと、視線を遊具広場の方からこちらに切り替えてくれる。
「京太くん……。良かったです。無事に会えて」
「戦地から帰って来た旦那を待っていた嫁みたいなテンションだな」
「だ、だって、先に公園にいると思っていたのにいなかったもので。スマホも返信がないので心配しました」
「スマホ?」
言われてポケットからスマホを取り出すと、着信とLOINが入っていた。
「ごめん。職員室行ってたから気が付かなかったよ」
「あ、そうだったのですね」
「そんじゃ行こうか」
「そういえば、京太くんのバイト先ってどこにあるのです?」
言われて、詳細を全く言ってなかったことに気がつき、すぐに教えることにした。
「言うの忘れてたな。カフェのバイト先は家の近くなんだよ。家から徒歩数分の場所にある」
「好立地なバイト先なのですね」
「まぁ俺の爺ちゃんが経営してるカフェだからな」
言うと優乃は、「あ、あー」と納得した声を漏らしていた。
「バイトである京太くんが勝手にバイトを紹介して良いものかと不安だったのですが、身内でやっているのなら京太くんの言動も頷けますね」
「そうそう。爺ちゃんにも最近、誰か友達でバイトしたい子いないか? って言われてたんだよな。でも、俺はほら……」
「二股クソやろうですもんね♪」
「爽やかにいじってくんな」
「あでっ!」
美少女にチョップをしてやると、お互い笑い合う。
「そこで同志である美少女の出番ってわけですか。仕方ありません。京太くんのために人肌脱ぎましょうか」
言うと、優乃は本当にブレザーのボタンを外して脱ぎだした。
「あ、ちょ! 言葉の意味違うから!」
「ふぇ?」
優乃はブレザーを綺麗に折りたたみ、腕にかけた。
「今日、暑くありません? なので脱いだだけですが……」
流石にそこまではバカじゃなかったか。いや、下着で迫ってきたり、着替え見せてくれたりする奴だから、ここで脱ぐ可能性もあったよな。油断したら、次はワイシャツ脱ぎそうだぞ。その時は目にやきつけよう。
「確かにな」
言いながら俺もブレザーを脱いだ。
すると優乃が手を差し出してくる。
「持ちますよ」
「なんでだよ」
軽く笑いながら冗談を流すが、優乃は差し出す手を引っ込めなかった。
「匂い嗅ごうと思いまして」
「なんちゅうこと言ってんの!?」
いきなりの爆弾発言に動揺を隠しきれなかった。
「あ、いや、すみません。あれですよあれ。サッカーのユニフォーム交換的なノリですよ」
「遅い遅い。全てが遅い。暑くて脱いだのに交換の意味がわからないし、理由は不純だし」
「わたしのブレザーの匂いも嗅いで良いですよ?」
「かあぁんぁああ」
両手で顔を覆う。
「かぁあぁぐぅぅ」
誘惑に負けてブレザーを差し出した。
「ふふ。京太くんは匂いフェチなんですね♪」
「く……」
それはお前だろうがっ! とは言えずに甘んじて俺は匂いフェチの称号を得てしまう。
グゥの音も出ないとはこのことだ。
しかし、それにしても優乃はなんで平然とこんな発言ができるのだろうか。
もしや、真正の変態?
なんて思いながらも美少女のブレザーを受け取る。
女子のブレザーは男子のブレザーと違い、ボタンの位置が違う。それに腰の部分が、キュッとなっている違いもある。見た目は相違ないが細かな違いがある。
「くんくん」
優乃は容赦なく俺のブレザーを嗅いでいた。
その姿を見て、俺も高嶺の花のブレザーの匂いを嗅ぐことにした。
彼女のブレザーからは、お昼に隣に来た時と同じ匂いが微かに感じられて、どこか優しい花のような匂い。高嶺の花の美少女のブレザーは予想通り良い匂いであった。
「うん。なんだ……無臭ですね」
「なんでそんな残念そうなんだよ」
優乃が肩を落として言ってきたので質問を投げた。
「陽キャうぇーい族の男子は良い匂いって聞いたので」
「都市伝説だから。人それぞれだから。あと俺は陽キャうぇーい族ではないから」
「そうですか」
残念そうな声を出して、優乃は俺のブレザーを着た。
「ちょ!? なに着てんの!?」
「いえ。京太くんのブレザー着たいって思いまして」
「わぁ。思い立ったら即実行するタイプなんだね。実業家に向いてるよ。じゃねんだよ! 勝手に着るなよ!」
「京太くんがノリツッコミしている間に着ました」
こちらの言葉を無視して俺のブレザーに身を包んだ優乃。
「やっぱり大きいですね」
袖から手が出ずに萌え袖になっていた。
「着てどうすんだよ?」
「うーん……。どうしましょう。とりあえずわたしのブレザー着ます?」
「着る」
もう恥じらいを捨て、欲望に素直になった俺は即答した。
彼女の小さなブレザーは、ピチピチで少し苦しかったが、同時に優乃の匂いに包まれた感じがする。
あかん。新しい性癖の扉が今開かれてしまったみたいだ。
「ぴゅぴゅへ。京太くん、全然似合っていませんね」
「お互い様だろうが」
「ちっちっちっ。これを見て下さい」
言いながら、優乃は萌え袖を軽く振り回す。
「どうです? 良いでしょう?」
悔しいが、萌え袖が好きな俺には結構ささってしまう。
「くっ……」
「でゅへへ。どうです、どうです? 新しい性癖の扉が開きそうですかぁ?」
もうすでに開いた後なんだよ、ばかやろう。
「ほ、ほらほら。あほなことやってないで行くぞ。バイトに遅刻しちまう」
「おっと。それもそうですね」
俺が歩みを始めると、急ぎ足で追いついてくれる優乃。
俺達はそのまま公園の中を通って家の方角を目指す。
その時に優乃が遊具広場に目を向けた。
視線の先に気が付いて首を捻ると、こちらのリアクションを察した優乃が説明してくれる。
「ここの広場にはお父さんとお母さんに連れて来てもらって遊んでもらったことを思い出しておりました。そして、わたしは優美を連れて遊んで、優美もお気に入りの公園になって。思い出のある公園を子供達が利用してくれているのは喜ばしいと思いまして」
「思い出の公園がずっと続くのは良いことだよな」
「はい。これからも、わたし達の子供の代も続いたのなら幸いですよね」
「え? わたし達?」
言葉の違和感をぶり返して聞くと優乃は、ビクッとなった。
「俺と優乃って結婚してたっけ?」
笑いながら聞くと優乃は頬を膨らました。
「もうっ。言葉のあやです!」
「あはは。わかってるっての」
冗談とわかっていることを言い放ち真実をぶつけてやる。
「優乃の思いはわかるが、互いのブレザーの匂いを嗅いで交換している変態が言うセリフではないな」
「わかりみが深い」
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