無資格魔法使いが最強すぎる件 ―資格ってなんですか? 強いのでそんな資格いりません―

しおしお

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第26話 ルーチェの決断

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世界規模の災厄――。

破級魔獣が爆発的に増殖し、
王国はもちろん、隣国グレイシアの領土にも迫りつつあった。

騎士団は戦支度を整え、
各地から避難民が押し寄せ、
王宮はかつてない混乱に包まれている。

それでも、
ルーチェが館の中で感じていた空気は静かだった。

まるで嵐の前の、冷たく澄んだ空気のように。


---

◆ 禁止魔法の“重さ”

ルーチェは自室の鏡の前に立っていた。

胸に手を当てると、
禁呪が淡く反応し、
魔力を縛りつけようとするいやな感覚が伝わってくる。

「……わたくしに、ここまでの力を封じるなんて」

追放された時は、
ただ自由になれることを喜んでいた。

けれど今は――
その鎖が、守りたい者たちの未来を奪おうとしている。

窓の外では、避難誘導に走り回る騎士たちの声が微かに聞こえる。

(この国の人たち……公爵様……
 わたくしを受け入れてくれた人たちが、危険に晒されている)

胸の奥がちくりと痛んだ。


---

◆ アークト公爵と向き合う

部屋を出ると、廊下でアークト公爵が彼女を待っていた。

彼の表情はいつも通り静かで、
感情を読み取ることは難しい。

「……考えは、まとまったか?」

ルーチェは、深呼吸を一つして頷いた。

「王国へ戻るつもりはありませんわ。
 あそこに義理はありませんもの」

「……そうか」

アークトの目が細くなる。
その声には少しだけ安堵が混ざっていた。

ルーチェは続けた。

「でも、この国には……守りたい人たちがいますの」

アークトの瞳が、静かに揺れた。


---

◆ 決意の宣言

「公爵様。
 わたくし、戦いますわ」

「……禁呪のせいで、魔法が使えないはずだ」

「だから――壊します」

アークトは一瞬だけ息をのんだ。

今まで冷静だった彼の表情が初めて驚きに染まる。

「壊せる……のか?」

「ええ。
 解除はできませんけれど……破壊なら、簡単ですわ」

さらりと言い放つルーチェに、
騎士団がどよめく。
アークトさえも目を見開いた。

ルーチェは自分の胸に触れながら、
静かに微笑んだ。

「ここで生きると決めた以上、
 この国を……世界を守りますわ」

その言葉は、
軽い口調なのに、
空気を震わせるほどの力を帯びていた。


---

◆ 公爵の答え

アークト公爵はしばらく言葉を失っていたが、
やがて彼女の前に片膝をついた。

そして――
手を胸に当て、深く頭を垂れる。

「……ならば、我が国はすべてを君に預ける。
 ルーチェ。
 どうか、導いてくれ」

騎士団全員がその場で跪く。

まるで――
女神を讃える儀式のようだった。

ルーチェは慌てて手を振る。

「ちょ、ちょっと待って! そこまで大げさにしないでくださいませ!」

だが誰も聞いていない。

ルーチェの決断は、
この国すべてに希望を与えたのだ。


---

◆ 世界を救うために

ルーチェは深く息を吸う。

次にやるべきことは一つ。

“禁止魔法を破壊し、真の力を解放する”

それが世界を救うための第一歩。

「……さあ、やりますわよ」

その瞳は、
これまでとは比べ物にならないほど鮮烈な輝きを宿していた。

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