彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第32話 脅しの条件

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 雫さんと優美ちゃんは早めのお風呂タイム。

 雫さんは雨に打たれてしまい、冷えた体を温めないといけない。ついでに優美ちゃんをお風呂に入れるという段取り。

 美魔女とロリの風呂。その間に入ることができたのなら、更なる性癖ブレイクとなり、もはや神の領域へと達するやも知れぬ。

「京太くん?」
「しゅわっと!」

 俺は人様の家のリビングで、とんでもに妄想を繰り広げてしまっていた。

 とんでもない妄想の最中に話しかけてきたのは、美魔女から生まれし、ロリの姉君である高嶺の花のバカである。

 こいつ、本当に顔だけは綺麗だな。

「どうかしました? なんだか様子が変ですけど」
「大丈夫、大丈夫」

 1番一緒に入りたいのは優乃とだけど。なんて素直に言えたら本物の変態だな。

「えっと……」

 優乃が髪の毛をいじりながら、もじもじとしていた。

「きょ、今日は泊まるの、ですか?」
「えっと……」

 ぽりぽりと頬をかき、雫さんが俺の母さんに連絡していたのを思い返す。

 2人が仲の良い関係ってのは知っていた。

 実際に自分の母親と電話をする喋り方を見て、改めて仲が良いのだと実感できたな。

 親同士の了承は得ている。

 外は嵐。

 泊めていただけるならありがたい。

 というか、もう泊まる流れになっている。

「優乃が嫌なら帰るけど」
「嫌ではありません。ありませんが……」

 語尾を濁されてしまう。

 嫌ではないが、なんだろうか。

 やはり痛い奴だと思われているからか。

 さっきの、わけわからん恰好の発言も、俺に気を使ってのことだったのかもしれない。誤解はまだ解けていないということか。

「あのさ、優乃」
「は、はひ」

 名前を呼ぶと、ビクッとなり背筋を伸ばす。

「今日、学校で俺のこと睨んでただろ?」
「え!?」

 なんとも言えない声を出されてしまう。

「いや、その、気持ちはわからなくないけど……」
「き、きき、気持ち!? 気持ちって!? 気持ち!?」

 動揺した様子で、ゆでたこみたいに赤くなっている。

「わかる。わかるけど……。俺が痛い奴ってことはわかるんだけどさ」
「痛い!? ……へ? 痛い?」

 優乃は間抜けな声を出していた。

「公園での発言が痛いってのはわかるけどさ。その……。あれは本気というか。だから許して欲しい。いや、許して欲しいとかじゃないか。なんていうのか」

 うーん、と悩むが上手い表現が出なかった。

「痛い。公園? ああ……。なるほど……」

 ポンと優乃は手を叩いていた。

「とにかくだ。痛い発言だったろうが、あの言葉は本気だから。それだけはわかって欲しい」

 素直な気持ちを伝えると、優乃は顔を近づけてくる。

 高校生離れした表情で見つめてくる。

 俺の瞳は彼女の美しい顔で埋め尽くされた。

「意外と鈍感なんですね」

 なんだか大人っぽい余裕の笑み。

「……っ!?」

 セリフではなく、表情に当てられて、声にならない声が出てしまった。

「そうですか。そうですか」
「な、なにを1人で納得してんだよ」
「いえ。なんでもー」

 くそっ。変態バカやろーなのに、上から目線ですげームカつく。

「確かに、あの発言は痛かったですね。すごく痛かった。ものすごく痛い。あたたたた」
「ぐっ」

 ボディブローをもらったかのような言葉のパンチが溝内に入る。

「夜の公園。2人っきりのバイト終わり。そして放たれる痛々しい中二発言」
「ちょ、まっ!」
「これは、もはやあれがあれで、あいたたのあれですなー」
「くっ……。殺せ……」
「はっふうううん」

 なぜか優乃が悶絶していた。

 自分の体を抱きしめて、クネクネしている。なんで、クネクネしているのかはわからない。

「ま、まだ殺しません……。まだ、殺しませんよぉ……じゅる」
「まじで変質者やん」
「おっと」

 じゅっ! と出たよだれを腕で拭い、彼女は改めて言ってくる。

「こ、これ以上痛い発言をいじられたくなければ」

 こいつ、脅そうとしてる。俺を脅そうとしている。

 こいつは脅すの好きだな。ばかなのにSなのか。

「今日の料理当番をしてください!」
「はい?」

 全く予想だにしていない答えを言ってくる。

「料理?」
「はい! 晩御飯を作ってください。本気でお願いします!」

 脅していた優乃が、頭を下げてお願いしてくる。

「どゆこと?」
「あ、いえ。その……。我が家の晩御飯は基本的に総菜か、テイクアウトのご飯なのですよ」
「あ、そうなのね」
「今日、お母さんは手に袋を持っていなかった。帰りにどこも寄っていないというわけです。こんな嵐です。流石のわたしもスーパーや店に寄ってとは言いません」
「じゃあ、雫さんの料理を食べれば良いんじゃない?」
「生ごみを増やすのは環境にも悪いですよね?」

 この言葉で、雫さんの料理の腕が伺える。

「自分の母親の料理をそこまで言うか?」
「自他共に認めるまずさです。お母さんはまだ気が付いているだけマシです」
「そ、そうなんだ」
「京太くんのお弁当は世界一でした」
「オーバーな」
「だからお願いします。優美を助けるとおもって晩御飯を作ってください!」

 すげー必死だな、おい。そんなに雫さんの料理を食べたくないか。

 そこまで酷い料理なら、逆に食べてみたいかも。

「わかった。冷蔵庫の中、開けても良いか?」
「はい! よろしくお願いします!」
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