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俺は人間が好きだけど
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俺は確認したいことがあって、ギルドのロビーへとやってきていた。
エリーやシェイドもいないため俺一人だ。
みんなにはやってもらうことがあったからな。
ギルド内は今日も多くの冒険者がいてにぎわっている。
俺は彼らの話を聞きながらクエストボードへと目を向けた。
といってもクエストを受けたいわけじゃない。
確認したいことがあって調べていたんだが、そこにシャルロットが近づいてきた。
「御主人様、何をしているのですか?」
あれ以来シャルロットはずっとこの調子だ。
一時の気の迷いかとも思ったんだが、そうではないらしかった。
俺が命令したわけじゃないから、これがシャルロットの本性ということになるのだろうか。
まだ御主人様と呼ばれることに慣れていないので落ち着かない。
「まあ、ちょっと確認をな」
ギルドのクエストは、周辺の人たちが困っていることを依頼してくる。
依頼票を眺めていれば、この辺りでどんなことが起こっているのか、おおまかにではあるが知ることができるんだ。
相変わらずモンスターの討伐依頼が多い。
被害自体は出ていないようだが、凶悪なモンスターが多く目撃されているので討伐してほしいといった内容が多かった。
最近あまりにも頻繁に見かけるので、誰かが操っているのではないかとする依頼書もあったくらいだ。
「御主人様、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」
「ああ、いいぞ。なんだ」
「御主人様はどの動物がお好きなのですか?」
えぇ……。なんでいきなりそんなことを聞いてきたんだ……。
今のはもっと違うことを聞く流れじゃなかった?
というか当然のようにペット前提なんだな。
「俺は普通に人間が一番好きだけど」
大体の人がそうだとは思うのだが。
しかし俺がそう答えると、シャルロットの体が小刻みに震えはじめた。
「ニンゲン……コワイ……ニンゲン……コワイ……」
うわ言のように繰り返している。
どうやら強烈なトラウマが植え付けられているらしい。
だからペットになりたいとか言い出したのだろうか……。
「………………犬が好きかな」
「──っ!」
青ざめていたシャルロットの顔がぱああっと輝いた。
「ありがとうございます! これからもよろしくお願いしますワン!」
「いや、語尾はいらないよ。そもそも成りきるという意味でいったら、話をする方が不自然なんだし。だから普通で……」
「はっ、そうですね……! ワン、ワンワン!」
悪化してしまった。
どうしたらいいんだと俺が頭を抱えていると、いつのまにか周囲の視線が俺たちに集まっていた。
忘れていたけどここは冒険者ギルドの中なんだよな。
先日の襲撃事件はかなりの話題になっていた。当然知っている人も多い。
それにシャルロットはかなりの美人だからな。
目立つのは当然だった。
「おい、あれ襲撃事件の首謀者だろ」
「相当危険な奴だって話だったが、調教して犬のように扱ってるぞ」
「人目も気にせずに犬に成りきるなんて……。いったいどんな調教をすればあそこまで落ちるんだ……」
「エリーはあれでもイクスさんはまともだって信じてたのに……」
なんか俺への風評被害も発生しているんだが……。
「エリーだけじゃ満足できなくて、あんな美人にまで手を出してるのかよ……」
「噂だと小さな女の子にまで手を出してるらしい」
「美形の男を部屋に連れ込むところを見たことがあるぞ」
「やば。見境なしかよ」
俺もうこの街にいられないかもしれない。
「あぁ……こんなにたくさんの方に見つめていただけるなんて……」
シャルロットは喜んでいるようだった。
その鋼のメンタルがうらやましい。
◇
その後、エリーとシェイドが戻ってきた。
準備ができたらしい。
そのため俺たちは街を出発した。
といっても馬車に乗るとかそういう必要はない。
シェイドの能力で一度行ったことのある場所になら簡単にいけるからな。
今回行く場所も、以前にモンスター討伐のクエストで来た場所だ。
ここにきたのはとある計画があったから。
もともとシャルロットを助けたのも、その計画のためだったんだ。
その内容をシャルロットに教えた時は、喜んで受け入れてくれた。
「とうとうこの日が来たんですね。さすがは御主人様です」
「なに色目使ってるのよこの女」
エリーはご機嫌斜めだ。
まあ今日まで働いてくれたのはエリーとシェイドだからな。
実は2人には、この辺りでモンスターを操ってもらっていた。
おかげでモンスターの目撃情報も増えていたし、何者かが操っているのではという噂もいい感じに流れている。
そしてここは帝国の首都に近い場所でもあるんだ。
もしもここで、最近噂になっているモンスターを操っている奴が姿を現れたりしたら……。
戦争どころではなくなるだろう。
というわけで今日この日、魔物王シャルロットが誕生した。
エリーやシェイドもいないため俺一人だ。
みんなにはやってもらうことがあったからな。
ギルド内は今日も多くの冒険者がいてにぎわっている。
俺は彼らの話を聞きながらクエストボードへと目を向けた。
といってもクエストを受けたいわけじゃない。
確認したいことがあって調べていたんだが、そこにシャルロットが近づいてきた。
「御主人様、何をしているのですか?」
あれ以来シャルロットはずっとこの調子だ。
一時の気の迷いかとも思ったんだが、そうではないらしかった。
俺が命令したわけじゃないから、これがシャルロットの本性ということになるのだろうか。
まだ御主人様と呼ばれることに慣れていないので落ち着かない。
「まあ、ちょっと確認をな」
ギルドのクエストは、周辺の人たちが困っていることを依頼してくる。
依頼票を眺めていれば、この辺りでどんなことが起こっているのか、おおまかにではあるが知ることができるんだ。
相変わらずモンスターの討伐依頼が多い。
被害自体は出ていないようだが、凶悪なモンスターが多く目撃されているので討伐してほしいといった内容が多かった。
最近あまりにも頻繁に見かけるので、誰かが操っているのではないかとする依頼書もあったくらいだ。
「御主人様、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか」
「ああ、いいぞ。なんだ」
「御主人様はどの動物がお好きなのですか?」
えぇ……。なんでいきなりそんなことを聞いてきたんだ……。
今のはもっと違うことを聞く流れじゃなかった?
というか当然のようにペット前提なんだな。
「俺は普通に人間が一番好きだけど」
大体の人がそうだとは思うのだが。
しかし俺がそう答えると、シャルロットの体が小刻みに震えはじめた。
「ニンゲン……コワイ……ニンゲン……コワイ……」
うわ言のように繰り返している。
どうやら強烈なトラウマが植え付けられているらしい。
だからペットになりたいとか言い出したのだろうか……。
「………………犬が好きかな」
「──っ!」
青ざめていたシャルロットの顔がぱああっと輝いた。
「ありがとうございます! これからもよろしくお願いしますワン!」
「いや、語尾はいらないよ。そもそも成りきるという意味でいったら、話をする方が不自然なんだし。だから普通で……」
「はっ、そうですね……! ワン、ワンワン!」
悪化してしまった。
どうしたらいいんだと俺が頭を抱えていると、いつのまにか周囲の視線が俺たちに集まっていた。
忘れていたけどここは冒険者ギルドの中なんだよな。
先日の襲撃事件はかなりの話題になっていた。当然知っている人も多い。
それにシャルロットはかなりの美人だからな。
目立つのは当然だった。
「おい、あれ襲撃事件の首謀者だろ」
「相当危険な奴だって話だったが、調教して犬のように扱ってるぞ」
「人目も気にせずに犬に成りきるなんて……。いったいどんな調教をすればあそこまで落ちるんだ……」
「エリーはあれでもイクスさんはまともだって信じてたのに……」
なんか俺への風評被害も発生しているんだが……。
「エリーだけじゃ満足できなくて、あんな美人にまで手を出してるのかよ……」
「噂だと小さな女の子にまで手を出してるらしい」
「美形の男を部屋に連れ込むところを見たことがあるぞ」
「やば。見境なしかよ」
俺もうこの街にいられないかもしれない。
「あぁ……こんなにたくさんの方に見つめていただけるなんて……」
シャルロットは喜んでいるようだった。
その鋼のメンタルがうらやましい。
◇
その後、エリーとシェイドが戻ってきた。
準備ができたらしい。
そのため俺たちは街を出発した。
といっても馬車に乗るとかそういう必要はない。
シェイドの能力で一度行ったことのある場所になら簡単にいけるからな。
今回行く場所も、以前にモンスター討伐のクエストで来た場所だ。
ここにきたのはとある計画があったから。
もともとシャルロットを助けたのも、その計画のためだったんだ。
その内容をシャルロットに教えた時は、喜んで受け入れてくれた。
「とうとうこの日が来たんですね。さすがは御主人様です」
「なに色目使ってるのよこの女」
エリーはご機嫌斜めだ。
まあ今日まで働いてくれたのはエリーとシェイドだからな。
実は2人には、この辺りでモンスターを操ってもらっていた。
おかげでモンスターの目撃情報も増えていたし、何者かが操っているのではという噂もいい感じに流れている。
そしてここは帝国の首都に近い場所でもあるんだ。
もしもここで、最近噂になっているモンスターを操っている奴が姿を現れたりしたら……。
戦争どころではなくなるだろう。
というわけで今日この日、魔物王シャルロットが誕生した。
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