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第51話 いつも通りが心地良い
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優乃と相合傘で帰る。
プレミアルリレッドの傘が強い雨を守りながら、俺達を見守ってくれているような気がする。
しかし、キャラものとは思えないほどに頑丈な傘だ。
傘の骨が普通の傘より多いもんな。
これは観賞用ではなくちゃんと使用してくださいという公式からの思いが伝わる。
ルリレッド、おそるべし。
「そういえば京太くん」
「んー?」
いきなり名前を呼ばれてドキッとしちまったが、なんとか冷静を装いながら返事ができた。
「さっきの便所問題なんですけどね」
「便所問題って……」
「お母さんに、『女の子なんだから丁寧に《お》をつけなさい』って言われたんです。ですので、『便所言ってくるお』って言ったらしばかれました」
「あっはは! お前、ほんっとばかだなー!」
「流石にあれは自分でもばかだと思いましたねー」
ケタケタとふたりして笑い合う。
優乃との相合傘での下校。
それはドキドキで、甘酸っぱくて、じれじれな雰囲気ではない。
いつも通りだった。
それが心地良すぎる。
雨の中だけど、陽だまりの中にいるような気分になる。
「それでですね──あ……」
話の途中、優乃がなにかに気がついたみたいで、会話を一旦中止させた。
「どうかした?」
「あ、い、いえ……」
「そ?」
今の間は一体なんだったのだろうか。
「えいっ」
唐突に優乃がこちらに詰め寄ってくる。
「うお」
肩がぶつかる。
大した衝撃ではないけど、急激に優乃の匂いが強くなる。
こいつ、いつも良い匂いするな。ドキドキが加速しちまうだろうが、ちくしょう。
「きゅ、急になんだよ」
「いや、その……京太くんの肩が濡れておりましたので」
「肩?」
言われて自分の肩を見てみる。
「あ、めっちゃ濡れてる」
優乃との相合傘が楽しくて気がつかなったが、随分と濡れていた。
「えとえと……。わたしが濡れないようにこっち側に傾けてくれていたんです、よね?」
「無意識に優乃を濡らすわけにはいかないって思ったんだろうな」
「む、無意識に!?」
優乃は、ボンっと顔を赤くした。
「そ、そう、でしたか。無意識、に……」
「顔赤いぞ。もしかして濡れて風邪でも引いちまったか?」
「ち、違います。大丈夫です」
「大丈夫なのか? 濡れて風邪なんて引いたら元も子もないぞ。相合傘やめるか?」
「やめません! 全然大丈夫ですっ!」
ほら見てくださいと、謎の動きをしているのを見て、大丈夫なのだろうと思える。それで大丈夫と思える俺も、随分と優乃に染まったものだ。
「ですので、このまま相合傘で京太くんの家まで行きます」
「いやいや。優乃の家の方が先に着くんだから、そっち優先だろう。こんな雨の中、わざわざ遠回りする意味なんてないだろ」
「お忘れですか? 京太くんが傘を忘れた設定になっていることを」
「そ、それは……」
否定しようとしたら、美しく指を口元に持ってくる。
「設定は大事です」
流石は設定中毒者。
「ですので、わたしが京太くんの家まで送ります」
「遠回りになんぞ」
「良いじゃないですか」
優乃は微笑んで見せる。
「そっちの方が長く相合傘ができるのですから」
「!?」
その言葉に俺の顔は赤くなる。
「大丈夫ですか? 顔が赤くなりましたけど……。まさか、風邪!?」
こいつ無意識であれを言ったってか? なんちゅう女だ。最高かよ。
「だ、大丈夫だよ。大丈夫。全然大丈夫」
「ほんとです?」
「ほんとだって、ゴホッゴホッ」
やっべ。内心の興奮で唾が変な器官に入った。
ゲホッ、ゲホッっと大きく咳が出てしまう。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だっての」
「京太くんは変なところで無理をするクセがありますからね。大丈夫だと言っていても心配です」
「まじで大丈夫だよ」
「相合傘は名残惜しいですが、今は京太くんが心配です。サクッと京太くんのお家にレッツらゴーなのです」
本当に大丈夫なのだが、こちらの体調を気にしてくれた優乃は少しだけ歩幅を大きくしてくれた。
プレミアルリレッドの傘が強い雨を守りながら、俺達を見守ってくれているような気がする。
しかし、キャラものとは思えないほどに頑丈な傘だ。
傘の骨が普通の傘より多いもんな。
これは観賞用ではなくちゃんと使用してくださいという公式からの思いが伝わる。
ルリレッド、おそるべし。
「そういえば京太くん」
「んー?」
いきなり名前を呼ばれてドキッとしちまったが、なんとか冷静を装いながら返事ができた。
「さっきの便所問題なんですけどね」
「便所問題って……」
「お母さんに、『女の子なんだから丁寧に《お》をつけなさい』って言われたんです。ですので、『便所言ってくるお』って言ったらしばかれました」
「あっはは! お前、ほんっとばかだなー!」
「流石にあれは自分でもばかだと思いましたねー」
ケタケタとふたりして笑い合う。
優乃との相合傘での下校。
それはドキドキで、甘酸っぱくて、じれじれな雰囲気ではない。
いつも通りだった。
それが心地良すぎる。
雨の中だけど、陽だまりの中にいるような気分になる。
「それでですね──あ……」
話の途中、優乃がなにかに気がついたみたいで、会話を一旦中止させた。
「どうかした?」
「あ、い、いえ……」
「そ?」
今の間は一体なんだったのだろうか。
「えいっ」
唐突に優乃がこちらに詰め寄ってくる。
「うお」
肩がぶつかる。
大した衝撃ではないけど、急激に優乃の匂いが強くなる。
こいつ、いつも良い匂いするな。ドキドキが加速しちまうだろうが、ちくしょう。
「きゅ、急になんだよ」
「いや、その……京太くんの肩が濡れておりましたので」
「肩?」
言われて自分の肩を見てみる。
「あ、めっちゃ濡れてる」
優乃との相合傘が楽しくて気がつかなったが、随分と濡れていた。
「えとえと……。わたしが濡れないようにこっち側に傾けてくれていたんです、よね?」
「無意識に優乃を濡らすわけにはいかないって思ったんだろうな」
「む、無意識に!?」
優乃は、ボンっと顔を赤くした。
「そ、そう、でしたか。無意識、に……」
「顔赤いぞ。もしかして濡れて風邪でも引いちまったか?」
「ち、違います。大丈夫です」
「大丈夫なのか? 濡れて風邪なんて引いたら元も子もないぞ。相合傘やめるか?」
「やめません! 全然大丈夫ですっ!」
ほら見てくださいと、謎の動きをしているのを見て、大丈夫なのだろうと思える。それで大丈夫と思える俺も、随分と優乃に染まったものだ。
「ですので、このまま相合傘で京太くんの家まで行きます」
「いやいや。優乃の家の方が先に着くんだから、そっち優先だろう。こんな雨の中、わざわざ遠回りする意味なんてないだろ」
「お忘れですか? 京太くんが傘を忘れた設定になっていることを」
「そ、それは……」
否定しようとしたら、美しく指を口元に持ってくる。
「設定は大事です」
流石は設定中毒者。
「ですので、わたしが京太くんの家まで送ります」
「遠回りになんぞ」
「良いじゃないですか」
優乃は微笑んで見せる。
「そっちの方が長く相合傘ができるのですから」
「!?」
その言葉に俺の顔は赤くなる。
「大丈夫ですか? 顔が赤くなりましたけど……。まさか、風邪!?」
こいつ無意識であれを言ったってか? なんちゅう女だ。最高かよ。
「だ、大丈夫だよ。大丈夫。全然大丈夫」
「ほんとです?」
「ほんとだって、ゴホッゴホッ」
やっべ。内心の興奮で唾が変な器官に入った。
ゲホッ、ゲホッっと大きく咳が出てしまう。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だっての」
「京太くんは変なところで無理をするクセがありますからね。大丈夫だと言っていても心配です」
「まじで大丈夫だよ」
「相合傘は名残惜しいですが、今は京太くんが心配です。サクッと京太くんのお家にレッツらゴーなのです」
本当に大丈夫なのだが、こちらの体調を気にしてくれた優乃は少しだけ歩幅を大きくしてくれた。
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