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 落としたハンカチ
 それを踏む婚約者
 落とし主が振り返った
 唇を歪めて落とし主を見る婚約者
 あっ悪い顔
 頬を染める落とし主
 美形は何しても、美形のままだよ
 顔がいい奴が憎い
 ハンカチを見た落とし主
 婚約者とハンカチを言ったり来たりする目玉
 目が大きく開いて上下ギョロギョロした瞳はちょっと怖い
 見たものが信じられないのか、えっ?とか、んん?とか、あれ?とか小首を傾げ思案顔で頭をゆっくりと元に戻していく
 そうですよね
 無視や気付かれない場合はあっても、まさか踏まれるのは想定外
 リアクションに困ってる

 もう1度振り返った落とし主の顔色は悪かった
 無かったことにして帰るのが吉
 何処ぞの恋愛小説みたいに酷いとか叫んで走り去ってもいいけど
 これ以上セドには関わらないのが世の為、人の為、そして俺の為
 この後のセドが面倒臭いのを知ってる俺は
 寧ろ俺が走ってこの場を去りたい
 ………辞めとこう
 セドももれなく付いて来る
 本末転倒
 もう1人のこちら側の従者のロイを見れば、目を反らしやがった 
 そして「用事を思い出した」と宣った
 俺は足を滑らしロイの足を踏む
 お前の用事はセドの共だろうが

 
 落とし主は口をパクパクさせるが声はなし
 早く帰って
 ハンカチから足を退けたセドは穏やかな笑みを浮かべ俺の腰に手を回す
 「ローレン行こうか」 
 ロイも静かに頷く
 主人のホローしろよ!そこの従者
 ハンカチに目を落とせばセドの足跡がくっきり残っていた
 仕方ない    
 俺はポケットからハンカチを取り出す
 哀れな彼女に渡そうと……
 「あっ…………セド」
 婚約者に奪われた
 そして何故しまう
 「返せよ」
 「仕方ない」
 仕方ないのはお前の頭だ
 頬をほんのり染めて渡されたハンカチ
 「俺のを渡せ」
 「交換だ」
 意味わからん
 受け取るけど、お花摘みの時困るから
 でも必要ないよね、無駄しかないけどそのハンカチ交換、
 「あれにハンカチを渡せばいいのだろう」
 ロイがすかさず自分のハンカチを渡す
 「受け取れ」
 態度デカイな
 ねぇ待って、そのハンカチはうちの姪を拭いた物ではないだろうか? 
 令嬢は怖ず怖ずハンカチを受け取りセドの手に触れようとさらに手を伸ばす 
 あざといな
 この強心臓の持ち主め
 「有り難う御座います。ハンカチは洗って返します」
 自分のハンカチはいいの?
 やっぱりそれ鼻チーンハンカチだよね
 握り締めてるけど
 彼女には近寄らないでおこう 
 悪かった顔色は真っ赤だ
 瞳は欲で輝いてるし
 美形は正義か?何しても無かったことになるの
 セドは彼女の顔と逆の顔してる
 魚の死んだ目だ
 彼女の手を避けたセドはロイを指す
 「私に言われても困る、ハンカチの持ち主は彼だ」
 うん、そうね、そうだけど、そうじゃないよね
 「あっオレいりません、捨てといて下さい」
 お前ら酷いな
 知ってたけど
 この主人にしてこの従者あり
 



  
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