彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第36話 ラッキースケベパニック(東堂優乃視点)

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 わたし──東堂優乃はお風呂に入っている。

 今日は長めに入ることにした。

 念入りに髪の毛を洗い、丁寧にトリートメントを施す。

 身体はお母さんの高いボディソープを拝借した。

 そして、入浴剤にめっちゃ高いのを入れたった。

 バレたらわたしは死ぬだろう。

 でも、今回はバレても良い。

 なんせ今日は京太くんが同じ屋根の下にいるのだから。

「やってしまいましたね。キッチンでスクワットなんて……」

 汗臭い女と思われていないか不安だ。わたしもなんであんなところでスクワットをしたのかわからない。

 でも京太くん。ちょっとわたしの汗を舐めたそうにしていたような……。気のせいかな。

 汗臭い女と思われていたら嫌だ。

 そう思われないようにお風呂で綺麗にして、良い匂いを京太くんに嗅いで欲しい。

 もしかしたら同じベッドで寝るかも……。

「いやいやいやいや! ないないないない!」

 それはない。絶対ない。流石にそこまでは期待し過ぎ!

 布団がないならわかるけど、お父さんの部屋が空いているし!

「でも……。京太くんがどうしてもって言うなら、一緒に寝てあげなくもないかな……」

 枕を持って、「優乃ぉ。眠れないから一緒に寝てくれ」とか……。

「ブッフォ! ショタ属性持ちとかやばすのカニ味噌添えかよ……」

 鼻血が出そうになるのを、お湯をバシバシ叩いて耐える。

「あかん。はしゃぎ過ぎたら京太くんにバレてしまう。わたしは美少女。こんな姿見られたらだめ」

 なんとか悶絶を断ち、冷静になる。

「京太くん。わたしの夢、応援してくれるって……」

 冷静になると、さっき語った夢のことを思い出す。

 小学生の頃、将来の夢を語った時にクラスの子に言われた、「気持ち悪い」という言葉。

 何が気持ち悪いのか理解はできなかったが、残ったのはわたしの傷ついた心。

 当時のわたしは極端で、クラスの子達と一緒になるにはゲームやアニメを手放さないといけないと思っていた。

 でも、わたしは大好きなアニメやゲームを手放すことはできず、もちろん声優への夢を手放すなんてできなかった。

 結果、クラスの子達との距離を取り、ゲームやアニメを取ったわたしは見事に陰キャボッチとなってしまった。

 でも、それでも良かった。それで良かったけど……。

「京太くん……」

 彼が現れてから変わった。

 京太くんと同じ立場になりたい。そう思って高校デビューをしたかった。

 そんな彼が。

『俺は優乃の夢を応援するし、ファンにもなるよ』

 変えてくれる。

 彼はわたしをどんどん変えてくれる。

『京太くんは推し』なんて言うのは、自分の恋心を傷つけたくない逃げの行為。

 それを、『京太が好き』という好意へ変えてくれる。

『失敗』を『行動』に変えてくれる。

『叶いそうにもない夢』を『目標』へと変えてくれる。

 変わる、変わる、変わる──。

 京太くんはわたしの『世界』を変えてくれる。

「そんなのもう……神様じゃないですか……」

 わたしは神様に恋をしているのだろうか。

「ああ。もう……。神様でもなんでも追いつきますよ。だって京太くんのこと好きなんだから」

 新たな決意を胸にわたしは湯船から出た。

 そして、お風呂のドアを開けようとして手が止まった。

「これって、もしかしてお約束の?」

 ドアの先には京太くんがいて、「キャアア! 京太さんのエッチ!」パターン!?

 あり得る……。

「ええっと……。京太さんのエッチ。違うな。きょーたさんのえっち……? うむむ……」
 
 小声で言いながら、腕で身体を隠す練習。

「乳首は見えた方がエロいですかね……。隠しきれていない方が京太くんは良いかもです。あの人むっつりっぽいし」

 では、腕はこの辺りかな。

 うん。ちょうど乳首が見えそうですね。よしよし。

「コホン」

 咳払いをして、いざラッキースケベイベントへ。

 凸☆乳♪

「きゃあ。きょーたさんの──」

 ドアの先には誰もいなかった。

「……ふふ。ふふふ。わかっていました。わかっていましたとも。そんなことだろうと思いましたよ」

 自分でもわかるほど、不気味な笑みを浮かべて、ドライヤーをすると脱衣所を出た。
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