彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと

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第52話 これは完全にフラグです(東堂優乃視点)

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「ただいまぁ」

 東堂家に帰って来たわたし、東堂優乃の帰りの挨拶に誰も反応を示さなかった。

 靴を見ると、優美もお母さんも帰って来ていない様子。

 今日は優美の家庭教師の日じゃないから寄り道でもして帰っているのかな。お母さんも仕事の日なので家を空けている。

「……ちめたっ」

 先ほどまで活躍してくれていたプレミアルリレッドの傘の雫が靴下に落ちてくる。

 雫で染みたところを見ながら先ほどのことを思い出す。

「くぅぉううぅ」

 悶絶しそうになるのをなんとか耐えた。

「無意識に傘をこっちに寄せてくるとか、どんだけイケメンなんですか……」

 先ほどの相合傘の中でのこと。京太くん自らを犠牲にして、わたしを雨から守ってくれた。

「イケメン過ぎますよ、京太くん」

 そんなの好きが大好きになって、大草原大爆発じゃないですか。

「……自分で言っていて意味不明ですね。
 
 ブンブンと意味不明なことを玄関で呟いてしまう。それほどまでに彼との相合傘は刺激が強かった。

 傘を玄関の傘立てにしまおうとして、ピタッと手が止まった。

「よくよく考えたら、京太くんの家に初めて行った……」

 中学からの同級生。学区が同じ。家の近所。徒歩圏内。同じ河川敷沿いの家。

 わたしの家に近い普通の一軒家だったので、特に意識してなかった。今思うと初めて行った。

「ふぇ、ふぇふぇふぇ。京太くんのお家……。ふぇ、ふぇ」

 思わぬところから京太くんのお家を知ることができました。

 中学から憧れており、高校生になって初恋の彼の家を知ることができて嬉しい。

 も、もちろん、ストーカーみたいなことは絶対にしない。普通に知れたってことが凄く嬉しかった。

 わたしは鼻歌まじりに、ようやくと傘を置いて家に上がって行った。







「うっしゃー! 5キルっ! うぇー!」

 今日は久しぶりにシューティングゲームをやった。あまりシューティングは得意じゃないのだけど、今日はなんだか妙に冴える。

 いつもなら、やられまくっての萎え落ち。癒しを求め、ギャルゲー、乙女ゲーからの漫画、ラノベで寝落ち。

 という流れだけど、今日はめちゃくちゃ調子がいいらしい。

 これも京太くんとの相合傘パワーが成せる技。

「おら、おら、おら、おらっ! 相合傘の愛のパワーをおすそ分けですよ!!」

 ヤベェ。めちゃくちゃ調子が良い。自己最高記録だ。

 ノリに乗っていると、机に置いていたスマホが急に踊り狂う。

「うおっ! な、なんすっか!?」

 普段鳴らないスマホのくせに、こういう時に鳴りやがって。

 どうせくだらない広告メールでしょう。

 そう思っていたが、スマホのダンスは止まらない。

 その長さは電話みたいだ。

 どうせ、くだらない勧誘でしょう。

 今は自己最高を塗り替えるチャンス。大人の仕事ノルマに付き合っている暇なんてないのだ。

 そう思いながら、チラッとスマホを見ると、『枚方京太』と書かれていた。

「ほぉら。愛のかたまりである京太くんからでした。ざーんねんっ。今、あなたとの愛を全世界へ曝け出しています。相手をしている暇はありませんゆえ、首を洗って一昨日きやがれってんです!」

 そして、コントローラーを置いた。

「すみません! 一昨日から来ました!」
『え? 優乃ってタイムトラベラーなの?』

 開幕1番で訳のわからないことを言ってしまった。

『優乃のもしもしって独特だよな』

 楽しそうに笑う京太くんの声でわたしの脳がとろけそうになる。

「あ、あはは……。それよりも、どうかしましたか?」
『LOINでも良かったんだけど、その、あの……』

 珍しく口ごもる京太くん。

 レアな彼を生で見てみたかったが、電話でも十分だ。ご馳走さまです。

『体、冷えてないかなぁ、とか?』
「え……?」

 どうして疑問形なのだろうかと思ったが、このイケメンはどこまでイケメンなのでしょうか。

 帰ってなお、わたしの体調を気遣ってくれるとか。

 今しがた、シューティングゲームのキャラがやられてしまっているが、そんなことどうでも良い。

『あ、い、いや、わざわざ電話でキモかったな。ご、ごめん。それだけというか、そうじゃないというか、なんていうんだろ。ええっと』

 京太くんが電話越しで焦っているのが伝わってくる。

 なんで焦っているのかわからないが、京太くんが、『ゴホッゴホッ』と大きく咳き込む声が聞こえてくる。

「京太くん、大丈夫ですか?」
『あ、ああ、だ、大丈夫。これはそういう咳じゃないというか……』
「熱とかないですか?」

 本気で心配してしまう。さっき雨に濡れた影響だろうか。

『大丈夫。全然平気だよ』

 それはフラグでしかないのですよ。

『ご、ごめんな、いきなり電話して。ゴホッ。じゃ、じゃあ、また』
「は、はい。また明日」

 言い合って通話を終了した。

 スマホを机に置いてから、ゲームーオーバーでホーム画面に戻ったモニターを見つめる。

「あの咳の感じはやっぱり風邪では? ……はっ!?」

 その時、わたしの脳裏に1つの未来が見えた。

「これ、京太くんの家で看病イベントが発動するのでは!?」

 この流れは確実に京太くんを看病するイベントでしょう!

 相合傘。体が濡れる。京太くんの家を知る。電話越しの咳。ここまで完璧な流れ。

 神は全てを見据えていた。

「こうしてはいられません!」

 わたしはありったけの看病イベントを載せた漫画やアニメをかき集めた。

 そして、お母さんの仕事着の予備を拝借することにする。

 バレたら死ぬだろうが、そんなことはどうでもいい。

 お母さんの仕事は看護師。ナースだ。

 わたしはナース服に袖を通した。

 ふむ。胸の辺りが少し窮屈ですね。

 ふっ。わたしのおっぱいは既にお母さんを超えているようですね。

 この母を越えし巨乳ナースで、京太くんはもうわたしのことだけしか考えられなくなるでしょう。

「京太くん。出張ナースですよ。今日は1日看病しますね♡」

 よし。これだっ!

 これで京太くんをメロメロにしてやります♪
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