彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

第33話 うぇーいクッキング

「はじまりました。うぇーいクッキング。司会はわたし、『美しすぎてボッチぴえん』でおなじみ東堂優乃。料理長はもちろんこの人。陽キャうぇーい族の長、枚方京太先生です。先生、お願いします」
「うぇーい」
「はい。本場のうぇーいをいただきましたね。では早速料理を作っていただきたいのですが、先生。今回はどのような料理を？」
「はい」
「返事は、うぇいでお願いします」
「うぇい。今回はですね」
「すみません。『うぇーい。まじばいぷすあげあげでよろー。お姉さんナツメグ追加ぁ』でお願いします」
「優乃、それ陽キャやない。ただのバグった奴や」

　コホンと咳払いをしてから優乃を見る。

　料理を手伝うつもりなのか、エプロンをしている。可愛いネコのエプロンだ。

　ちなみに俺はイヌのエプロンを借りてキッチンに立っている。

「先程ですね、冷蔵庫の中身を拝見させていただきました結果、カルボナーラにしようと思います」
「カルボナーラ！？　カルボナーラって陽キャしか食べたらだめな、あの、伝説の！？」
「ほんと、お前の中の陽キャ縛りはなんなの？」

　もはや慣れてきてはいるが、こいつは陽キャをなんだと思っているのやら。

「でもでも京太くん。カルボナーラなんてどうやって作るんですか？　ソースはありませんよ？」
「大丈夫。市販のソースがなくてもカルボナーラは簡単にできるよ」
「まじですか」
「まじまじ。材料は、粉チーズと卵。これがソースになります。具材はベーコンがあったので使います」
「朝食のパンに挟む用のベーコンだけで良いんですね。お手軽っ♪」

　まぁ、もっと具材があった方が美味しいけど、有り合わせだから仕方ない。

「では、早速作っていこう。えっと……。優乃も手伝う？」
「お任せください。お母さんの血を継いで料理だけはゴミですが、お手伝いはできますよ」
「料理だけは？」
「なにか？」

　グイッと睨んでくるのが少し怖い。

「いや、なにも……。じゃ、じゃあ、粉チーズと卵を取って」
「り」

　返事をすると、優乃は冷蔵庫から粉チーズと卵を取ってくれる。

　それをボウルの中に入れて混ぜ合わせる。

「これだけでカルボナーラソースの完成だ」
「おお。凄いです」

　パチパチと拍手をくれた。

「簡単にソースができたところで、パスタを茹でていきましょう。塩を取ってくれ」
「はい」

　言いながら容器に入った白い粉を渡される。

「うん。これ、砂糖だね」
「うっふぇ！？　なぜわかったのですか！？」
「いや、見たらわかるっての」
「素人にはわかりません」
「え？　あ、まぁ、間違いやすいからな。あるあるはあるあるだ」
「すみません。はい。塩です」
「なんで七味を取り出したよ？」
「あれ？　おかしいですね」
「流石にこれは間違えないだろ」
「はい。塩です」
「なんでウコン！？　しかも粉末のウコンだし」
「一気！　一気！」
「ウコンは一気する前に飲むんだよ！　そして、一気した後にも飲むんだよ！」

　違うわ！

「一気はダメ！　絶対！！」

　じゃなく！

「なんでウコンを取り出したよ！」
「お母さんのお供です！」
「雫さん酒癖悪そうだもんな」

　なんとなく、あの人は酒癖が悪そうだ。

「じゃないんよ！　早く塩をよこせ！」
「少々お待ちを」

　すると優乃はいきなりスクワットを始めた。

「ふっ。ふっ」

　綺麗なフォームなスクワットをすると、「ふぃ」と額の汗を手で拭う。

「はい。潮です」
「お前まじか」
「はい？」
「おまっ。性癖えぐれるわっ！　てか、料理に対して冒涜が過ぎるだろうがっ！」
「でも、美少女の潮ですよ？」
「ぐぬ」

　一瞬、言い負けそうになるが、すぐに立ち直る。

「いやいや。普通にだめだろうが」
「やだなぁ。冗談ですよ。冗談」
「はぁ……」

　結局、１人でカルボナーラを作った。