52 / 61
第52話 これは完全にフラグです(東堂優乃視点)
しおりを挟む
「ただいまぁ」
東堂家に帰って来たわたし、東堂優乃の帰りの挨拶に誰も反応を示さなかった。
靴を見ると、優美もお母さんも帰って来ていない様子。
今日は優美の家庭教師の日じゃないから寄り道でもして帰っているのかな。お母さんも仕事の日なので家を空けている。
「……ちめたっ」
先ほどまで活躍してくれていたプレミアルリレッドの傘の雫が靴下に落ちてくる。
雫で染みたところを見ながら先ほどのことを思い出す。
「くぅぉううぅ」
悶絶しそうになるのをなんとか耐えた。
「無意識に傘をこっちに寄せてくるとか、どんだけイケメンなんですか……」
先ほどの相合傘の中でのこと。京太くん自らを犠牲にして、わたしを雨から守ってくれた。
「イケメン過ぎますよ、京太くん」
そんなの好きが大好きになって、大草原大爆発じゃないですか。
「……自分で言っていて意味不明ですね。
ブンブンと意味不明なことを玄関で呟いてしまう。それほどまでに彼との相合傘は刺激が強かった。
傘を玄関の傘立てにしまおうとして、ピタッと手が止まった。
「よくよく考えたら、京太くんの家に初めて行った……」
中学からの同級生。学区が同じ。家の近所。徒歩圏内。同じ河川敷沿いの家。
わたしの家に近い普通の一軒家だったので、特に意識してなかった。今思うと初めて行った。
「ふぇ、ふぇふぇふぇ。京太くんのお家……。ふぇ、ふぇ」
思わぬところから京太くんのお家を知ることができました。
中学から憧れており、高校生になって初恋の彼の家を知ることができて嬉しい。
も、もちろん、ストーカーみたいなことは絶対にしない。普通に知れたってことが凄く嬉しかった。
わたしは鼻歌まじりに、ようやくと傘を置いて家に上がって行った。
♢
「うっしゃー! 5キルっ! うぇー!」
今日は久しぶりにシューティングゲームをやった。あまりシューティングは得意じゃないのだけど、今日はなんだか妙に冴える。
いつもなら、やられまくっての萎え落ち。癒しを求め、ギャルゲー、乙女ゲーからの漫画、ラノベで寝落ち。
という流れだけど、今日はめちゃくちゃ調子がいいらしい。
これも京太くんとの相合傘パワーが成せる技。
「おら、おら、おら、おらっ! 相合傘の愛のパワーをおすそ分けですよ!!」
ヤベェ。めちゃくちゃ調子が良い。自己最高記録だ。
ノリに乗っていると、机に置いていたスマホが急に踊り狂う。
「うおっ! な、なんすっか!?」
普段鳴らないスマホのくせに、こういう時に鳴りやがって。
どうせくだらない広告メールでしょう。
そう思っていたが、スマホのダンスは止まらない。
その長さは電話みたいだ。
どうせ、くだらない勧誘でしょう。
今は自己最高を塗り替えるチャンス。大人の仕事ノルマに付き合っている暇なんてないのだ。
そう思いながら、チラッとスマホを見ると、『枚方京太』と書かれていた。
「ほぉら。愛のかたまりである京太くんからでした。ざーんねんっ。今、あなたとの愛を全世界へ曝け出しています。相手をしている暇はありませんゆえ、首を洗って一昨日きやがれってんです!」
そして、コントローラーを置いた。
「すみません! 一昨日から来ました!」
『え? 優乃ってタイムトラベラーなの?』
開幕1番で訳のわからないことを言ってしまった。
『優乃のもしもしって独特だよな』
楽しそうに笑う京太くんの声でわたしの脳がとろけそうになる。
「あ、あはは……。それよりも、どうかしましたか?」
『LOINでも良かったんだけど、その、あの……』
珍しく口ごもる京太くん。
レアな彼を生で見てみたかったが、電話でも十分だ。ご馳走さまです。
『体、冷えてないかなぁ、とか?』
「え……?」
どうして疑問形なのだろうかと思ったが、このイケメンはどこまでイケメンなのでしょうか。
帰ってなお、わたしの体調を気遣ってくれるとか。
今しがた、シューティングゲームのキャラがやられてしまっているが、そんなことどうでも良い。
『あ、い、いや、わざわざ電話でキモかったな。ご、ごめん。それだけというか、そうじゃないというか、なんていうんだろ。ええっと』
京太くんが電話越しで焦っているのが伝わってくる。
なんで焦っているのかわからないが、京太くんが、『ゴホッゴホッ』と大きく咳き込む声が聞こえてくる。
「京太くん、大丈夫ですか?」
『あ、ああ、だ、大丈夫。これはそういう咳じゃないというか……』
「熱とかないですか?」
本気で心配してしまう。さっき雨に濡れた影響だろうか。
『大丈夫。全然平気だよ』
それはフラグでしかないのですよ。
『ご、ごめんな、いきなり電話して。ゴホッ。じゃ、じゃあ、また』
「は、はい。また明日」
言い合って通話を終了した。
スマホを机に置いてから、ゲームーオーバーでホーム画面に戻ったモニターを見つめる。
「あの咳の感じはやっぱり風邪では? ……はっ!?」
その時、わたしの脳裏に1つの未来が見えた。
「これ、京太くんの家で看病イベントが発動するのでは!?」
この流れは確実に京太くんを看病するイベントでしょう!
相合傘。体が濡れる。京太くんの家を知る。電話越しの咳。ここまで完璧な流れ。
神は全てを見据えていた。
「こうしてはいられません!」
わたしはありったけの看病イベントを載せた漫画やアニメをかき集めた。
そして、お母さんの仕事着の予備を拝借することにする。
バレたら死ぬだろうが、そんなことはどうでもいい。
お母さんの仕事は看護師。ナースだ。
わたしはナース服に袖を通した。
ふむ。胸の辺りが少し窮屈ですね。
ふっ。わたしのおっぱいは既にお母さんを超えているようですね。
この母を越えし巨乳ナースで、京太くんはもうわたしのことだけしか考えられなくなるでしょう。
「京太くん。出張ナースですよ。今日は1日看病しますね♡」
よし。これだっ!
これで京太くんをメロメロにしてやります♪
東堂家に帰って来たわたし、東堂優乃の帰りの挨拶に誰も反応を示さなかった。
靴を見ると、優美もお母さんも帰って来ていない様子。
今日は優美の家庭教師の日じゃないから寄り道でもして帰っているのかな。お母さんも仕事の日なので家を空けている。
「……ちめたっ」
先ほどまで活躍してくれていたプレミアルリレッドの傘の雫が靴下に落ちてくる。
雫で染みたところを見ながら先ほどのことを思い出す。
「くぅぉううぅ」
悶絶しそうになるのをなんとか耐えた。
「無意識に傘をこっちに寄せてくるとか、どんだけイケメンなんですか……」
先ほどの相合傘の中でのこと。京太くん自らを犠牲にして、わたしを雨から守ってくれた。
「イケメン過ぎますよ、京太くん」
そんなの好きが大好きになって、大草原大爆発じゃないですか。
「……自分で言っていて意味不明ですね。
ブンブンと意味不明なことを玄関で呟いてしまう。それほどまでに彼との相合傘は刺激が強かった。
傘を玄関の傘立てにしまおうとして、ピタッと手が止まった。
「よくよく考えたら、京太くんの家に初めて行った……」
中学からの同級生。学区が同じ。家の近所。徒歩圏内。同じ河川敷沿いの家。
わたしの家に近い普通の一軒家だったので、特に意識してなかった。今思うと初めて行った。
「ふぇ、ふぇふぇふぇ。京太くんのお家……。ふぇ、ふぇ」
思わぬところから京太くんのお家を知ることができました。
中学から憧れており、高校生になって初恋の彼の家を知ることができて嬉しい。
も、もちろん、ストーカーみたいなことは絶対にしない。普通に知れたってことが凄く嬉しかった。
わたしは鼻歌まじりに、ようやくと傘を置いて家に上がって行った。
♢
「うっしゃー! 5キルっ! うぇー!」
今日は久しぶりにシューティングゲームをやった。あまりシューティングは得意じゃないのだけど、今日はなんだか妙に冴える。
いつもなら、やられまくっての萎え落ち。癒しを求め、ギャルゲー、乙女ゲーからの漫画、ラノベで寝落ち。
という流れだけど、今日はめちゃくちゃ調子がいいらしい。
これも京太くんとの相合傘パワーが成せる技。
「おら、おら、おら、おらっ! 相合傘の愛のパワーをおすそ分けですよ!!」
ヤベェ。めちゃくちゃ調子が良い。自己最高記録だ。
ノリに乗っていると、机に置いていたスマホが急に踊り狂う。
「うおっ! な、なんすっか!?」
普段鳴らないスマホのくせに、こういう時に鳴りやがって。
どうせくだらない広告メールでしょう。
そう思っていたが、スマホのダンスは止まらない。
その長さは電話みたいだ。
どうせ、くだらない勧誘でしょう。
今は自己最高を塗り替えるチャンス。大人の仕事ノルマに付き合っている暇なんてないのだ。
そう思いながら、チラッとスマホを見ると、『枚方京太』と書かれていた。
「ほぉら。愛のかたまりである京太くんからでした。ざーんねんっ。今、あなたとの愛を全世界へ曝け出しています。相手をしている暇はありませんゆえ、首を洗って一昨日きやがれってんです!」
そして、コントローラーを置いた。
「すみません! 一昨日から来ました!」
『え? 優乃ってタイムトラベラーなの?』
開幕1番で訳のわからないことを言ってしまった。
『優乃のもしもしって独特だよな』
楽しそうに笑う京太くんの声でわたしの脳がとろけそうになる。
「あ、あはは……。それよりも、どうかしましたか?」
『LOINでも良かったんだけど、その、あの……』
珍しく口ごもる京太くん。
レアな彼を生で見てみたかったが、電話でも十分だ。ご馳走さまです。
『体、冷えてないかなぁ、とか?』
「え……?」
どうして疑問形なのだろうかと思ったが、このイケメンはどこまでイケメンなのでしょうか。
帰ってなお、わたしの体調を気遣ってくれるとか。
今しがた、シューティングゲームのキャラがやられてしまっているが、そんなことどうでも良い。
『あ、い、いや、わざわざ電話でキモかったな。ご、ごめん。それだけというか、そうじゃないというか、なんていうんだろ。ええっと』
京太くんが電話越しで焦っているのが伝わってくる。
なんで焦っているのかわからないが、京太くんが、『ゴホッゴホッ』と大きく咳き込む声が聞こえてくる。
「京太くん、大丈夫ですか?」
『あ、ああ、だ、大丈夫。これはそういう咳じゃないというか……』
「熱とかないですか?」
本気で心配してしまう。さっき雨に濡れた影響だろうか。
『大丈夫。全然平気だよ』
それはフラグでしかないのですよ。
『ご、ごめんな、いきなり電話して。ゴホッ。じゃ、じゃあ、また』
「は、はい。また明日」
言い合って通話を終了した。
スマホを机に置いてから、ゲームーオーバーでホーム画面に戻ったモニターを見つめる。
「あの咳の感じはやっぱり風邪では? ……はっ!?」
その時、わたしの脳裏に1つの未来が見えた。
「これ、京太くんの家で看病イベントが発動するのでは!?」
この流れは確実に京太くんを看病するイベントでしょう!
相合傘。体が濡れる。京太くんの家を知る。電話越しの咳。ここまで完璧な流れ。
神は全てを見据えていた。
「こうしてはいられません!」
わたしはありったけの看病イベントを載せた漫画やアニメをかき集めた。
そして、お母さんの仕事着の予備を拝借することにする。
バレたら死ぬだろうが、そんなことはどうでもいい。
お母さんの仕事は看護師。ナースだ。
わたしはナース服に袖を通した。
ふむ。胸の辺りが少し窮屈ですね。
ふっ。わたしのおっぱいは既にお母さんを超えているようですね。
この母を越えし巨乳ナースで、京太くんはもうわたしのことだけしか考えられなくなるでしょう。
「京太くん。出張ナースですよ。今日は1日看病しますね♡」
よし。これだっ!
これで京太くんをメロメロにしてやります♪
13
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる