3 / 97
勇者の力を剥奪された幼馴染
しおりを挟む
エリーの体から光が抜け、女神様の手に集まっていく。
それはほんの数秒だった。
やがてエリーの体ががくりと崩れる。
「え? 嘘、でしょ……?」
自分の身に起こっていることが信じられないといった様子のエリー。
女神様が悲しげな様子のままつぶやく。
「光の勇者の資格を剥奪しました。今のあなたは普通の人間──いえ、普通以下の人間です。これからはどうか慎ましく生きてください」
「は、はぁあぁあぁぁぁぁ!?」
エリーの絶叫がダンジョン中に響き渡った。
「なに勝手なことをしてるのよ! さっさと返しなさいよ!」
「……そのような性格に育ってしまったのも、私が安易に力を与えてしまったからなのでしょうね。罪深い私をどうかお許しください。そして、これからはどうか、心を入れ替えて真っ当な人生を歩むことを願っております……」
そう告げると、女神様は突然いなくなった。
まるで最初からそこにはいなかったかのようだった。
「は? ふ、ふざけんなコラぁ!! 人のもの勝手に盗んで行くんじゃないわよ! 返しやがれクソ女神!!」
エリーの罵倒が響くが、女神様が現れる気配はない。
「くそっ、くそっ! 意味わかんない! なんなのアイツ! 次あったら絶対ぶっ殺してやる!」
女神様をぶっ殺したら世界が滅んでしまうはずだが……。
エリーは立ち上がろうとしたが、なぜか体が動かない様だった。
俺に向けて鋭い視線を突き刺してくる。
「ちょっとイクス、アタシにステータスを使って」
いきなりそんなことを命令してきた。
「えっ? 自分で使えばいいのでは」
「できないから言ってるんじゃない! そんなの自分で使えたら自分で使うに決まってるでしょ! そんな簡単なことくらい言われないでも分かりなさいよバカ!」
よくわからないが、エリーはステータスを使うこともできないらしい。
それはどんな人間でも最初に使えるようになる、初歩中の初歩のスキルなのだが……。
とにかく、言われた通りにステータスをエリーに向けて使った。
エリー=クローゼナイツ
レベル1
職業:なし
攻撃:0
魔力:0
防御:0
精神:0
素早:0
幸運:0
表示されたステータスを見て愕然とする。
「ちょっと、なにぼーっとしてんのよ!」
エリーの罵倒で我に返る。
俺はエリーの様にステータスを人に見せることはできない。
だから見たままの数字を伝えたのだが……。
「れ、れべる1!!??」
驚きの声が上がる。
当然だ。
なにしろ低すぎる。
いや、低すぎるなんてものじゃない。
生まれたばかりの赤子でさえレベル5はあるのが普通なんだ。
今のエリーは生まれたての子供以下。
まさしく人類最弱のステータスにされていた。
「嘘ついてるんじゃないわよ!」
エリーがそういうのもわかる。
俺だって自分が見たものを信じられない。それくらいにありえないことなんだ。
しかし。
俺は目の前で倒れたままのエリーを見ていた。
光の勇者の力を剥奪された瞬間、エリーは床に倒れて動けなくなった。
俺はてっきり、力を取られた反動で倒れたのだと思っていたのだが……。
もしも本当にレベルが1だったとしたら、その理由も想像がつく。
自分の装備が重すぎて動けないのだ。
「……エリー、ちょっと立ってみてくれないか」
試しに尋ねてみると、ギリッとした鋭い目で睨み付けてきた。
「うっさいわね、動けないのよ! あのクソ女神が何かしやがったんだわ!!」
どうやらまだ自分の身に起こっていることがわからないらしい。
「いいからさっさと起こしなさいよ! ほんとに気が利かない奴隷ね!」
「はいはい」
エリーの罵倒には慣れている。
今更この程度で腹を立てたりはしない。
だけどその時、俺はあることに気がついた。
手の甲に紋章が残っている。
絶対服従のスキル、<ギアス>の効果がまだ残っていたのだ。
本来なら契約を交わしたことでそれを守らせるスキルだが、まだその契約をしていないので、効果が発揮される前の契約段階で残っていた。
エリーは光の勇者を剥奪されてしまったが、すでにスキルについては効果が消える様なことはなかったらしい。
これを使えば……。
俺はエリーに向けて告げる。
「エリー、俺と契約をしないか」
「はあ? アンタこんな時になに言ってるの」
「<ギアス>のスキルを使おうとしただろう。その効果がまだ途中で残ってるんだ」
言われてようやくエリーも自分の手に残されている紋章に気がついた。
「そんなにアタシの奴隷になりたいの? まあどうしてもっていうなら、奴隷にしてあげてもいいけど」
どうやらまだ自分の立場がわかっていないらしい。
だから俺は教えてやった。
「逆だよ。エリーが俺の奴隷になるんだ」
それはほんの数秒だった。
やがてエリーの体ががくりと崩れる。
「え? 嘘、でしょ……?」
自分の身に起こっていることが信じられないといった様子のエリー。
女神様が悲しげな様子のままつぶやく。
「光の勇者の資格を剥奪しました。今のあなたは普通の人間──いえ、普通以下の人間です。これからはどうか慎ましく生きてください」
「は、はぁあぁあぁぁぁぁ!?」
エリーの絶叫がダンジョン中に響き渡った。
「なに勝手なことをしてるのよ! さっさと返しなさいよ!」
「……そのような性格に育ってしまったのも、私が安易に力を与えてしまったからなのでしょうね。罪深い私をどうかお許しください。そして、これからはどうか、心を入れ替えて真っ当な人生を歩むことを願っております……」
そう告げると、女神様は突然いなくなった。
まるで最初からそこにはいなかったかのようだった。
「は? ふ、ふざけんなコラぁ!! 人のもの勝手に盗んで行くんじゃないわよ! 返しやがれクソ女神!!」
エリーの罵倒が響くが、女神様が現れる気配はない。
「くそっ、くそっ! 意味わかんない! なんなのアイツ! 次あったら絶対ぶっ殺してやる!」
女神様をぶっ殺したら世界が滅んでしまうはずだが……。
エリーは立ち上がろうとしたが、なぜか体が動かない様だった。
俺に向けて鋭い視線を突き刺してくる。
「ちょっとイクス、アタシにステータスを使って」
いきなりそんなことを命令してきた。
「えっ? 自分で使えばいいのでは」
「できないから言ってるんじゃない! そんなの自分で使えたら自分で使うに決まってるでしょ! そんな簡単なことくらい言われないでも分かりなさいよバカ!」
よくわからないが、エリーはステータスを使うこともできないらしい。
それはどんな人間でも最初に使えるようになる、初歩中の初歩のスキルなのだが……。
とにかく、言われた通りにステータスをエリーに向けて使った。
エリー=クローゼナイツ
レベル1
職業:なし
攻撃:0
魔力:0
防御:0
精神:0
素早:0
幸運:0
表示されたステータスを見て愕然とする。
「ちょっと、なにぼーっとしてんのよ!」
エリーの罵倒で我に返る。
俺はエリーの様にステータスを人に見せることはできない。
だから見たままの数字を伝えたのだが……。
「れ、れべる1!!??」
驚きの声が上がる。
当然だ。
なにしろ低すぎる。
いや、低すぎるなんてものじゃない。
生まれたばかりの赤子でさえレベル5はあるのが普通なんだ。
今のエリーは生まれたての子供以下。
まさしく人類最弱のステータスにされていた。
「嘘ついてるんじゃないわよ!」
エリーがそういうのもわかる。
俺だって自分が見たものを信じられない。それくらいにありえないことなんだ。
しかし。
俺は目の前で倒れたままのエリーを見ていた。
光の勇者の力を剥奪された瞬間、エリーは床に倒れて動けなくなった。
俺はてっきり、力を取られた反動で倒れたのだと思っていたのだが……。
もしも本当にレベルが1だったとしたら、その理由も想像がつく。
自分の装備が重すぎて動けないのだ。
「……エリー、ちょっと立ってみてくれないか」
試しに尋ねてみると、ギリッとした鋭い目で睨み付けてきた。
「うっさいわね、動けないのよ! あのクソ女神が何かしやがったんだわ!!」
どうやらまだ自分の身に起こっていることがわからないらしい。
「いいからさっさと起こしなさいよ! ほんとに気が利かない奴隷ね!」
「はいはい」
エリーの罵倒には慣れている。
今更この程度で腹を立てたりはしない。
だけどその時、俺はあることに気がついた。
手の甲に紋章が残っている。
絶対服従のスキル、<ギアス>の効果がまだ残っていたのだ。
本来なら契約を交わしたことでそれを守らせるスキルだが、まだその契約をしていないので、効果が発揮される前の契約段階で残っていた。
エリーは光の勇者を剥奪されてしまったが、すでにスキルについては効果が消える様なことはなかったらしい。
これを使えば……。
俺はエリーに向けて告げる。
「エリー、俺と契約をしないか」
「はあ? アンタこんな時になに言ってるの」
「<ギアス>のスキルを使おうとしただろう。その効果がまだ途中で残ってるんだ」
言われてようやくエリーも自分の手に残されている紋章に気がついた。
「そんなにアタシの奴隷になりたいの? まあどうしてもっていうなら、奴隷にしてあげてもいいけど」
どうやらまだ自分の立場がわかっていないらしい。
だから俺は教えてやった。
「逆だよ。エリーが俺の奴隷になるんだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる