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第40話 リアル青春ラブコメやろう
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キーンコーンカーンコーン。
「学校のチャイムって、屋上にいても聞こえるんだな」
響き渡る朝の鐘の音。遅刻者達を容赦なく断罪する音。
断罪するのならあいつらに裁きの鉄槌を。
屋上のいつもの場所で、暗いことを考え込む。
体育座りで膝小僧に額を当てて落ち込む。
最近、噂が収まってきたと思った。
クラスメイトからも声をかけてもらえるようになった。
それなのに、また悪い噂が立つ。
俺の高校生活は変な噂を流されて終わるのだろうか。
このまま、二股くそやろうのレッテルを貼られたままで終わってしまうのかな。
「やっぱりここでしたか」
瞳を閉じて聞く萌えボイス。
顔だけじゃなくて声も良い高嶺の花の声がしたので顔を上げる。
「大丈夫ですか?」
屋上に吹く強い風で靡く髪を耳にかけながら、優乃が俺に顔を近づける。
「相変わらずエロいパンツ履いてるな」
靡くスカートから覗くアダルティなパンツを見ながら言ってやる。
「もう京太くんには全部見られていますので、今更パンツを見られても何も思いませんよ」
彼女の中の羞恥心は振り切っているらしい。
余裕の笑みを見せながら優乃は隣に腰掛ける。
「せっかく、朝のお約束である、『同じベッドで寝た後の教室で改めて出会う男女の初々しい朝』を体験できると思ったのに」
「なんだよ、そのお約束」
「あれ? それが目的で先に学校に行ったのではないのですか?」
「ちげーよ」
「そうだったのですか」
こいつは本気でそう思っているのだろうな。
「屋上に来て良かったのか?」
「別にサボりなんて初めてじゃありません」
「へぇ。意外だな」
「ふふふ。夜遅くまでゲームをしていて寝坊したり、好きなラノベ作家さんのサイン会に行くために休んだりなんて余裕でありますよ」
この子、結構サボるタイプなのね。
「俺が出て行った後にこっち来たんだろ? 何人かに見られているんじゃないか?」
「そうですねぇ。見られているかも」
「俺なんかといると高校デビューが遠ざかるぞ」
「うーん……」
優乃は体育座りをしながら、ゆりかごみたいに揺れた。
「それは困りましたね。高校デビューをしてもらう設定で京太くんと一緒にいるのですから」
「設定って」
「プクク。設定は大事ですよ」
「あっそ」
冗談混じりの言い方は場を和まそうとしてくれているのだろう。
「それで……。何があったのか聞いても良いですか?」
彼女の揺れが止まると同時に、真剣な声で質問が飛んでくる。
どう言おうか悩んでいると、先に彼女から詰め寄ってくる。
「元カノさんに会ったのですか? 密着ですか? わたしとの夜はなんだったのですか?」
「ちょ。近い近い。説明するから離れてくれ」
「あ、失敬」
優乃が元の位置に戻り、俺は先ほどのことを端的に説明した。
「──まぁ、つまりはだな、俺の顔を見るとゲロを吐くってこったな」
「ええ……」
優乃は珍しくドン引きしていた。
「そんな人います? 元カノさん普通じゃないですよ?」
優乃のくせに真っ当な答えをくれる。
『確かに。普通じゃないわな』
唐突に聞こえた男性の声に、俺達の視線は前方へ向けられる。
そこには我々の担任である紫藤先生が、相変わらずタバコをふかして立っていた。
「先生」
「一個人の生徒に肩入れするのは教師として良くはない。だから俺は今回一人の人間としてお前の様子を見に来たわけだが……」
指導先生は眉をひそめて見てくる。
「絶賛ラブコメ中とは……。なんだこれ」
「いや。ラブコメ中じゃないから」
「そ、そそ、そうですよ! まだラブコメじゃありません」
「まだってことはこれからですか? 青少年共おらぁ。ムカつくなぁ」
言いながら、一気にタバコを吸うと、先生は2本目に突入する。
「ふぃー。まぁ話を戻すが、人の顔を見て嘔吐するなんて奴は普通じゃない」
「でも実際、嘔吐されましたよ?」
「青いな少年。視野が狭いぞ」
「視野?」
いきなり視野が狭いと言われても、ピンとはこない。
「話を1つの方向だけではなく、色々な方向から見れば真実は見えるぞ」
「なんすかそれ」
「答えを言ってやりたいのは山々だが、俺も教師なんでね。憶測で話をするわけにもいかん」
「今回は一個人じゃ?」
「青いな少年。確かにそう言った。ごめんなさい。その言葉は聞き流してください」
流れるように平謝りしてくる。
「わっかりました」
唐突に優乃が立ち上がった。
「それでは視野を広げるために、今日学校サボります」
「おおっと。とんでもねぇ娘だ。先公に向かって堂々とサボり宣言とは」
「すみません。今日、ファイナルクエストしたいんで帰ります」
「それなら話は別だな。早く世界を救ってやれ」
この教師も大概ゲームとか好きだな。
呆れた様子で2人の様子を見ていると、優乃が俺に手を差し出してくる。
「行きましょ。京太くん」
そんな声で呼ばれたら。
「ああ」
手を取るしかないじゃないか。
俺は優乃の手を取り、立ち上がり、逃げるように手を繋いで屋上を後にした。
「おいおい。リアル青春ラブコメを繰り広げるくらい余裕あんじゃねーかよ。良かったわ。リアル青春ラブコメやろうが」
先生が安心したように吐いたセリフが、今の俺には嬉しかった。
「学校のチャイムって、屋上にいても聞こえるんだな」
響き渡る朝の鐘の音。遅刻者達を容赦なく断罪する音。
断罪するのならあいつらに裁きの鉄槌を。
屋上のいつもの場所で、暗いことを考え込む。
体育座りで膝小僧に額を当てて落ち込む。
最近、噂が収まってきたと思った。
クラスメイトからも声をかけてもらえるようになった。
それなのに、また悪い噂が立つ。
俺の高校生活は変な噂を流されて終わるのだろうか。
このまま、二股くそやろうのレッテルを貼られたままで終わってしまうのかな。
「やっぱりここでしたか」
瞳を閉じて聞く萌えボイス。
顔だけじゃなくて声も良い高嶺の花の声がしたので顔を上げる。
「大丈夫ですか?」
屋上に吹く強い風で靡く髪を耳にかけながら、優乃が俺に顔を近づける。
「相変わらずエロいパンツ履いてるな」
靡くスカートから覗くアダルティなパンツを見ながら言ってやる。
「もう京太くんには全部見られていますので、今更パンツを見られても何も思いませんよ」
彼女の中の羞恥心は振り切っているらしい。
余裕の笑みを見せながら優乃は隣に腰掛ける。
「せっかく、朝のお約束である、『同じベッドで寝た後の教室で改めて出会う男女の初々しい朝』を体験できると思ったのに」
「なんだよ、そのお約束」
「あれ? それが目的で先に学校に行ったのではないのですか?」
「ちげーよ」
「そうだったのですか」
こいつは本気でそう思っているのだろうな。
「屋上に来て良かったのか?」
「別にサボりなんて初めてじゃありません」
「へぇ。意外だな」
「ふふふ。夜遅くまでゲームをしていて寝坊したり、好きなラノベ作家さんのサイン会に行くために休んだりなんて余裕でありますよ」
この子、結構サボるタイプなのね。
「俺が出て行った後にこっち来たんだろ? 何人かに見られているんじゃないか?」
「そうですねぇ。見られているかも」
「俺なんかといると高校デビューが遠ざかるぞ」
「うーん……」
優乃は体育座りをしながら、ゆりかごみたいに揺れた。
「それは困りましたね。高校デビューをしてもらう設定で京太くんと一緒にいるのですから」
「設定って」
「プクク。設定は大事ですよ」
「あっそ」
冗談混じりの言い方は場を和まそうとしてくれているのだろう。
「それで……。何があったのか聞いても良いですか?」
彼女の揺れが止まると同時に、真剣な声で質問が飛んでくる。
どう言おうか悩んでいると、先に彼女から詰め寄ってくる。
「元カノさんに会ったのですか? 密着ですか? わたしとの夜はなんだったのですか?」
「ちょ。近い近い。説明するから離れてくれ」
「あ、失敬」
優乃が元の位置に戻り、俺は先ほどのことを端的に説明した。
「──まぁ、つまりはだな、俺の顔を見るとゲロを吐くってこったな」
「ええ……」
優乃は珍しくドン引きしていた。
「そんな人います? 元カノさん普通じゃないですよ?」
優乃のくせに真っ当な答えをくれる。
『確かに。普通じゃないわな』
唐突に聞こえた男性の声に、俺達の視線は前方へ向けられる。
そこには我々の担任である紫藤先生が、相変わらずタバコをふかして立っていた。
「先生」
「一個人の生徒に肩入れするのは教師として良くはない。だから俺は今回一人の人間としてお前の様子を見に来たわけだが……」
指導先生は眉をひそめて見てくる。
「絶賛ラブコメ中とは……。なんだこれ」
「いや。ラブコメ中じゃないから」
「そ、そそ、そうですよ! まだラブコメじゃありません」
「まだってことはこれからですか? 青少年共おらぁ。ムカつくなぁ」
言いながら、一気にタバコを吸うと、先生は2本目に突入する。
「ふぃー。まぁ話を戻すが、人の顔を見て嘔吐するなんて奴は普通じゃない」
「でも実際、嘔吐されましたよ?」
「青いな少年。視野が狭いぞ」
「視野?」
いきなり視野が狭いと言われても、ピンとはこない。
「話を1つの方向だけではなく、色々な方向から見れば真実は見えるぞ」
「なんすかそれ」
「答えを言ってやりたいのは山々だが、俺も教師なんでね。憶測で話をするわけにもいかん」
「今回は一個人じゃ?」
「青いな少年。確かにそう言った。ごめんなさい。その言葉は聞き流してください」
流れるように平謝りしてくる。
「わっかりました」
唐突に優乃が立ち上がった。
「それでは視野を広げるために、今日学校サボります」
「おおっと。とんでもねぇ娘だ。先公に向かって堂々とサボり宣言とは」
「すみません。今日、ファイナルクエストしたいんで帰ります」
「それなら話は別だな。早く世界を救ってやれ」
この教師も大概ゲームとか好きだな。
呆れた様子で2人の様子を見ていると、優乃が俺に手を差し出してくる。
「行きましょ。京太くん」
そんな声で呼ばれたら。
「ああ」
手を取るしかないじゃないか。
俺は優乃の手を取り、立ち上がり、逃げるように手を繋いで屋上を後にした。
「おいおい。リアル青春ラブコメを繰り広げるくらい余裕あんじゃねーかよ。良かったわ。リアル青春ラブコメやろうが」
先生が安心したように吐いたセリフが、今の俺には嬉しかった。
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