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第41話 逃避行後の彷徨う2人
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妖精のいたずらに誘われるように、優乃に手を引かれる。
学校の階段を駆け降りる。
誰もいない廊下に響き渡る俺達の足音。
誰もいない。みんな授業中だ。
なんだかこの学校に俺と優乃しかいないみたい。
その勢いのまま、靴も履き替えずに正門を抜け出した。
以前として優乃が俺の手を引いてくれている。
正門を抜けて、家の方とは逆方向。カフェのバイトの時に優乃と待ち合わせをした公園に入ったところで、彼女へ声をかける。
「優乃。これはどこに向かってるんだ?」
尋ねると、走っていたスピードを緩めた。
徐々に止まる。
繋いでいた手を離して、くるりと長い髪を靡かせて振り返ってくる。
「どこに行きましょう?」
「無計画」
なんとなくそんな気はしていたので、別段驚きはない。
「と、とと、というかわたしは先生にあんなに堂々と言ってしまいました。言ってしまいました!」
唐突に、わたわたと始め出す。
「落ち着けよ。サボりは慣れてるんだろ?」
「なめないでください! サボる時は仮病を使うに決まっているでしょうがっ!」
「もはや清々しいよ、お前」
「それから後になって、『ああ……。やってしまいましたぁ……。あぁ……』と後悔と懺悔の時間がやってくるのです」
「後悔と懺悔をするならやるなよ」
「2分だけですが」
「えらい短い後悔と懺悔なこって」
呆れたこちらの言葉は届かないみたい。
優乃は未だに、あわあわしている。
「どうしましょう。どうしましょう。これって停学でしょうか。最悪退学も……」
「ないない。絶対ないわ」
「うう……。退学になったらお母さんに月に代わってお仕置きされてしまいます。わたしは死ぬでしょう」
お母さん。セーラーな美少女の世代なんだね。
「退学になったら京太くんに責任取ってもらいますからね!」
「責任って、こりゃまたオーバーな」
「オーバーじゃありません! もし、退学になったら、京太くんは私のお嫁さんになってもらいます!」
「俺がウェディングドレス着る側?」
「さぁ。行きますよ、ハニー!」
言い出して再度俺の手を握ってくる。
「ど、どこに行くんだい? ダーリン」
「ハネムーンに決まっているでしょう!」
相当焦っているのか、訳のわからない呼び名で俺の手を引くと、ドスドスと駅の方へと歩いていった。
♢
駅前の繁華街までやってくる。
人の数はそこまで多くはない。
通勤や通学、放課後や帰宅ラッシュ時と比べるとめちゃくちゃに少ない。
しかしながら制服姿ってのは悪目立ちが過ぎる。加えて上履きだからみんなの視線を横取りって感じ。
「それでダーリン。どこに行くんだよ」
優乃は振り返り首を傾げた。
「ハニー。どこへ行けば良いのでしょうか」
「やっぱり無計画」
「陽キャうぇーい族はサボる時に何をしているんですか?」
「陽キャうぇーい族は学校をサボらないぞ」
「4月。どこかのうぇーい族の長を見かけなかったような……」
「あ、俺のこと?」
聞くと優乃は優しい微笑みで話しかけてくれる。
「サボっていたことを咎めようとは思いません。確かにそれは良くないことですが。大丈夫。素直にどこでサボっていたか洗いざらい吐きなさい。それであなたの罪は軽くなるでしょう」
「シスター……」
聖母のような雰囲気で、ついアーメンをしてから気がついた。
「お前が言ってんじゃんねぇよ」
「あ、ばれました?」
「バレバレだわ」
笑いながら少し考える。
俺がサボる日ってのは基本的に家の中でだ。
あ、でも……。
「ネカフェとか……」
「ネカフェ!」
言った瞬間、優乃の目が輝き出した。
「いやー。正直焦っていました。カラオケとかボーリングとか言われたらどうしようかと。そんな陽キャな集まりの場所に行ったら浄化するところでしたからね」
スタバも同じようなこと言っていた気がするな。
「ネカフェならわたしも大好きです。ここらへんに行きつけのネカフェがあるので行きましょう♪」
いきなりテンションの上がった優乃と一緒にネカフェに行くことになった。
学校の階段を駆け降りる。
誰もいない廊下に響き渡る俺達の足音。
誰もいない。みんな授業中だ。
なんだかこの学校に俺と優乃しかいないみたい。
その勢いのまま、靴も履き替えずに正門を抜け出した。
以前として優乃が俺の手を引いてくれている。
正門を抜けて、家の方とは逆方向。カフェのバイトの時に優乃と待ち合わせをした公園に入ったところで、彼女へ声をかける。
「優乃。これはどこに向かってるんだ?」
尋ねると、走っていたスピードを緩めた。
徐々に止まる。
繋いでいた手を離して、くるりと長い髪を靡かせて振り返ってくる。
「どこに行きましょう?」
「無計画」
なんとなくそんな気はしていたので、別段驚きはない。
「と、とと、というかわたしは先生にあんなに堂々と言ってしまいました。言ってしまいました!」
唐突に、わたわたと始め出す。
「落ち着けよ。サボりは慣れてるんだろ?」
「なめないでください! サボる時は仮病を使うに決まっているでしょうがっ!」
「もはや清々しいよ、お前」
「それから後になって、『ああ……。やってしまいましたぁ……。あぁ……』と後悔と懺悔の時間がやってくるのです」
「後悔と懺悔をするならやるなよ」
「2分だけですが」
「えらい短い後悔と懺悔なこって」
呆れたこちらの言葉は届かないみたい。
優乃は未だに、あわあわしている。
「どうしましょう。どうしましょう。これって停学でしょうか。最悪退学も……」
「ないない。絶対ないわ」
「うう……。退学になったらお母さんに月に代わってお仕置きされてしまいます。わたしは死ぬでしょう」
お母さん。セーラーな美少女の世代なんだね。
「退学になったら京太くんに責任取ってもらいますからね!」
「責任って、こりゃまたオーバーな」
「オーバーじゃありません! もし、退学になったら、京太くんは私のお嫁さんになってもらいます!」
「俺がウェディングドレス着る側?」
「さぁ。行きますよ、ハニー!」
言い出して再度俺の手を握ってくる。
「ど、どこに行くんだい? ダーリン」
「ハネムーンに決まっているでしょう!」
相当焦っているのか、訳のわからない呼び名で俺の手を引くと、ドスドスと駅の方へと歩いていった。
♢
駅前の繁華街までやってくる。
人の数はそこまで多くはない。
通勤や通学、放課後や帰宅ラッシュ時と比べるとめちゃくちゃに少ない。
しかしながら制服姿ってのは悪目立ちが過ぎる。加えて上履きだからみんなの視線を横取りって感じ。
「それでダーリン。どこに行くんだよ」
優乃は振り返り首を傾げた。
「ハニー。どこへ行けば良いのでしょうか」
「やっぱり無計画」
「陽キャうぇーい族はサボる時に何をしているんですか?」
「陽キャうぇーい族は学校をサボらないぞ」
「4月。どこかのうぇーい族の長を見かけなかったような……」
「あ、俺のこと?」
聞くと優乃は優しい微笑みで話しかけてくれる。
「サボっていたことを咎めようとは思いません。確かにそれは良くないことですが。大丈夫。素直にどこでサボっていたか洗いざらい吐きなさい。それであなたの罪は軽くなるでしょう」
「シスター……」
聖母のような雰囲気で、ついアーメンをしてから気がついた。
「お前が言ってんじゃんねぇよ」
「あ、ばれました?」
「バレバレだわ」
笑いながら少し考える。
俺がサボる日ってのは基本的に家の中でだ。
あ、でも……。
「ネカフェとか……」
「ネカフェ!」
言った瞬間、優乃の目が輝き出した。
「いやー。正直焦っていました。カラオケとかボーリングとか言われたらどうしようかと。そんな陽キャな集まりの場所に行ったら浄化するところでしたからね」
スタバも同じようなこと言っていた気がするな。
「ネカフェならわたしも大好きです。ここらへんに行きつけのネカフェがあるので行きましょう♪」
いきなりテンションの上がった優乃と一緒にネカフェに行くことになった。
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