上 下
17 / 43

帰りの馬車で

しおりを挟む
「今日の乙女の集いは楽しかったかい?」

「ええ、とても。」

帰りの馬車の中、私達は隣同士で座り、何故かアルク様の手は私の手と繋がれたままです。

「そう言えば、今朝の彼女…」

アルク様が発した言葉に身体がビクリとしてしまった。
不信に思われなかったかしら。
でも、アルク様は彼女の事をどう思ったのだろう。

…まさか!あの時は言わなかっただけで、彼女に一目惚れしてしまったとか?

どうしよう。強制力が働いたの?
私、失恋?もう、アルク様と一緒にいられないの?
やっぱりゲームは始まってしまったのだわ。

「レイラ!?大丈夫かい!?顔色が悪い!」

アルク様の声にハッとした。
アルク様に心配かけてしまうなんて、婚約者失格ですね。
でも、今の私の顔は酷い顔をしている。
こんな顔は見せられなくて俯いてしまった。

「あ、いえ、すみません。何でもないですわ。」

「何でもない事ではないぞ。顔色が凄く悪い。」

アルク様の手が私の頬を優しく撫でた。
その優しさに泣きそうになった。

「レイラ」

アルク様の綿のように優しい声にアルク様へ目を向けた。
あぁ。やっぱり素敵です。アルク様の事が好きすぎてこの後に待ち受ける展開が辛すぎる。
アルク様の顔は私を心配してか、いつもの太陽の様にキラキラして暖かい笑顔ではなく、今にも雨が降り出しそうな雲のように憂いを帯びていた。
私がそんな顔をさせてしまったのね。ごめんなさい。

「アルク様」

心配かけないように笑顔を向けようとしたけど失敗したみたい。

「レイラ。私は何時でもキミの味方だ。君が正しい時はもちろん、悪い時でもキミを正す為に傍にいるぞ。レイラの隣に私がいる事を忘れるな。」

甘く優しい声に私は胸が締め付けられた。

「はい。」

思わず眼に溜まっていた涙が1滴、頬を伝ってしまった。
あ、と思った時には頬に柔らかい何かが触れていた。
まさか、今の柔らかい何かってアルク様の唇…

「涙はしょっぱいものだが、レイラの涙は甘いのだな。」

「ア、ア、アルク様!?」

「ハハハ!いつものレイラに戻ったな。」

「もう!もう!」

アルク様の胸元に講義したけど、アルク様にとっては子猫のパンチ程の威力しかないでしょう。

「ハハハ。レイラ。くすぐったいぞ。」

「ひゃぁ!!」

アルク様に抱き込まれてしまった。
は、恥ずかしい!!私の顔は苺よりも真っ赤になっているでしょう。
うぅ。。顔が上げられない。

「レイラ。忘れるな。私はいつでもキミの味方だ。」

力強く優しい声に絆されてしまう。
そんなに優しくされてしまっては、貴方への想いが募ってしまう。貴方から離れるのか辛くなる。

「はい。」

でも、今だけは。その日が来る時まで。
どうか、貴方のお傍にいさせてください。
そう願いながら、そっと目を閉じた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王子は公爵令嬢を溺愛中

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:2,258

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,990pt お気に入り:2,473

幼馴染に裏切られた私は辺境伯に愛された

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,938

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,643pt お気に入り:3,568

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,968pt お気に入り:281

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

恋愛 / 完結 24h.ポイント:390pt お気に入り:2,605

処理中です...