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第42話 優乃は聖母のように包んでくれる
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ネカフェには基本的に1人で行くんだが、今回は初めて2人で利用する。
2人用のフラット席は意外にも広々としている。
これなら余裕で寝られるな。
好きなジュースをいれ、優乃は漫画を読んでいた。
「さっきまでの焦っていた姿が嘘みたいだな」
目を輝かせて漫画を読む彼女へ声が漏れてしまうと、視線を漫画に向けたまま口を開く。
「退学とかないない。絶対ないわ」
この子、さっきの俺のセリフをパクってやがる。
「お母さんが月に代わってお仕置きだからなんですか。こっちはルリレッドです。令和のパワーでねじ伏せますよ」
「俺の知っているルリレッドはクソ雑魚だったような……」
「むむ。見せましょうか? ルリレッドの本気を」
「ネカフェではお静かに」
「そうですね。追い出される迷惑行為はいけません。ここを追い出されたら行く当てもなし。ここでゆっくり学校が終わるのを待たなければなりませんもんね」
「え? 学校が終わるの待つの?」
予想外の言葉に、優乃も何を言っているんんだ? と言わんとする表情をする。
「靴も鞄も学校ですからね」
「あー。確かに」
「放課後になってからこっそり取りに行きましょう」
「はは。だな。放課後までここでのんびりするかぁ」
うーんと伸びをすると、ぷっ、と吹き出してしまった。
こちらの変な笑い方に優乃がこちらを向く。
「さっきまで絶望してたのに、優乃のおかげで今は楽しい気分だよ」
ちょっと気恥ずかしいセリフだけど、なんとか言い切って優乃を見た。
「ありがとう」
優乃は漫画を閉じて、俺の頭を撫でてくれる。
「無理、してるでしょ?」
見透かされたような瞳で優しく頭を撫でてくれる。
「無理なんてしてないさ」
「してます」
彼女には珍しく言い切ってくる。
「わかります。あんなことがあったのに。心当たりがないのに拒絶されて、気持ち悪がられて傷つかない人なんていません。意味がわからず人が離れていくのは、辛いですよね……」
彼女は今の状況を昔の自分に重ねているのだろうか。
夢を語ったクラスメイトに気持ち悪いと言われて孤独になってしまった自分と、今の俺を重ねているのだろうか。
優乃は撫でていた手を頭から頬に持ってくる。
ひんやりとしているのにどこか温かい優乃の手が心地良かった。
「わたしの前では強い枚方京太くんじゃなくても良いんですよ? 弱いあなたも見せてください」
「優乃……」
優しい言葉に俺の瞳から涙が出てくる。
「なんで……。俺ばっかり……。こんな目に……」
本音が出てしまう。弱々しい愚痴。
そんな俺の愚痴と涙をを拭ってくれて、優乃は大人のお姉さんみたいな表情をしてくれる。
「おいで」
包み込むような声に俺の体は自然と優乃の方に倒れ込む。
そんな俺を聖母のように包んでくれる彼女は耳元で囁いてくれる。
「楽しい時も辛い時も。いつでもわたしは京太くんの側にいます、わたしは京太くんの味方です。あなたは1人じゃありません。わたしが付いています。だから安心して」
「ゆ、の……」
彼女の優しい囁きが限界で、俺の瞳からは大量の涙が溢れ出た。
♢
ふと気がつくと頭に柔らかい感触があった。
枕とは違う。
柔らかくて、良い匂いがして。
ゆっくり目を開けると。
「おはようございます」
「優乃……?」
視線の先には優乃の顔が下から見えた。
「あれ……。俺……」
「子供みたいに泣きじゃくって疲れて寝てしまったのですよ」
「あ……」
先ほどのことを思い出し、起き上がる。
「ふふ。わたしの膝枕はどうでしたか?」
最高だったけどなんて言えないよな。
「そうでしょう。最高でしょう。なんせ美少女膝枕ですから」
「エスパーかよ」
感心した声が出てから気になることがあった。
「今、何時?」
「もう放課後の時間です」
「うそ!?」
スマホを見ると、16時を過ぎていた。
「マジかよ……」
そういえば昨日の夜は優乃と同じベッドだったので一睡もできなかったことを思い出した。
だからってネカフェで、しかも優乃の膝枕で7時間睡眠はえぐいだろ。
「相当疲れていたのですね」
「ご、ごめんな優乃。本当にごめん」
「どうして謝るのですか?」
言いながら彼女は漫画を見せてくる。
「こうしてゆっくりと漫画を読めて楽しかったですよ」
見ると、机には大量の漫画が積んであった。
「それに、京太くんの頭が丁度良い具合でしたので」
「丁度良い具合ってのは気になるが、まぁ優乃が良いのなら安心したよ」
「大丈夫です。でも、流石にそろそろ鞄を学校に取りに行かないといけない時間ですね」
「そうだな」
言いながらると、優乃も一緒に立ち上がる。
「ヒャうん」
小さな悲鳴が聞こえたと思うと、こちらに倒れ込んでくる。
「お、おい。大丈夫か?」
今度は俺が優乃を抱きしめてやる。
「しゅ、しゅみません。あ、足が……」
彼女の足を見ると、ピクピクしているのが伺えた。
ああ。そりゃ足も痺れるわな。
「なぁ優乃」
「は、はひ?」
「1回座る?」
聞くと、頑張って首を横に振ってくる。
「こ、このままで」
「大丈夫なのか?」
「こっちの方が早く治りそうな気がするので」
「そ、そう?」
絶対座って足を伸ばしてやった方が良いと思うのだけど。
「あのさ優乃……」
今から言うことに、無意識に力が入ってしまう。
「さっきの言葉。ありがとな」
「え……?」
「『味方』って言葉。すごい嬉しかったよ」
「はい……」
「ありがとう」
「はい」
改めて礼を言うと、沈黙が流れる。
このままの体勢が良いと言っていたが、まだ彼女の足は治らないのだろうか。
「まだ痺れてる?」
「はい」
「そっか」
「嘘です」
「え?」
いきなり自白をして、彼女が続ける。
「でも。もう少し、こうしていても良いですか?」
「優乃が満足するまで」
「じゃあ、もう少し」
そう言って彼女がより一層近づく。
彼女を抱きしめてから、もう少し、もう少しと言いながら結局、1時間抱き合っていたの知ったのはネカフェを出てからだった。
2人用のフラット席は意外にも広々としている。
これなら余裕で寝られるな。
好きなジュースをいれ、優乃は漫画を読んでいた。
「さっきまでの焦っていた姿が嘘みたいだな」
目を輝かせて漫画を読む彼女へ声が漏れてしまうと、視線を漫画に向けたまま口を開く。
「退学とかないない。絶対ないわ」
この子、さっきの俺のセリフをパクってやがる。
「お母さんが月に代わってお仕置きだからなんですか。こっちはルリレッドです。令和のパワーでねじ伏せますよ」
「俺の知っているルリレッドはクソ雑魚だったような……」
「むむ。見せましょうか? ルリレッドの本気を」
「ネカフェではお静かに」
「そうですね。追い出される迷惑行為はいけません。ここを追い出されたら行く当てもなし。ここでゆっくり学校が終わるのを待たなければなりませんもんね」
「え? 学校が終わるの待つの?」
予想外の言葉に、優乃も何を言っているんんだ? と言わんとする表情をする。
「靴も鞄も学校ですからね」
「あー。確かに」
「放課後になってからこっそり取りに行きましょう」
「はは。だな。放課後までここでのんびりするかぁ」
うーんと伸びをすると、ぷっ、と吹き出してしまった。
こちらの変な笑い方に優乃がこちらを向く。
「さっきまで絶望してたのに、優乃のおかげで今は楽しい気分だよ」
ちょっと気恥ずかしいセリフだけど、なんとか言い切って優乃を見た。
「ありがとう」
優乃は漫画を閉じて、俺の頭を撫でてくれる。
「無理、してるでしょ?」
見透かされたような瞳で優しく頭を撫でてくれる。
「無理なんてしてないさ」
「してます」
彼女には珍しく言い切ってくる。
「わかります。あんなことがあったのに。心当たりがないのに拒絶されて、気持ち悪がられて傷つかない人なんていません。意味がわからず人が離れていくのは、辛いですよね……」
彼女は今の状況を昔の自分に重ねているのだろうか。
夢を語ったクラスメイトに気持ち悪いと言われて孤独になってしまった自分と、今の俺を重ねているのだろうか。
優乃は撫でていた手を頭から頬に持ってくる。
ひんやりとしているのにどこか温かい優乃の手が心地良かった。
「わたしの前では強い枚方京太くんじゃなくても良いんですよ? 弱いあなたも見せてください」
「優乃……」
優しい言葉に俺の瞳から涙が出てくる。
「なんで……。俺ばっかり……。こんな目に……」
本音が出てしまう。弱々しい愚痴。
そんな俺の愚痴と涙をを拭ってくれて、優乃は大人のお姉さんみたいな表情をしてくれる。
「おいで」
包み込むような声に俺の体は自然と優乃の方に倒れ込む。
そんな俺を聖母のように包んでくれる彼女は耳元で囁いてくれる。
「楽しい時も辛い時も。いつでもわたしは京太くんの側にいます、わたしは京太くんの味方です。あなたは1人じゃありません。わたしが付いています。だから安心して」
「ゆ、の……」
彼女の優しい囁きが限界で、俺の瞳からは大量の涙が溢れ出た。
♢
ふと気がつくと頭に柔らかい感触があった。
枕とは違う。
柔らかくて、良い匂いがして。
ゆっくり目を開けると。
「おはようございます」
「優乃……?」
視線の先には優乃の顔が下から見えた。
「あれ……。俺……」
「子供みたいに泣きじゃくって疲れて寝てしまったのですよ」
「あ……」
先ほどのことを思い出し、起き上がる。
「ふふ。わたしの膝枕はどうでしたか?」
最高だったけどなんて言えないよな。
「そうでしょう。最高でしょう。なんせ美少女膝枕ですから」
「エスパーかよ」
感心した声が出てから気になることがあった。
「今、何時?」
「もう放課後の時間です」
「うそ!?」
スマホを見ると、16時を過ぎていた。
「マジかよ……」
そういえば昨日の夜は優乃と同じベッドだったので一睡もできなかったことを思い出した。
だからってネカフェで、しかも優乃の膝枕で7時間睡眠はえぐいだろ。
「相当疲れていたのですね」
「ご、ごめんな優乃。本当にごめん」
「どうして謝るのですか?」
言いながら彼女は漫画を見せてくる。
「こうしてゆっくりと漫画を読めて楽しかったですよ」
見ると、机には大量の漫画が積んであった。
「それに、京太くんの頭が丁度良い具合でしたので」
「丁度良い具合ってのは気になるが、まぁ優乃が良いのなら安心したよ」
「大丈夫です。でも、流石にそろそろ鞄を学校に取りに行かないといけない時間ですね」
「そうだな」
言いながらると、優乃も一緒に立ち上がる。
「ヒャうん」
小さな悲鳴が聞こえたと思うと、こちらに倒れ込んでくる。
「お、おい。大丈夫か?」
今度は俺が優乃を抱きしめてやる。
「しゅ、しゅみません。あ、足が……」
彼女の足を見ると、ピクピクしているのが伺えた。
ああ。そりゃ足も痺れるわな。
「なぁ優乃」
「は、はひ?」
「1回座る?」
聞くと、頑張って首を横に振ってくる。
「こ、このままで」
「大丈夫なのか?」
「こっちの方が早く治りそうな気がするので」
「そ、そう?」
絶対座って足を伸ばしてやった方が良いと思うのだけど。
「あのさ優乃……」
今から言うことに、無意識に力が入ってしまう。
「さっきの言葉。ありがとな」
「え……?」
「『味方』って言葉。すごい嬉しかったよ」
「はい……」
「ありがとう」
「はい」
改めて礼を言うと、沈黙が流れる。
このままの体勢が良いと言っていたが、まだ彼女の足は治らないのだろうか。
「まだ痺れてる?」
「はい」
「そっか」
「嘘です」
「え?」
いきなり自白をして、彼女が続ける。
「でも。もう少し、こうしていても良いですか?」
「優乃が満足するまで」
「じゃあ、もう少し」
そう言って彼女がより一層近づく。
彼女を抱きしめてから、もう少し、もう少しと言いながら結局、1時間抱き合っていたの知ったのはネカフェを出てからだった。
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