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第23話 カフェ×メイド=東堂優乃
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公園を抜け、いつもの河川敷を歩いて行く。
そして、優乃の家を超え、俺の家を超えた先にあるのがカフェ《ひらっしゃい》だ。
このカフェは住宅街にある主婦層をターゲットに造られたカフェだ。
マスターである俺の祖父の枚方喜一の見た目が、ザ・マスターってぽいところと、中庭にあるフラワーガーデンが人気で、ひっそりと人気がある隠れ家的なカフェ。
ちなみに店名は、祖父が昔に接客業の仕事中に、「いらっしゃしませ」を、「ひらっしゃいませ」と噛んでしまい、一時あだ名にされていた自虐ネタを採用したらしい。
「あ、ここですか?」
木造のカフェらしい造りの建造物の前に立つと、優乃が知っている風に聞いてきた。
「知ってたか?」
「はい。何度か前を通ったことがあったので。でも、入ったことはありませんでした」
「まぁ学生向きじゃないからなぁ」
「確かに、中をチラッと見た時には年配の方が多かった気がします」
思い出すように言ってのける優乃に言ってやる。
「んじゃ初入店ってこったな」
ジーっと様子を見ていると、綺麗な顔が絶妙に可愛い角度で傾げてくる。
「どうかしましたか?」
「なんか違う」
「どう言う意味です?」
「スタバの時とリアクションが違う」
「ふっ……」
俺の、全然面白くない、と言わんとする言葉に鼻で笑うと自慢げに言ってくる。
「スタバで経験値を得たわたしが今更こんなカフェで怖気づくわけがありません」
「人のカフェをこんな扱いするなよ」
「見せてあげましょう。スタバを乗り越えたわたしの実力を」
東堂優乃は昼下がりの太陽の光を浴びて、どこか神々しく店の扉を開けた。
カランカラン、と店内に響き渡る鐘の音。
「へい大将。やってる?」
「お前はスタバでなにを得たんだ?」
こちらのやり取りをカウンター越しで見ていたマスターの祖父と目が合う。
白髪をオールバックにした眼鏡をかけたダンディな見た目。カフェらしいユニフォームにコップを拭いている姿は、ザ・マスターって感じだ。
「いらっしゃい」
「ひっ」
優乃は、ビクッとなって俺の後ろに隠れた。
「今のどこにビビる要素が?」
柔らかい笑みに、優しい声と瞳の祖父だった気がするが。
「カフェカフェし過ぎています。マスター×コップ拭き×いらっしゃい。は、カフェカフェし過ぎなんです」
「ハ○ター×ハン○ーのサブタイトルみたいだな」
祖父はピクっと反応して、こちらのやり取りを不思議そうに見ていた
「京太。そちらの素敵な女性は?」
拭いていた手を止めて、コップを置きながら聞いてくる。
「この前爺ちゃん、バイトが欲しいって言ってたから連れて来たよ」
言うと爺ちゃんは、にこっと笑って見せた。
「おお。そうだったのかい」
言うと、爺ちゃんがカウンターからこちらにやって来て優乃に挨拶をした。
「この店のマスターの枚方喜一です。以後お見知りおきを」
年下の人にも紳士に挨拶をする祖父に優乃は狼狽えていた。
「あ、えと……。東堂優乃、です」
おっ。ちゃんと挨拶できたみたいだな。
「優乃ちゃん。可愛い名前だ」
爺ちゃんは、なめまわすように優乃を見ていた。
その視線に優乃は困惑状態である。
「それじゃ優乃ちゃん。早速だけど制服に着替えてくれるかい?」
「え? えと、面接とかは?」
「一体いつから面接をしていないと錯覚していた?」
「!?」
優乃が目を見開いて酷く驚いた顔をしていた。
「そ、そのセリフは……」
「合格だよ」
グッと親指を立てると優乃もグッと親指を立てた。
「ああ。漫画かアニメのセリフか」
♢
学校の制服からカフェの制服へと着替えた。
着替えたと言っても、ブレザーを脱いだワイシャツにカフェのエプロンを着けただけのスタイル。着替えの手間が省けて楽である。
「で? お前の恰好はなんなの?」
「し、知りませんよ。マスターから渡されただけです!」
優乃の恰好はメイドそのものだった。
フリフリのロリータみたいな服装。彼女の恰好は胸元が少し開いており、スカートが短い。卑猥ではないが、どこかセクシーである。所謂、フレンチメイド風の服装だ。
普通に好みではあるが、なぜ初めてのカフェでメイド服を着ているんだ?
「良い。この服をここまで着こなす猛者が婆さんの他にいるとは思わなかった」
隣で祖父が涙を流している。
「じじぃ」
俺の祖父もアニメや漫画が好きな人だ。
しかしだな。
「おいじじぃ。職場に自分の趣味を取り入れるなよ。お婆ちゃんに着させろ!」
「もう着させたから」
「!?」
婆ちゃん……。ごめん、俺止められなくて……。くっ。
「それに、優乃ちゃんは結構ノリノリだぞ?」
「?」
じじぃが指差した先を見てみると、優乃は箒をヌンチャクみたいに振り回していた。
「なかなか機能性の高い服、みたいですね」
「露出が高いだけだろ」
「まさかリアルで戦うメイドを見えるとは……。天国の婆さんに土産話ができる」
「婆ちゃん普通に生きてっから。勝手にころすな」
なんか知らんが、祖父は眼鏡を外して涙を拭くと優乃に言ってのける。
「では、優乃ちゃんの制服はそれで決定で」
「おいっ! 流石にこれは本人が恥ずかしい……」
「了解であります!」
ビシッと敬礼のポーズをして見せた。
「気に入ったのね」
メイドが敬礼のポーズってはなんか新鮮だな。
ま、まぁ、本人が気に入ったのなら良いのか。
俺も目の保養になるし。
そして、優乃の家を超え、俺の家を超えた先にあるのがカフェ《ひらっしゃい》だ。
このカフェは住宅街にある主婦層をターゲットに造られたカフェだ。
マスターである俺の祖父の枚方喜一の見た目が、ザ・マスターってぽいところと、中庭にあるフラワーガーデンが人気で、ひっそりと人気がある隠れ家的なカフェ。
ちなみに店名は、祖父が昔に接客業の仕事中に、「いらっしゃしませ」を、「ひらっしゃいませ」と噛んでしまい、一時あだ名にされていた自虐ネタを採用したらしい。
「あ、ここですか?」
木造のカフェらしい造りの建造物の前に立つと、優乃が知っている風に聞いてきた。
「知ってたか?」
「はい。何度か前を通ったことがあったので。でも、入ったことはありませんでした」
「まぁ学生向きじゃないからなぁ」
「確かに、中をチラッと見た時には年配の方が多かった気がします」
思い出すように言ってのける優乃に言ってやる。
「んじゃ初入店ってこったな」
ジーっと様子を見ていると、綺麗な顔が絶妙に可愛い角度で傾げてくる。
「どうかしましたか?」
「なんか違う」
「どう言う意味です?」
「スタバの時とリアクションが違う」
「ふっ……」
俺の、全然面白くない、と言わんとする言葉に鼻で笑うと自慢げに言ってくる。
「スタバで経験値を得たわたしが今更こんなカフェで怖気づくわけがありません」
「人のカフェをこんな扱いするなよ」
「見せてあげましょう。スタバを乗り越えたわたしの実力を」
東堂優乃は昼下がりの太陽の光を浴びて、どこか神々しく店の扉を開けた。
カランカラン、と店内に響き渡る鐘の音。
「へい大将。やってる?」
「お前はスタバでなにを得たんだ?」
こちらのやり取りをカウンター越しで見ていたマスターの祖父と目が合う。
白髪をオールバックにした眼鏡をかけたダンディな見た目。カフェらしいユニフォームにコップを拭いている姿は、ザ・マスターって感じだ。
「いらっしゃい」
「ひっ」
優乃は、ビクッとなって俺の後ろに隠れた。
「今のどこにビビる要素が?」
柔らかい笑みに、優しい声と瞳の祖父だった気がするが。
「カフェカフェし過ぎています。マスター×コップ拭き×いらっしゃい。は、カフェカフェし過ぎなんです」
「ハ○ター×ハン○ーのサブタイトルみたいだな」
祖父はピクっと反応して、こちらのやり取りを不思議そうに見ていた
「京太。そちらの素敵な女性は?」
拭いていた手を止めて、コップを置きながら聞いてくる。
「この前爺ちゃん、バイトが欲しいって言ってたから連れて来たよ」
言うと爺ちゃんは、にこっと笑って見せた。
「おお。そうだったのかい」
言うと、爺ちゃんがカウンターからこちらにやって来て優乃に挨拶をした。
「この店のマスターの枚方喜一です。以後お見知りおきを」
年下の人にも紳士に挨拶をする祖父に優乃は狼狽えていた。
「あ、えと……。東堂優乃、です」
おっ。ちゃんと挨拶できたみたいだな。
「優乃ちゃん。可愛い名前だ」
爺ちゃんは、なめまわすように優乃を見ていた。
その視線に優乃は困惑状態である。
「それじゃ優乃ちゃん。早速だけど制服に着替えてくれるかい?」
「え? えと、面接とかは?」
「一体いつから面接をしていないと錯覚していた?」
「!?」
優乃が目を見開いて酷く驚いた顔をしていた。
「そ、そのセリフは……」
「合格だよ」
グッと親指を立てると優乃もグッと親指を立てた。
「ああ。漫画かアニメのセリフか」
♢
学校の制服からカフェの制服へと着替えた。
着替えたと言っても、ブレザーを脱いだワイシャツにカフェのエプロンを着けただけのスタイル。着替えの手間が省けて楽である。
「で? お前の恰好はなんなの?」
「し、知りませんよ。マスターから渡されただけです!」
優乃の恰好はメイドそのものだった。
フリフリのロリータみたいな服装。彼女の恰好は胸元が少し開いており、スカートが短い。卑猥ではないが、どこかセクシーである。所謂、フレンチメイド風の服装だ。
普通に好みではあるが、なぜ初めてのカフェでメイド服を着ているんだ?
「良い。この服をここまで着こなす猛者が婆さんの他にいるとは思わなかった」
隣で祖父が涙を流している。
「じじぃ」
俺の祖父もアニメや漫画が好きな人だ。
しかしだな。
「おいじじぃ。職場に自分の趣味を取り入れるなよ。お婆ちゃんに着させろ!」
「もう着させたから」
「!?」
婆ちゃん……。ごめん、俺止められなくて……。くっ。
「それに、優乃ちゃんは結構ノリノリだぞ?」
「?」
じじぃが指差した先を見てみると、優乃は箒をヌンチャクみたいに振り回していた。
「なかなか機能性の高い服、みたいですね」
「露出が高いだけだろ」
「まさかリアルで戦うメイドを見えるとは……。天国の婆さんに土産話ができる」
「婆ちゃん普通に生きてっから。勝手にころすな」
なんか知らんが、祖父は眼鏡を外して涙を拭くと優乃に言ってのける。
「では、優乃ちゃんの制服はそれで決定で」
「おいっ! 流石にこれは本人が恥ずかしい……」
「了解であります!」
ビシッと敬礼のポーズをして見せた。
「気に入ったのね」
メイドが敬礼のポーズってはなんか新鮮だな。
ま、まぁ、本人が気に入ったのなら良いのか。
俺も目の保養になるし。
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