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第一部 第一章 虚無の安寧
閑話 ところで…
しおりを挟む「ねぇ、リアラ」
「はい、何でしょう?」
スーヴィエラはお茶をしながら尋ねた。
「素朴な疑問なんだけど、聞いてもいい?」
「はい」
リアラが満面の笑みを浮かべると、スーヴィエラは少し躊躇いながら尋ねた。
「あの…ね?」
「はい」
「大旦那様って何をしている人?」
リアラが盛大にズッコケた。
「スー様、まさか、知らなかったんですか!?」
「ヴィンセント様が龍騎士ということは聞いていたわ。うん、聞いたもの。でも、そう言えば、大旦那様のこと、聞いていなかったな、って…」
「はぅっ! あの女狐どもに情報の開示を求める方が阿呆だったということですか」
「めぎつね…?」
「うふふ、あの、お金と美容のことしか頭にない踏ん反り返ったババアのことですよ?」
「お義母さまのこと?」
リアラが大きく頷いてから肩をすくめた。
「ま、奴らのことですから? 特に気にしていなかったというところでしょうし? スー様は悪くないですからね」
そう言ってからリアラは考えた。
「イシュカ家はそもそも、材木問屋でした。お山をいくつか持っている、その商人程度です。それがヴィンセント様のお父様のお父様…そう、お祖父様までのことですね」
「へぇ…」
「ですが、ある日、魔鉱石の鉱脈をヴィンセント様のお父様…つまり、大旦那様が見つけてからイシュカ家は急速に発展し、大商家として名を馳せているわけです。ーーまあ、成金って奴ですね」
リアラは肩を竦めた。
「今は不動産なんかもやって地主として悠々と暮らしている…と言ったところです」
「なるほど…」
「因みに、この邸宅も大旦那様の別荘の一つなんですよ。管理が大変だから、ご子息やご息女方に管理を任せている程度で、別に所有者がヴィンセント様ではありません」
リアラが大きく頷いた。
「自分が屋敷の主人ヅラをしていますが、別にそこまで偉くないです」
そして、リアラが満面の笑みを浮かべてスーヴィエラの手袋を嵌めた手に自らの手を重ねた。
「と、いうわけですので、奥様もご遠慮なさらずにくつろいでくださいね!」
「あ、はい…」
スーヴィエラはふと、リアラがヴィンセントになんとなく冷たいなと思ったが、口には出さず、ただ微笑んだ。
「よくわかったわ、ありがとう」
因みに、この日、スーヴィエラはリアラがヴィンセントを尻で敷いている夢を見たのだった。
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